(6)不倫夫 離婚、ホステス、小料理屋女将、妾
続きです。
女将は涙顔をそむける。
泣き笑いの表情で
「いらっしゃいませ、早いのね」
板前はまだいない。
無言でビールを持ってグラスに注ぐ。
互いに会話の出だしが無い。
彼女の苦闘を感じるのだ。
独りで3人の子供を抱えて、酔客に媚びて
明るいおしゃべり
美しい顔の内側には、耐えきれない苦悩。
私達は、誰も助けてもらえない同士なのだ。
銀座電通通り地下にあるスナックのママさんは
彼女が、仕入れ先の卸問屋でパートをしていた。
後に新橋のボロビルで小料理屋を開いた。
ビル取り壊しになり、立ち退き金を貰い
姉が銀座でクラブを経営。
その援助でスナックを開いた。
ママさんは種子島出身
エキゾチックな顔立ちと素朴な話し方。
新橋地下の小料理で接待すると
直ぐにスナックにクライアントを連れて飲む。
私も接待笑いで応じる。
深夜、帰宅するタクシー代もなく
日本橋まで歩き3畳の事務所で寝るのだ。
接待場所は小料理屋とスナックだけ。
互いに事情を知っているので無理はしない。
4年が過ぎた。
三回の結婚した六本木の店経営の先輩から連絡が入る。
「新橋の店を閉じることになった」。
「お別れ会をする」
客ではない、仲間が集まり明るい会話をした。
記念写真を撮った。
その日は、閉店の訳は聞かなかった。
後日、六本木の先輩の店で事情を知った。
小料理屋は、借金返済が出来なくなった。
女将は、借金返済と生活保障を条件として妾になった。
その後の行く末は知らない。
愛人が選ぶネクタイは、自宅でネクタイを締めて
マジマジ、鏡で見ると似合わない。
「美しい女が心も美しいとはいえない」。
美しい計算高い女は、男の金を吟味する。
しかし、一緒になると、男は真の愛を求めて
違う場所で愛情を満たそうとする。
その葛藤が不倫だ。
続く
PV]阪井あゆみ - 横顔 「白い春」主题歌