11月11日はポッキーの日だそうで。
その並びが、それに似ていると。
記念日は、誰が、何日に作ってもいいわけで。
会社の創業記念日なんてありますが、私のところなんて記憶に無い。
大体、会社にするつもりなんて、全くなかった。
忘れもしない、鎌倉の山の上の家で、2月の寒いある日・・・
炬燵の中で、きものを解いて、可愛い手提げがひとつ仕上がった。
バブルがはじけ、夫の仕事がゆきずまっていた。
幼い子供を抱え、働きに行く決意もつかず、時々糸針を出しては、娘が寝ついたあと
幼稚園にもっていく娘の物を作っていた。
本当に、軽い気持ちだった。
買ったばかりのミシンと悪戦苦闘し、出来上がった紬地のその手提げは中々素敵だった
『きもの地は、素材も色彩も美しく1点物で作れば売れるかもしれない』
すぐに思いはそこに飛んだ。
それからの動きは早かった。「商品」をため、ある程度の数をストックし
売り込みに奔走した。
最初にチャンスを頂いたのが小田急線の各駅の改札前。
ワゴン1台。同じように、手づくりの商品や、東南アジアからの輸入品のアクセサリー
などを並べた若いお嬢さんたちに混ざって「鎌倉今村」はスタートした。
乗降客の多さは半端じゃなかった。しかし、立ち止まってくれるお客さんは
なかなかいなかった。それに、何よりも私は物を売る仕事が初めてだと言う事に
気がついて、たじろいだ。でも、もう引き返すわけには行かなかった。
自分の手で、両足で立っているという、えもいわれぬ高揚感でいっぱいだった。
しかし、知り合いに出会ったら隠れようとさえ思ったりもした情けない「社長」
でもあった。
あれから12年、たいして進歩もしてないけれど、私は確実に仕事によって
生かされてきた。
何より、たくさんのお客様に出会い、導かれたことは、感謝してもしきれない。
寒さが増し、冬がくると、暖房のきいた部屋で、健やかな寝息を立てねむる娘と
そのかたわらで、針を運ぶあの日の私の姿が浮かぶ。
ひとつひとつの商品を、大切にお客様に手渡したい・・・
不器用を絵に描いたような私が、今日まで続けてこられたのはその思いがいつも
あったからだと思います。
明日から、本格的な寒さになるそうです。
ちゃんと、着込んでください。おやすみなさい。