ホテルという連想で思い出しました。
大学生の夏、北海道を周遊券を使って旅しました。
札幌について、さてどこに泊まろうかと安宿を探していたとき目に飛び込んできたのは中島公園の札幌Pホテル。
堂々としたシティホテル。
学生の自分に泊まれるホテルではありません。
「いつか、ここにとまろう」なんて、立身出世物語のようなことは考えませんでしたけどね。
ここを舞台にしたラブアフェアを描いているのが梶山季之先生の『苦い旋律』です。
若い美人OL一貫寺邦子と生け花の師匠藤野登志子は同性愛関係です。
登志子はレズビアン。弟子となった邦子を強引に恋人にして、逢瀬を重ねます。
邦子はレズビアン愛に夢中となり、登志子なしでも生きられないくらいに想いを募らせるのです。
二人は札幌に旅をします。
羽田発札幌行きのフライトは新婚旅行のカップルで満席。
「私たちも新婚旅行ね」
登志子は邦子の耳元で囁きます。
愛する登志子から「新婚旅行」といわれたことで邦子の心は燃え上がります。
そして、札幌のホテルにチェックインした二人は観光に行かず、部屋のなかで愛し合うのです。
このホテルはPホテルだと思います。
豊平川と中島公園とに挟まれたホテルでは、結婚式でもあるのか、モーニングや、振袖姿の男女が、ロビーを右往左往していた。
ボーイに二つのトランクを持たせて、エレベーターに乗った二人は、お互いの眼と眼とで、あることを確かめ合った。
早く二人きりになりたいわね、と二人の眼は語っていたのである。
ボーイにチップをやり、浴衣とお茶を運んで来た客室係の女性に、またチップを与えると、あとはもう訪う者もない。
窓にカーテンをおろし、ドアの把手のボタンをロックすると、最早、二人だけの世界であった。
「ねえ、ブラジャーと、ストッキングだけは、はずさないで」
洋服を脱ぎながら、藤野登志子は命令した。
「あら、どうして?」
邦子は問い返す。
「その方が、興奮するのよ……」
登志子は、ちょっと怒ったような表情を泛べる。それは彼女が、照れている時の癖なのだった。
邦子は云われた通りにした。
「会いたかった?」
藤野登志子は、ゆっくり唇を吸いつけながら、そんな判り切ったことを、ささやいてくるのだ。
「ええ、とっても!」
邦子は、目を閉じながら、
「お姉さまは、三鬼さんがいらっしやるから、淋しくないでしょうけれど」
と、つい皮肉まじりの怨み言を云っている。
「莫迦ねえ....ヤキモチ焼いてるの?」 1
登志子の手は、ブラジャーの上から、ゆっくり邦子の乳房を、揉みしだいている。
「ああ....感じるわ……」
邦子は背筋を震わせた。
このブログのレギュレーションだと、皆さんにお読みいただけるのは、ここまでかなぁ?
続きは梶山季之先生の著書『苦い旋律』をお買いになってお読みください。
この本、レズビアンだけではなく、ゲイ・バイ・トランスジェンダーの方にも興味深くお読みいただけるはずです。