昔、羽織を着る季節は春とされていた。
今はオールシーズン羽織ます。
丈は長め、母の時代の物はちょっとやぼったく映ります。
洋服で言うとジャケット感覚。
満員電車の中でも帯を守ってくれます。
羽織には羽織紐というものが付いていて、通はここに懲ります。
凝ると言えば、男物の羽織の裏が興味深く、なかなか面白いものが。
浮世絵風の物、水墨画風の物、源氏絵巻を画いた物・・・、
趣味趣向を凝らし「裏に凝る」おしゃれの方程式が。
おさないころの羽織の思い出は、母の黒紋付。
入学式、ご近所のお祝い事にその羽織を羽織ると、母はキリリと変わった。
きものの知識もない私は、黒の羽織一枚で母が別人のようになる様子が不思議だった。
あの黒の羽織には、魔法のような「何か」が宿っていたのだと思う。
日本人の矜持、礼節・・・、うまい言葉が出てこないが、今、そんな気がするのです。