おはなしきっき堂

引越ししてきました。
お話を中心にのせてます。

茜色のお花畑 10(リストラ)

2020年07月22日 | 茜色のお花畑

どうやらお天気が持つのは今日までのよう。
日差しはあるけど、雲が多い。

本当は、少し原付で走ろうと思ったんだけど、荷物が届くことを思い出して保留。
昼前に届いたので、子どもたちが帰る時間までに少し走ってこようと思う。

ああセミが鳴いているなと思ったら庭に抜け殻が多数。(虫が苦手な人は無視してね)


庭には何故か数カ所、山椒が自生している。



数年前に山椒の植木鉢を買って植えていたんだけど、それは枯れてしまったんだな。
それが、勝手に増えたのかそれとも山のを鳥が運んだのか。
摘み取って手でパンとすると山椒のいい香りがする。

さて、今日はおはなしです。
毎回書いていますが、長いので興味の無い方、続けて読んでいない方はは、読み飛ばして下さいね。


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【茜色のお花畑 10 (リストラ)】

ヤマダさんからの衝撃の話から、数日たった。
あれから、晴れの日が続いたためヤマダさんともゆっくり話は出来なかった。
ただ、最近仕事は益々暇になった。
1日行ってもする事もないので、部品の整理をしたり掃除をしたりする。
マエダさんは、それならばお姑さんの介護に専念すると言って、1週間休みにすることに工場長と相談して決めたそうだ。

サトウさんは、あれからずっと悩み続け、出来るのかどうか試してみるという事で、部署を今は移動している。
今なら暇だから、教えられるという事らしい。
ただ、そんな中でも仕事があまりなく、整理をしたり掃除をしたりしていると言っていた。

今、組み立ての部署にいるのは、カミデさんと私だけになった。
相変わらずカミデさんは早い。
私もいつかあんな風に出来るのだろうか?

「アカネちゃんは、だいぶ慣れたね。これからずっと早くなるよ。しっかり頑張るんだよ」とカミデさんが笑いながら言った。

なんだか、変だなと思いながらも
「はい」と答えた。

その週末の休み、タクミの運転でホノカちゃんと一緒に生地を安く売っているお店に連れて行ってもらう。
今までは、近所の手芸店で買っていたが、連れて行ってもらったところは、全然そこと違う値段だった。
金具などもまとめて安く売っていたので、キーホルダー用の部品も買う。
オンラインで反物販売もされているらしく、いろいろと話を聞いた。
とりあえず、ホノカちゃんデザインのものを作るためにいろいろと購入した。
これは、ひとつひとつ手作り感を出すために、ある程度の記事を変えることにした。



その後、3人でランチを食べた。
ホノカちゃんが、カフェランチしようよと言うも、そんなので腹が膨れないとタクミがいい、結局二人で散々言い合ったあとにその後にバイトが入っていてお腹が空かないしたいと言いホノカちゃんが折れた。

「お姉さん、また二人で女子会ランチしましょうね」とホノカちゃんが笑う。

うんうん、おしゃれなカフェも入って見たいんだと私も言う。

3人で中華のお店に入る。
ランチがとても安くて1000円以下で食べられるらしい。
私は、天津飯のセットを頼み、タクミとホノカちゃんとラーメンと炒飯のセットを頼んでいた。
タクミは「大盛」
若い男の子の食欲はすごいなと驚く。

その後タクミが送ってくれて、3人でサンプルのマスコットを見て、値段を決めることにした。
材料費とそして私の手間賃。
今日、安く買ったのでサンプルで作った値段よりかなり抑えられた。
でも、計算して売れる値段を考えたら1点につき300円ぐらいが私の手間賃になる。

タクミがいろいろと調べてきてくれていた。
まず、最初は手数料を払って出店して見て、様子を見てからホノカちゃんにサイトを作ってもらって、自分でやってみたらどうかと話してくれた。
手数料をひくともっと私の手間賃は低くなるけど、「趣味」として販売するならいいんじゃないかと話した。
送料は、購入者の負担とすることに。
メール便で送れるサイズを作るので、購入しやすいだろうと。

こうやって考えると「作って」「売る」と言うのがとても大変だと思った。

しばらくこの後またハナと遊んだ後に解散になった。

ハナが二人と散々遊んだためか、熟睡しているので早速、買って来た
布地を切り作り始めた。

この日、3個作り翌日の日曜日に10個まとめて作る。
そして、タクミが設定してくれたので、頑張って自分で出品してみることにした。
マスコットを作るより長く時間がかかった。

早速、前にフリーマーケットで購入して、またどこかで出店するなら教えてくださいと言ってくれたお客さんに連絡を入れる。
すぐに返事が返ってきた。
「かわいい!実は母も欲しがっていて、2個購入させてもらいますね!友達にも欲しいって言っている人がいるので教えます!」と。

そして、2個「SOLD OUT」の表示が出た。
運営側から連絡が入るので、送る手配をしないと。
この送るためのラッピングの材料も、今日買った。
そういったものにもお金がかかるなと思う。

形が崩れないように丁寧に包む。

1個当たり作る時間は、30分ぐらい。
でも、こうやって発送する手間を考えると、時給いくらになるんだろうと思い、今組み立ての仕事でもらっているお給料をありがたく感じた。

翌日、会社に行く。
朝礼の時に社長が少し緊張した面持ちで、話し出した。

「本日、少し皆様にお願いがあり、おひとりおひとり会議室に呼びますので、呼ばれた方は来てください」と。

ざわざわとする中、ヤマダさんがとても難しい顔をしていた。
ズーンと暗い思いが、胸をよぎる。

今日は、組み立てはカミデさんとマエダさんと3人だった。
サトウさんは、もうどうやら他の部署に異動が決定なのかもしれない。

一番、先にカミデさんが呼ばれた。
10分ほどして戻ってきた。

「ホッホー」といつものように笑って「次はマエダさんだって」と言い、次にマエダさんが会議室に向かった。

カミデさんより長く15分ほどしてマエダさんが戻ってきた。
カミデさんと違い、すごく怖い顔をしていた。
「次はアカネちゃんよ」と言い大きなため息をついた。

すごく怖かった。
一体何を言われるのかと。

「失礼します」と入っていくと、社長さんとその息子の専務さん、そして工場長の3人が座っていた。
「どうぞ」と言われて、前の席に座った。

「イトウさんは、だいぶ慣れたようだね」と社長が話しだす。
「最近、ニュースとかで見ていると思うけど、世の中が一気に不況になって、仕事がすごく減ってきているんだよ。」

私は「はあ」と言いながらすごく緊張する。

「ここのところ、君も組み立ての仕事が減ってきて、整理とかばかりしているのに気がついていると思う。このまま仕事が減ったままだとわが社はきっと駄目になる。今、銀行から融資を受けるように交渉しているんだが、その条件として人員整理を出されてきた」

耳がガンガンしてきた。
ヤマダさんの言ったとおりだ。
多分、入ったばかりの私はその人員整理の中の一人なんだろう」

ガンガン・・・ガンガン・・・
頭の中で渦巻く音の間に社長さんの声がかすかに聞こえる。

「そこで、本当に心苦しいのだけど組み立てからも人員を減らすことにした」

ガンガン・・・

「君はまだ入ったばかりだけど・・・」

ガンガン・・・

「当面、一人でやってもらうことになる」


えっ・・・?

「カミデさんは、高齢なので一旦やめていただく事になった。本人も了解されている。マエダさんは当分休んでいただいて、仕事が増えてきたらもう少し短期のパートとして契約を見直してもらう事になった。サトウさんは、当分パートのままだけど部署移動になった。この不景気を乗り切れば、正社員になるのを条件にしている」

・・・・別の意味で目の前が真っ暗になる。

「わ・・・私、わからない事ばかりで・・・一人でなんてできません。そ、それに私よりずっとカミデさんの方が早くて会社のためになると思います」

と必死で言う。
そうだ、私よりずっと・・・

「そうだね、カミデさんはとても早くてもう職人だと言ってもいい。でも、もうお年でいつまで勤めていただくかを考えると君に残ってもらおうという事になった。カミデさんも了承してくださっている。また復帰してもらってもと言ったんだけど、ここまで歩いて通ってくるのが実はもうしんどかったそうで、いい機会なので引退したいと言われている。それに君はとても器用で、きっとこれからの会社に必要だと言っていたよ」

涙が出てきそうになったけど、ぐっとこらえた。

「じゃあ、当面一人になるけどよろしく頼むね」と社長さんがいい、工場長が「わからない事は教えるから言ってくれよ」と続けて、そのまま私の時間は終わった。

部署に戻るとカミデさんとマエダさんが話していた。

「ああ、アカネちゃん」とマエダさん。

「びっくりしたよね。でも、今カミデさんと話していたんだけど、まだいいタイミングだったのかもしれない」って。

「でも、でも私よりずっとお二人の方が・・・」

「アカネちゃん」とカミデさんが言う。
「アカネちゃんはまだ若い。これからずっとこの会社で働ける。でも、もう私はだいぶ前から限界が来ていたんだ。ここまで来るのが大変でね。自転車も危ないって息子から言われていたんだよ。それとずっと良かった目も最近ちょっと悪くなってきてね」とまたホッホーと笑った。

「それと、たまに内職で仕事を回してもらう事になったんだよ。だから、気にしないで。」と。

「でも、その内職って1個何銭・・・いや、アカネちゃん世代だったらわからないか、1個0.5円ぐらいなんだけどね」とマエダさんが言うと、
「いいんだよ。ボケ防止になる」とまたカミデさんはホッホ-と笑った。

マエダさんは、休んでいる間にお姑さんの事を、次に仕事を再開するときに困らないように旦那さんと相談すると言っていた。
今、通所しているところの他にもっと相談にのってもらえる場所を探すらしい。
ノグチさんのお母さんの事を思い出し、話すと教えてもらおうと言っていた。

私は暗い気持ちでその日を、なんとか終えた。
更衣室でサトウさんと一緒になった。

「こんな時だから、まだ社員には出来ないって言われたけど、移動する分時給をあげてもらう事になったの。その分少し助かる。アカネチンは残るんだよね。大変だけど頑張ろうね」と言った。
私は複雑な表情を浮かべる。

その後、ヤマダさんが入ってきた。
「なんとか、私も残る事になったんだけど、パートで入っている事務の人が一人辞めることになったの。仕事が忙しくなると思う。それと、もしかすると状況によっては今年の冬のボーナスはなしになるかもしれない」と言い私たちは余計にどんよりとした。

帰るとミエコさんが、余分に作ったからと肉じゃがを持ってきてくれていた。

顔を見るとなんだかほっとして、今日一日あった事を話した。
そして、私こそ辞めるべきなんじゃないかと思うと言った。

ミエコさんは静かに言った。
「駄目よ、アカネちゃん。辞めてまたどうやって暮らすの?他に仕事のあてはあるの?ハナも飼ったんでしょう。今からお金がかかるわよ」

「でも、でも、ああそうだ。私これをやって・・・」とミエコさんに昨日作って売れたサイトをスマホで見せた。

「うん、タクミから聞いている。でも、アカネちゃん、それって時間がいくらかかって、いくつ売れていくら『今日』アカネちゃんにお金入ってくるの?」と。

サイトを見ると、あれからまた3個SOLD OUTになっていた。
昨日売れたのと合わせて5個。
1個300円の利益が出ていて、5個で1500円。
でも、作った時間は5個で2時間半。
今からかかる梱包の時間や、布の組み合せを考える時間を入れたのはもっと・・・。
そして、作った13個全部売れなかったら、その分のロスは・・・。

涙が出てきた。

「私も実は、以前同じようにあった不況の時に同じような立場になったの。私の場合はまだあの当時は・・・夫・・・つまりあなたのお父さんがいた。だから、思い切って辞めちゃったのよ」

「でも、結局それから結構大変だったのよ。自分で今の在宅の仕事を見つけるまで。それがちゃんとした収入になるまでもかなり勉強もして努力したの。その間ほぼ無収入よ。今、アカネちゃんは自分で自分の生活を支えないといけない。ハナもいる。だから、残った事に罪悪感を覚えるより、ちゃんと仕事を覚えて行かないと駄目」

「それとね、景気が戻ってもまたいつこんな事になるかもしれない。そう思って勉強は必要よ。だから、今始めた事も大事にしてね」

とエミコさんはいい私の頭をそっとさわった。

「今、会社からカミデさんはいなくなるけど、会社からいなくなるだけよ。出会った事でアカネちゃんとつながりが出来た。それを大事にして。きっとそれが自分の財産になるから」

日が落ちるのが早くなり、数か月前はこの時間なら茜色の夕焼けだった空が、真っ暗になっていた。

私は、この色も覚えておこうと思った。

                             <つづく>

*****************************************

後2回ぐらいで終わらせようかと。
ちょっと思い出してつらいなと思う。
実際は、私はリストラされたので。
ただ、この中にも出ているけど私にとってはいいタイミングだった。だってその前から辞めたいとは思っていたから。
ずっと辞めたいと上司に行っていたからだとは思う。
でも、自分で辞めますと言いたかった。
このあたりの事情は、書き始めると1年ぐらいかかるのでやめておく。
まあ、いろいろと後でわかってくるし、これはかなりの転機だった。
あそこで辞めないと気持ちも体も潰れていたし、辞めたら運気が一気によくなる。

逆にこの時、残った人も大変だったし、ずっと近年まで勤めた友人はとてもとてもひどい目に合った。
人生わからないものだ。
物語の中の会社は、空想の会社なので実際に私が勤めていたところと大違いだ。
この物語の中の会社は、今うちのおとーさんの会社とを合体させた感じかな。
おとーさんの会社は、まだ「人情味」がある。

今、また大不況になる。
昨日おとーさんと話したら、なんとか11月ぐらいまではおとーさんの会社は踏ん張れるらしい。
それまでに、早くちゃんとした出口をと思う。

コブちゃんのフードも買わないと駄目だな。


茜色のお花畑を書き上げて、実は少し他の事をしたいと思っている。
1日の時間が足りない。
母は、毎日暇で暇で・・・と言っているが、同じ家に居る私は、時間が足りないのだ。
コメント (2)
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