カタツムリの富士登山(5)

2018-12-01 13:12:22 | 童話
『ランランラン、ランランラン。』
『ピッピピピ、ピッピピピ。』
『寒くなってきたね。高い所は、山のふもとよりずっと寒いだね。』
『僕もこれ以上高い所へ登って行くと、他のトンボに会えなくなってしまうので、僕も山のふもとへ下りていくね。カタツムリ君も気を付けてね。』
『僕はまだ登っていくね。ここまで一緒に登ってきてくれてありがとう。僕が下りて来たら、また一緒に下りようね、バイバイ。』
『うん、カタツムリ君、気を付けてね、バイバ~イ。』

そして、ここからは僕だけで頂上を目指して登って行きました。チョウチョさんもトンボ君もいないので、注意して登って行きました。
『う~、寒い。風が吹くと急に寒くなるなぁ。』
僕は、お父さんの言った『寒くなったら、背中の家から出たら絶対ダメだよ。』を思い出した。
『よしっ、今の内に風のこない温かい場所を探そう。』
丈夫な岩の、風のこない場所を探した。
『あっ、ここは丈夫だし、穴もあまり大きく無くて、風が入ってこないや。』

僕が穴の中に入ると、コケが生えていて温かく、コケはお水をもっているので、僕の体も乾燥しないみたいだ。
『よしっ、ここに決めた。僕は温かくなるまでここにいよう。
『コケさん、春まで一緒にいようね。』
そして、僕は穴の外のお水をタップリ飲んで、僕の家に入って寝ました。
『温かいなあ。』

『あ~あっ、よく寝たなぁ。』
僕は、あまり寒くないので目がさめました。
そして、岩の穴の中から外を見ると、雪はほとんど無くなっていた。
『お父さんとお母さん、僕は約束を守って家の中にいたよ。また今日から富士山を登るからね。』
穴の外でお水をタップリ飲んで歩き始めた。雪の上や、雪解け水の上は冷たいので、乾いている所を歩いて行きました。

『ランランラン、ランランラン。』
今度は、僕が歌っても、だれも『ルンルンルン、ルンルンルン。』や『ピッピピピ、ピッピピピ。』と歌ってくれる友達がいません。
『下りる時に、トンボ君やチョウチョさんと一緒に歌えるから、今は僕だけで歌おう。』
そして、僕は何日間も『ランランラン、ランランラン。』と歌いながら登って行った。
また時々寒い日があるので、寒い時は暖そうな岩の穴を探して暖かくなるのを待つことにしました。
僕の歩いている所から遠くを見ると、人間が登って行く登山道に、多くの人がリュックを背負って、ツエを持って一列に並んで歩いている。だけれど僕みたいに歌いながら登っている人はいません。


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