私が行くといつも眠っている母が、珍しく今日は起きていた。
でもなんだか様子がおかしい。
元気だった?と聞くと、
「こうして黙って寝ていると、なんだか訳が分からなくて…
頭が変で…
なんでも忘れちゃう…」
などど哀しそうに言う。
そして
「人間って不思議だねぇ」
と何度も言う。
「私はここで死ぬの?」とも。
窓の外の少し色付いて来た鬱蒼とした樹々を見て、
「寂しいねぇ」と言っていたから、
そんな景色をベッドの上から眺めていて、
気分も沈んでしまったのだろうか。
いつになく悩んでいる母の顔だった。
でも、その母の様子は、まるで今の私の心を映しているような…。
どこか通じていたのだろうか。
私も本当に同じように悩んで塞いでいたのだから。
それでも、その後
最近になく、二人でたくさん歌を歌って、
母は楽しそうだった。
哀しみや苦しみやそして楽しさや、
今日の母はいろんな気持ちがいっぱいの日だったかもしれない。
それにしても、
窓からの景色が寂し過ぎる。
少し賑やかだったり変化のある眺めの方がいいのに、
といつも思う。
ああいう施設は特にそうであって欲しい。
でもなぜか寂しい所が多い。