1年だけの友達(1)

2020-10-03 09:16:47 | 童話
私はこの家の玄関の横に生えている小さな草で、小さなお花をたくさん咲かせます。だけれど、お花の本には私の名前はのっていません。
この家の女の子は私を大切にしてくれて、毎朝、学校へ行く時に『小さなお花さん、おはよう。行ってきます。』と言ってくれます。
そして、学校から帰ってくると『小さなお花さん、ただいま。今お水をあげるからね。』とお話しをして、お水をかけてくれます。

小さな草の私も夜になると眠るので、夢をみることがあります。
昨日の夢は、女の子と私は手をつないで学校へ歩いて行き、学校で私は女の子の横にすわりました。
国語の本を読む時は、女の子の次に読み、算数のお勉強では、女の子と一緒に手をあげて答を発表しました。
体操の時間は、私は走れないので、すわって女の子が走るのを応援しました。
そして、女の子と手をつないで帰って来て、玄関の横で女の子とわかれました。

朝になって、女の子が『小さなお花さん、おはよう。行ってきます。』と言って学校へ行ったので、私は『行ってらっしゃい。』と言う練習をしました。
そして、学校から帰ってきた女の子が
『小さなお花さん、ただいま。今お水をあげるからね。』
と言ってくれるので、私は
『おかえりなさい。』
と、
『いつもお水をありがとう。』
と言う練習もしました。

次の日は声が小さくて女の子は気がつきませんでした。だけれど、その次の日、私は
『行ってらっしゃい。』
と大きな声で言いました。すると、女の子はうれしそうに
『行ってきます。』
と言って学校へ行きました。そして、女の子が帰ってきた時に
『おかえりなさい。』

『いつもお水をありがとう。』
を言うと、女の子はうれしそうに
『ただいま。』
と言いました。