か ら け ん


ずっと走り続けてきました。一休みしてまわりを見ます。
そしてまた走ります。

ねじ

2012年12月19日 | 技術

三井製作所からお誘いをうけ再び見学できることになった。とっても楽しみでワクワクしている。

前回の様子だが、大企業の工作機械とはとにかくでっかい。直径1メートルもある歯車を削っていたりする。消防ホースのようなところからオイルが流れ出ている。そのオイルの中でバイトは火花を散らしている。巨大な歯車とバイトはガリバーと小人のようだ。

そんななか一番出口の吹きっさらしに彼の旋盤はあった。10本、15本といった小さい単位での注文か彼のところには来る。しかもそのうち5本はインチで、とかいう注文だ。一台のミリ用旋盤でどうやって削るのかと思った。

5~6ピッチ進むとまた戻ってピッチを変えてまた進んだ。あまり進むとインチとの誤差が大きくなるので5~6ピッチで止め、最初の位置に戻り1~2ピッチ先からさっきと同様なことを始めついにはミリ旋盤でインチを切った。この工場にはこういう芸当ができるのは彼と他に数人しかいない。

いまどきインチの旋盤を購入するとしたら天文学的金額になる。彼は何も言わない。飲んで愚痴をたれることもない。会社は彼を利用している。

一度聞いたことがある。「韓国に行きませんか。」韓国は旋盤工の腕のいいのをかなりの高給で迎えている。現にほかの工場だが行っている人がいる。

ミリの旋盤でインチを切る。

彼はもっとすごいことをした。直径10センチの球体をX軸方向のハンドルとY軸方向のハンドルだけでバイトを動かし切りだしたのだ。誤差は2グラムだ。金属の誤差が2グラムというのはどれほど微量と思うか。

僕はまた聞いた。韓国に行けばおそらく彼の収入は5倍になる。住居は福岡の最高のマンション程度だ。とにかく学ぼうと目を輝かしている学習意欲の高いのがごまんといる。「韓国に行きませんか。」

彼は答えなかった。

僕は失礼なことをしたようだ。爪の間に入り込んだ油はとれにくい。髪は切りこで焦げてしまう。鉄の焼けるにおい。油のにおい。砂塵がいりこみ雪がいりこむ。社長は一度も来ない。そこに40年。

だれが教えるともなく体得した技術。軽々に人に渡せるはずはなかった。

Posted at 2012/04/07

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