学校が臨時休校になったともに、地元の公立図書館も3月21日まで休館になりました。
この休館前に借り出したのが、戦後日本女装・同性愛研究 (中央大学社会科学研究所研究叢書) です。
2006年刊行のこの本はまさに戦後の女装史を詳細に記録・研究した貴重な本です。
そして、読み応えがあります。
この本は過去に何回も読みましたが、600ページを超す膨大さに完読はできませんでした。
今回は休館で返却期限が延びました。
不要不急の外出は控えろ、と政府に言われておりますので、これを好機とし完読してみたいと思います。
今日と明日で、研究者代表の矢島教授の冒頭言と目次をご紹介します。
はしがき
中央大学社会科学研究叢書といえば、『自主管理の構造分析-ユーゴスラヴ
ィアの事例研究-』(中央大学社会科学研究所編)から『東アジアの階層比較』
(園出茂人編著)に至るまで,綿々と,きわめて学術性の高い本を発行し続けてい
る。そんな叢書のひとつとして本書を発行していただくことは,光栄の至りで
ある。
本書は,性に関しての書である。性に関しては長い間タブー視され,研究の
対象として排除されるか,そうでないとしても,経済や政治,宗教や芸術など
に比べ,数段低い,言い換えれば低俗の研究対象とみなされてきた。(いや,今
でも多分に,そうみなされている。)
今時流行のジェンダー研究にあっても,女性の社会的進出や地位向上,偏見
や差別への批判・抗議といった非性的なことには大変熱心であるが,こと性的
なことになると,とたんに研究者の数は激減し,しかも,異性愛の女性が研究
テーマの中心となる。
こういった状況のなかにあって,本書は性に開しての研究というだけでな
く,その取り上げる性がまた,女装(者い同性愛(者)と,十数年ほど前まで
は,一部の医学の領域を除いては研究の対象として見向きもされなかった対象
を社会科学から取り上げた研究書である。しかも,欧米の解放運動から発した
ラディカルで見栄えの良い理論を引っさげての正義のイデオロギー展開の研究
書ではない。戦後のわが国に密着しての実証的な調査研究の書である。
本霞のタイトルは『戦後日本女装・同性愛研究』である。ここでは戦後日本
に限定しているのであるが,その一方で,「女装」と「同性愛」という異質な
ふたつのテーマが混在していると思われるかもしれない。事実,女装は性自認
の範疇であり,同性愛は性指向の範疇である。しかし,戦後のわが国の女装
(者)史そして同性愛(者)史を考察してみると,両者の未分離状況に行き着く。
それゆえに,『戦後日本女装・同性愛研究』なのである。
さて、第1部は共同研究の成果である。ここでは女装人生や女装者愛好人生
が赤裸々に記述されている。その記述はリアリティあるがゆえに,きれい事で
は片付けられないものがあり,結果として,「おかま」「女装」「同性愛」「ホ
モ」「パンパン」「ペニス]「おちんちん」「乳首」「乳房」「おっぱい」「口淫」
「手淫」「素股」「レンコン」「肛門」「SM」「キス」「接吻」「マスターベーショ
ン」「セックス」「アナルセックス」「射精」「男娼]「お小水」「どんでん」等々
の,エロ小説なみの言葉が散在する。
しかし,一読すれば,3名のライフヒストリーの語りがいわゆる「エロ手
記」とはまったく異なる,貴重な語りであることが,直ちにご理解いただける
ことと確信する。この勇気ある3名の方に,心から感謝する次第である。
第Ⅱ部は個人の論文集である。7名の8論文を掲載した。私のを除けばどれ
も力作であり,これらが加わることによって,この叢書の価値がさらに高まっ
た。
以上,中央大学社会科学研究所「セクシュアリティの歴史と現在」研究チー
ムの研究成果として,ここに出版する。
2005年6月吉日 横浜の自宅にて
矢島正見
この休館前に借り出したのが、戦後日本女装・同性愛研究 (中央大学社会科学研究所研究叢書) です。
2006年刊行のこの本はまさに戦後の女装史を詳細に記録・研究した貴重な本です。
そして、読み応えがあります。
この本は過去に何回も読みましたが、600ページを超す膨大さに完読はできませんでした。
今回は休館で返却期限が延びました。
不要不急の外出は控えろ、と政府に言われておりますので、これを好機とし完読してみたいと思います。
今日と明日で、研究者代表の矢島教授の冒頭言と目次をご紹介します。
はしがき
中央大学社会科学研究叢書といえば、『自主管理の構造分析-ユーゴスラヴ
ィアの事例研究-』(中央大学社会科学研究所編)から『東アジアの階層比較』
(園出茂人編著)に至るまで,綿々と,きわめて学術性の高い本を発行し続けてい
る。そんな叢書のひとつとして本書を発行していただくことは,光栄の至りで
ある。
本書は,性に関しての書である。性に関しては長い間タブー視され,研究の
対象として排除されるか,そうでないとしても,経済や政治,宗教や芸術など
に比べ,数段低い,言い換えれば低俗の研究対象とみなされてきた。(いや,今
でも多分に,そうみなされている。)
今時流行のジェンダー研究にあっても,女性の社会的進出や地位向上,偏見
や差別への批判・抗議といった非性的なことには大変熱心であるが,こと性的
なことになると,とたんに研究者の数は激減し,しかも,異性愛の女性が研究
テーマの中心となる。
こういった状況のなかにあって,本書は性に開しての研究というだけでな
く,その取り上げる性がまた,女装(者い同性愛(者)と,十数年ほど前まで
は,一部の医学の領域を除いては研究の対象として見向きもされなかった対象
を社会科学から取り上げた研究書である。しかも,欧米の解放運動から発した
ラディカルで見栄えの良い理論を引っさげての正義のイデオロギー展開の研究
書ではない。戦後のわが国に密着しての実証的な調査研究の書である。
本霞のタイトルは『戦後日本女装・同性愛研究』である。ここでは戦後日本
に限定しているのであるが,その一方で,「女装」と「同性愛」という異質な
ふたつのテーマが混在していると思われるかもしれない。事実,女装は性自認
の範疇であり,同性愛は性指向の範疇である。しかし,戦後のわが国の女装
(者)史そして同性愛(者)史を考察してみると,両者の未分離状況に行き着く。
それゆえに,『戦後日本女装・同性愛研究』なのである。
さて、第1部は共同研究の成果である。ここでは女装人生や女装者愛好人生
が赤裸々に記述されている。その記述はリアリティあるがゆえに,きれい事で
は片付けられないものがあり,結果として,「おかま」「女装」「同性愛」「ホ
モ」「パンパン」「ペニス]「おちんちん」「乳首」「乳房」「おっぱい」「口淫」
「手淫」「素股」「レンコン」「肛門」「SM」「キス」「接吻」「マスターベーショ
ン」「セックス」「アナルセックス」「射精」「男娼]「お小水」「どんでん」等々
の,エロ小説なみの言葉が散在する。
しかし,一読すれば,3名のライフヒストリーの語りがいわゆる「エロ手
記」とはまったく異なる,貴重な語りであることが,直ちにご理解いただける
ことと確信する。この勇気ある3名の方に,心から感謝する次第である。
第Ⅱ部は個人の論文集である。7名の8論文を掲載した。私のを除けばどれ
も力作であり,これらが加わることによって,この叢書の価値がさらに高まっ
た。
以上,中央大学社会科学研究所「セクシュアリティの歴史と現在」研究チー
ムの研究成果として,ここに出版する。
2005年6月吉日 横浜の自宅にて
矢島正見