Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

多摩へ・・・

2009-06-12 00:32:47 | お出かけ
2時ごろ太陽が突然雲間から顔を出し、紫陽花に光を送り届けた。
よし、今日だ、と思ってぼくは列車に乗り込みました。
目的地は京王相模原線の若葉台駅。てっぺん丘のあるところだ。

「てっぺん丘」というキーワードで検索しても、6年くらい前にはたしか1,2件しかヒットしませんでした。しかし今では数万件ヒットします。「耳をすませば」というキーワードを加えるとかなり絞り込まれますが、それでも数千件ヒットします。もっとも、「てっぺん」「丘」という単語がそれぞれ単独でヒットしてしまうので、目的の場所を指し示すHPはやはりかなり少ないようです。

ぼくの目指すのは連光寺のてっぺん丘と、そこにある給水所。そして桜ヶ丘公園でした。『耳をすませば』の秘密の場所、というのは実際には存在しないようですが、あのラストの光景は「読売ランド」に立つ鉄塔からの眺めであり、そのわりとすぐ側にある若葉台駅の丘の上から見た景色も、映画の場面に近いと言われてきました。一般的には聖蹟桜ヶ丘の通称「耳丘」からの眺めが有名で、そこは耳すまファンの「聖地」として数多くのファンが「巡礼」に訪れました。ぼくも幾度となく丘を上り、あるときは夏の陽射しを浴び、あるときは冬の夕日に思いを馳せたものです。しかし数年前に耳丘は封鎖され、今では立ち入ることができなくなりました。ぼくの足も自然と遠のきました。

百草園にも行きました。ここは古くから眺望に適した地として有名で、高台からは多摩丘陵を見晴るかすことができます。しかし、若葉台にはこれまで行ったことがなく、それがずっと心残りでした。それで、夏になる前に今年こそ出かけようと心に決めていたのです。しかも、晴れた日に行こう、と。

昔はよく一人で少し遠くまで出かけていたものですが(その最たるものは泊りがけで山に木を伐りに行ったことでしょうか)、近年はそういうこともなくなり、今日は久々の単独の遠出でした。若葉台は神奈川県に位置し、多摩市と接しているようです。「京王よみうりランド」を過ぎるともうそこは山で、東京の面影はまるで残っていません。ぼくは下調べをほとんどせずに「当たって砕けろ」の精神で地図も持たずにやって来たものですから、どちらの方角へ歩けばよいのかさえ分からず、しばし途方にくれました。しかし駅の脇にあるお店で道を聞いたところ、坂を上ったところに交番があるのでそこで聞いてごらんなさい、と言われたので、その通りに坂道を上がってゆくことにしました。

給水所が最大の目標だったのですが、高台にある給水所なら駅から見えるだろ、くらいの気持ちで臨んだのが間違いで、どちらへ行けばよいのやらさっぱり分からなかったものの、とりあえず坂を上り終えたところの「出張所」で話を聞きました。交番ではない気がしましたが、なに、構いません。そこで働いている人たちはとても親切で、「桜ヶ丘公園はどこか」「連光寺というのはどの辺りか」というぼくの些か漠然とした質問に丁寧に答えてくれました。桜ヶ丘公園の場所はどうやら知らないようでしたが、地図で探してくれて、頼んでもいないのにその道順をコピーまでしてくれました。コピー代を出そうとすると断られ、善意に救われた気持ちになりました。

道を尋ねているうちにどういうわけか顔から汗が噴き出してきて、出張所を出たあとも、結局それからずっと汗が流れっぱなしでした。急に暑くなったように感じられて、ぼくは長袖のシャツを腕まくりし、地図を片手に歩き出しました。タオル持ってくりゃよかったな。

連光寺の配水場に辿り着いたのは、それから20分ほど後のことです。「給水所」だと聞いていたのですが、「配水場」と記されていました。てっぺん丘というのはこの辺りのはずなのですが、いまいち場所がつかめません。そこは側に橋のかかった見晴らしのよい高台で、清々しい景色を眺望できますが、「てっぺん丘」と名付けられるような丘だとはちょっと思えませんでした。しかしとりあえず配水場は後にし、ぼくは桜ヶ丘公園に向かいました。

いま歩いているのは東京のはずですが、とてもそうは思えませんでしたね。キリギリスのような声が草むらから聞こえ、木は生い茂り、畑にはトマトなどが植えられています。寄り道をしながら(迷いながら?)若葉台駅から歩くこと1時間、桜ヶ丘公園に辿り着いたときは4時を大きく回っていました。そこは非常に広い公園で、いや公園と言うよりは「緑地帯」と言った方が正確でしょうね。八国山緑地に幾分似ている気がします。記念館が建っていましたが、あいにくもう閉館時間を過ぎており、ぼくは外のベンチでしばし休憩して、また踵を返しました。家に帰った後で知ったことですが、ここの「ゆうひの丘」(でしたっけ?)からも多摩の街が見渡せるそうです。下調べをせず、残念なことをしました。

さて帰路の途中で自動販売機を見つけ、即購入。汗だくだくで歩いていたので(痩せてるわりには汗っかき)、水分が取りたかったのに、来る途中は見つからなかったんですよね。でもこれでよし、ということで、また丘を上り始めました。ちなみに若葉台から配水場までが約25分、そこから桜ヶ丘公園までがまた約25分で、配水場を頂点に、上り坂/下り坂が続いています。しかしこんな坂なんのその、というわけではあはあ言いながらぼくは上り、上を見上げると、空が何て広いんだ!都会の真ん中ではビル群に区切られた矩形の空しか見えないので、こういう広大無辺の空を見ると、本当に気持ちよくなります。

帰りは行きとは少し違う道を通りました。てっぺん丘を探すのを忘れてしまって、ぼくはまた坂を下り始めました。(配水場のあるところがてっぺん丘なのか?それとも広場があるのか?)出張所の人たちに挨拶していこうかとも思いましたが、それはよして駅へ。これで今日の「旅」は終わり。

最初、道が全く見当もつかないし、地図を貰ってからも目的地があまりにも遠いようなので(知らない道を片道1時間も歩くのは心細いよ)、何度もくじけそうになりましたが、最低限の目標は達成できたのでまあまあ満足です。ただ、今回は見落とした場所が複数あるので、また今年中に戻ってきたいですね。狭山丘陵の辺りを昔やはり一人で散策したことがありましたが、こんなに不安になったかなあ。でも今日だって30分くらいしたら楽しくなってきましたけどね。

帰りの電車から外を見ると、ようやく日の光に金色が濃くなり、雨に濡れた木の葉が夕日に輝く様は、えもいわれぬほど美しいものでした。今度は丘のてっぺんから夕日を拝みたいものです。

疲れたけど、久々に充実した一日でした。