Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

もてもてチェーホフ

2009-06-19 00:34:31 | 文学
修士論文が切りのいいところまで終わったので、ある本を読み始めました。その全体的なレビューは近日中にアップする予定。

さて、その本はチェーホフのことを書いているのですが、チェーホフってやっぱりもてもてだったんですねえ。若い頃の写真を見たことがありますか?かなりハンサムですよ。身長は180cm以上あって堂々たる風貌。少し垂れ目で、髪の毛は気持ちよくウェーブをうっています。とてもさわやかな印象で、今で言うイケメンさんですね。

チェーホフの女性関係が40ページくらい延々と述べられていて、うふふ、と楽しくなってきてしまいますね。断っておきますが、ぼくはチェーホフに関してはけっこう物知りでして、ここに書かれてあるような事柄は基本的に大体知っているのですが、いつ読んでもコイバナってのは楽しいですからね。それに、忘れていたこともたくさんありましたし。

この本の著者はアヴィーロワとの関係には否定的でした。アヴィーロワはチェーホフとの関係を『私のなかのチェーホフ』という本にまとめていて、それに書かれた事柄の真実性については賛否が分かれているのです。著者が言うには(名前は今度明かします)、この本はあまりにも創作的な要素が強すぎるらしいです。ぼくもこの本は読んで、ここにレビューをアップしましたが、確かに小説みたいに読めて、というか小説でしたね。でも、すごくおもしろくて、そして根も葉もない虚構だとは思えませんでした。けれども、チェーホフからアヴィーロワに宛てた手紙は原本は失われていて、写ししかないのだそうです。しかも、アヴィーロワからチェーホフに宛てた手紙は散逸してしまって断片しか残っていないそうです。う~む、証拠がないということです。確かに怪しい…。でも、アヴィーロワのチェーホフとの関係を綴った作品は、ぼくにはとても感動的で、あれが嘘だったらショックだなあ。

チェーホフは、自分の戯曲の主演女優に言い寄られていたりするようですが(なんて羨ましい男だろう)、そっけなく断っているんですよね。チェーホフは生涯で誰も愛さなかった、なんてことが同時代人の口から証言されていて、それで冷たい人だとか言われているし、また絶望の作家なんて呼ぶ人もいます。一方でとても思いやりがあって、慈善活動をし、彼の周りには常にお客がいたそうです。でも、心の底は誰にも打ち明けなかったし、女性関係にも冷淡だったようです。相手からの求愛をユーモアでかわしてしまうんです。なんてニクイ男。

ところが、そんなチェーホフもやがて結婚します(アラフォーで)。相手は女優。自分は結婚しても妻といつも一緒にいたくはない、なんて言っていたチェーホフにとって、舞台のために地方を飛び回る女優は理想的なお嫁さんだったわけです。

チェーホフかあ。初期の短編を久しぶりに読み返してみたくなりました。