4月23日(日)
午前10時、だるい体をゆっくり動かしながら
谷津干潟に向かった。
谷津干潟1
「医師より、体は動かしてください」
2009年9月 私は大腸ポリープ切除で入院した。
同時期、大学同期も食道癌摘出手術で入院した。
同期は退院後、声帯を失い喋ることが出来なくなった。
61歳、独身であった。
近くに一人暮らしであった同期を
谷津干潟の散歩に連れ出した。
酒豪であった彼は、昼時、少しのツマミとビール、チューハイを
気持ちよく飲んだ。
無言だが、表情は穏やかだった。
2010年6月 余命旦夕迫った。
干潟の先にある病院に彼の妹から
呼ばれ駆けつけた。
同期は、メモを書いた。
「ビール」
医師の許可を受けコンビニで缶ビールを買った。
彼の口は受け付けなかった。
干潟では、旅鳥は季節の変わり目に旅立つが
毎年舞い戻って来る。
谷津干潟2
2010年6月25日
2010年10月 妻が癌発症の知らせが病院からあった。
妻は放射線治療を選択した。
医師より、「軽い運動をしてください」指示された。
妻の術後、谷津干潟を二人でゆっくり散策した。
2010年9月7日 妻の癌は消失した。
「癌が完治しました」医師が告げた。
本日、風も騒がず、穏やかな水面にシギのカップルが仲睦まじい。
私はゆっくりと歩む。
正午に戻らない私を妻が心配してラインが入る。
人生もゴールが見えてきた。
ゆっくり 歩もう。