200305_横尾宣政氏(1954年生まれ)が書いた『野村証券第2事業法人部』を読み、「デリバティブ」という言葉を思い出した
横尾宣政 『野村証券第2事業法人部』 講談社 2019年
横尾宣政氏:1954年生まれ
この本の著者は、オリンパス(カメラの会社)という会社の粉飾決算(赤字を表に出さないこと)に加担したという理由で、実刑判決を受けた。
その恨みかどうかは分からないが、同氏は1978年に野村証券に入社して以来の半生を洗いざらいこの本に書いた。
この時代に生きた者として、当時は皆めちゃくちゃなことをしていたな、と思い出した。
私が知っているエピソードを一つ。
ある会社の決算書の「特別損失」の欄に、「為替差損」という項目があった。
なぜ、為替差損が発生したのかと尋ねると、次のようなものであった。
・・・・
ある銀行が、その会社に次のような「商品」を販売した。
その商品とはわかりやすく言えば 「ばくち」 である。
以下、説明すると、
1.月末の円・ドルの為替レートが120円以上の円安の場合
その会社は、1ドルを(たとえその時のレートが130円であろうと)120円で買うことができる「権利」を取得する。
<注意>それはあくまで、「買うことができる」権利なのであって、買わないという選択もできる。
2.為替レートが120円未満の場合
こんどは逆に、たとえ1ドル=80円であろうとも(つまりこの契約がなければ、80円で1ドルが買えるのであるが)、1ドルを120円で買わなければならない。
こちらの方は、買っても買わなくてもよいということではなく、必ず買わねばならない。
つまり「義務」である。
3.この取引は、毎月月末(つまり年間12回)の円・ドルのレートで清算する。
期間は20年。
途中解約はできない。
元本は結構な額であった。
上記のような、だれかが頭の中で考えたものに過ぎないことを、文章で表現し、いわゆる「さいころをころがす」ようなことを、あたかも「最先端」「数学的」「現代的」であるというふうに人を誤解させ、且つ、もうかりそうに誤解させ、数学に弱い人(ほとんどの人は弱い)を引き付けた。
そんな「商品」がこの時代には山ほどあった。
そしてそれを「デリバティブ」などといった。
以上
横尾宣政 『野村証券第2事業法人部』 講談社 2019年
横尾宣政氏:1954年生まれ
この本の著者は、オリンパス(カメラの会社)という会社の粉飾決算(赤字を表に出さないこと)に加担したという理由で、実刑判決を受けた。
その恨みかどうかは分からないが、同氏は1978年に野村証券に入社して以来の半生を洗いざらいこの本に書いた。
この時代に生きた者として、当時は皆めちゃくちゃなことをしていたな、と思い出した。
私が知っているエピソードを一つ。
ある会社の決算書の「特別損失」の欄に、「為替差損」という項目があった。
なぜ、為替差損が発生したのかと尋ねると、次のようなものであった。
・・・・
ある銀行が、その会社に次のような「商品」を販売した。
その商品とはわかりやすく言えば 「ばくち」 である。
以下、説明すると、
1.月末の円・ドルの為替レートが120円以上の円安の場合
その会社は、1ドルを(たとえその時のレートが130円であろうと)120円で買うことができる「権利」を取得する。
<注意>それはあくまで、「買うことができる」権利なのであって、買わないという選択もできる。
2.為替レートが120円未満の場合
こんどは逆に、たとえ1ドル=80円であろうとも(つまりこの契約がなければ、80円で1ドルが買えるのであるが)、1ドルを120円で買わなければならない。
こちらの方は、買っても買わなくてもよいということではなく、必ず買わねばならない。
つまり「義務」である。
3.この取引は、毎月月末(つまり年間12回)の円・ドルのレートで清算する。
期間は20年。
途中解約はできない。
元本は結構な額であった。
上記のような、だれかが頭の中で考えたものに過ぎないことを、文章で表現し、いわゆる「さいころをころがす」ようなことを、あたかも「最先端」「数学的」「現代的」であるというふうに人を誤解させ、且つ、もうかりそうに誤解させ、数学に弱い人(ほとんどの人は弱い)を引き付けた。
そんな「商品」がこの時代には山ほどあった。
そしてそれを「デリバティブ」などといった。
以上