9月30日(水)17時15分
間もなく暮れようとする渋谷スクランブル交差点。
青信号になると、四方の道路から、人々が
歪んだ四角形広場の中心に向かって歩き出す。
だが衝突することもなく
すれ違い目的の道に入って行く。
青信号になった途端 走り出す一団がある。
全て外国人なのだ。
中央に来ると、やおら反転して向き直り
仲間が写真を撮る。
又は集団で自撮りするのだ。
外国人が必ず訪れたい観光スポットなのだ。
ロンドンには、ビートルズメンバーが
横断歩道を渡るアビーロードが有名で
訪れる観光客は必ず自らが横断歩道を渡る写真を撮る。
渋谷スクランブル交差点では、日本人の群れが
移動する光景の中で、外国人である自分が
溶け込む姿が快感と記念になるらしい。
日本人としては、複雑な気持ちである。
コンクリートジャングルの日本人群れに
文明人が誇らしげに佇む。
享楽の街を抜けると、現総理、元総理の住む閑静な住宅街があり
又、間もなく泉下に赴く人達がひっそり待っているのだ。
18時 お袋は私を見ると
「ああ良かった」
「寂しい」とかすれ声で言った。
ベッド計算帳があった。
92歳のお袋は、この介護病院で一番長く滞在して
又、計算も出来る唯一のお婆ちゃんなのだ。
20時 病院を出て再びスクランブル交差点に向かった。
快楽の煌めきはまだまだ明けない。