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昭和43年『風俗奇譚』の女装小説『蒼い岩漿』④

2024年02月10日 | 女装小説
夜への期待

東名高速道路をインター・チュンジで 降りて、国道十六号線を二キロメートルぐら い八王子方面に走ると、二百四十六号線に交 差する。ドライバーの間で二四六(にいよんろ く)と呼ばれている国道だ。その交遊点から らに二キロメートルほど進んだ左側の杉林の 襲に、名門Sカントリー・クラブがあった。
平たんなパー七十一のコースは、距離は少ないながら、一ホールでとに杉の木立ちとパン カーでアレンジされ、最近のゴルフ・ブーム に便乗して、ただドライバーの飛距離だけを 自慢するにわか仕込みのゴルファーには苦手 のコースとされていた。 絶好のゴルフびよりだった。
広くはないが落ち着いた感じのクラブ・ハ クスで飲む、朝のコーヒーの味は格戦だった。
伸一はコースが一望できる窓辺の席で、さ さきほどからコーヒー・カップを口に進んでい た。

名門の名前をだいじにして、メンバーの人 会資格を厳選し、会員数を極力しているせいか、若いゴルファーの数が少なく、最近ど のコースでもよく見かけるほかのパーティーの迷惑も考えず大声でしゃべったり、傍若無 人な振る舞いをする光景は見られなかった。 メンバーがそれぞれ、ここの会員であることに誇りを持ち、自分たちのクラブとして、 芝の目一つもたいせつにプレイを楽しんでい る様子だった。
ロッカー・ルームで着替えをすませた大場 が、クラブ・ハウスに現れ、伸一の前に頭を 降ろした。
「まだお客さんはお見えにならないかね」 はい。もうそろそろお見えになるとは思いますが、ちょっと見て来ましょうか」 立ち上がろうとする伸一を、大場は手で制しながら、
「いや、いいだろう。まだ時間はあるし、ク ラブ・ハウスで待っていることは先様も承知のはずだから」
取引先の自動車会社の担当部長を招待する ことになっていた。いつもは社長に営業部長 が同行してプレイをするのだが、あいにく部 長が関西に出張しているのと、先方が三人で 来るので、大場が一人で相手をすることにな った。
壁に掛かっている、最近では珍しくなった大た。 型 のハト時計が九時をさしていた。
「社長。よろしかったら、私は会社のほうに まいりたいのですが」
「ああ、そうしてくれたまえ」 大場がタバコをくわえた。伸一はすかさずライターで火をつけながら、 「資材課長が、例の材料の値上げの件、今日 じゅうに結論を出して、先方と取り決めたい と申しておりましたが」
「うむ。君はどう思うかね」
大場は伸一の意見を聞いた。
「はい。昨今の状勢から判断いたしまして、 二、三パーセンの値上げはやむをえないと思ますが」
「そんなところだろうな。よし、資材課長に は、三パーセントを限度として先方と話をつ けるように言っておきなさい」
「承知しました」

あれから一年たっていた。大場は伸一を自 分の愛玩具とするための代償として与えた社 長秘書の職だったが、新しい世界に自分の生 きがいを見いだした伸一は、大場の期待にと たえ、機敏に立ちふるまい、現在では大場に はなくてはならない、貴重な存在となっていた。
それは昼間の仕事よりもそうだが、夜、横浜のマンションの一室で繰りひろげられる妖 しい愛の戯れも、伸一は大場のすべてであった。

「夕方何時ごろお迎えにまいりましょうか」
「うひ。夜の招待は笠間常務にまかせてある。 彼が夕方迎えに来るから、私は失礼させても らう。君は先にマンションに帰って、したく していなさい。私はタクシーを使って五時 ろまでには帰るから」
「はい。ではそうさせていただきます」
気のせいか、伸一の耳たぶにわずかな朱が 差したようだった。立ち上がって一礼して伸 一は、クラブ・ハウスから姿を消した。その 後ろ姿を優しいまなざしで見送りながら、大 場はウエイトレスが運んで来たコーヒーを静 かに口に運んだ。
 続く
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