僕達の小さくて大きな森(4)

2020-06-20 09:04:34 | 童話
友達がサッカーボールをソッと植木に近付けた時、サッカーボールがブルブルと震えてから小さくなって植木の中に入って行った。
『うわっ。』
『入って行ったね。』
『どうすれば取りに行けるのかなぁ。』
『うん、どうすれば取りに行けるのかね。』
『エンピツを持っていると探しに行けるのかなぁ。』
『エンピツを持って、二人で一緒に探しに行こうか?』
『行けるかなぁ?』
『行けるよ。』

机の上からエンピツを2本持ってきて、1本ずつ持って植木の近くまでやってきた。
『もう少し近付くとブルブルと震えるよ。』
『もうすぐだね。』
二人のエンピツがブルブルと震えだした。
『うわっ。』
『ガンバレ。うわっ。』

僕達の小さくて大きな森(3)

2020-06-19 11:33:28 | 童話
次の日、宿題が終った時に友達がサッカーボールを持ってやって来た。
『植木のことをおじいちゃんに話したの?』
『ううん、まだ話して無いよ。』
『少しの間二人だけの秘密にしておこうか?』
『そうだね、秘密だよね。』

『今日も植木が置いてあるね。』
『うん、今日もおじいちゃんは植木を片付けないで出掛けたんだ。』
『今日もボールやエンピツが植木の中に入って行くのかなぁ?』
『今日はまだやっていないので分からないよ。』
『この大きなサッカーボールも植木の中に入って行くのかなぁ?』
『やってみようか?』
『でもサッカーボールはこれ一個しかないよ。』
『大丈夫だよ、植木の中へ探しに行けばいいんだよ。』
『探しに行けるかなぁ?』
『やってみようよ。』
『そうだね、やってみようか。』

僕達の小さくて大きな森(2)

2020-06-18 06:26:47 | 童話
友達が植木に向ってボールをソッと投げた。その時、ボールが小さくなっていき、植木に当たりそうなったが、ボールは見えなくなってしまった。
『やっぱりボールが小さくなったね。』
『うん、そうだね。今度は僕が投げてみるね。』
僕は持っている最後のボールをソッと投げたが、やっぱりボールが小さくなって見えなくなってしまった。
『今度はボールが小さくなっていったのがよく見えたね。』
『うん、そうだね。』
『今度はボールではなくエンピツを投げてみようか?』
『そうだね。』

僕は机の上に置いてあるエンピツを持ってきて植木に当たりそうなくらいまで近付けた。
その時エンピツがブルブルと震えたので、僕はビックリしてエンピツを離した。するとエンピツは小さくなって見えなくなってしまった。
『ああ、ビックリした。』
『そのままエンピツを持っていたら、どうなったのかなぁ。』
『僕達も小さくなって、見えなくなってしまうのかなぁ。』

『もうおじいちゃんが帰ってくると思うのでキャッチボールは止めよう。』
『そうだね、ボールも3個無くなってしまったので、キャッチボールもできなくなってしまったしね。』
『僕はもう帰らないといけないので、また明日、学校から帰ったら遊ぼうか。』
『そうだね、3個のボールも明日探そうね。』
僕は植木が気になっていたけれど、ボールは明日探すことにした。

僕達の小さくて大きな森(1)

2020-06-16 09:44:06 | 童話
去年、僕の投げたボールがおじいちゃんの大切にしている盆栽という小さな植木に当たり、植木を折ってしまったことがある。
だから、僕が家にいる時にはおじいちゃんは植木を大事にして片付けているが、今日は片付けるのを忘れて出掛けたみたいだ。

僕は友達とボールが植木に当たらないようにキャッチボールをしていたが、僕の投げたボールが植木の方に飛んで行って植木に当たりそうになったが、その時ボールが見えなくなった。
植木には当たらなかったので植木は壊れなかったが、ボールが見つからない。

『危なかったね。』
『うん、危なかったね。』
『だけどボールはどこへ行ったのかなぁ。』
『見つからないね。』
『植木に当たりそうになったのが見えたのに、急にボールが見えなくなったね。』
『ボールが急に小さくなって植木の所にぶつかったみたいに見えたよ。』
『もう一個のボールをそっと投げてみようか?』
『うん、だけど植木が壊れるとおじいちゃんに怒られるからソッと投げてよ。』
『うん、分かった。』

夢の入口(4)

2020-06-15 07:10:26 | 童話
その夜、向うから友達が携帯電話を持ってやって来た。
『やぁ、また夢の中で会ったね。』
『僕は、物置の夢の入口から入って来たけれど、君はどこから入って来たの?』
『僕は2階に上がる階段の下の夢の入口からだよ。』
『よし、録音するよ。夢の入口は、物置と2階に上がる階段の下だよ。』
『録音できたかどうか聞いてみようよ。』
『そうだね、録音されていないと困るからね。』
『夢の入口は、物置と2階に上がる階段の下だよ。』
『わぁ、録音されている。』
『今度は大丈夫だね。』
『二人とも夢の入口を録音できたのを確かめたので、夢から出るよ。』

そして、目がさめて、携帯電話の録音を聞いてみた。
『グウ~、グウ~、グウ~。』
『あれっ、お父さんのイビキだ。』
『本当だ、おじさんのイビキだ。』
『おかしいなぁ、イビキ以外は、何も聞こえないや。』
『そうだね、何も聞こえないね。』

今は、自分達の家で二人別々に寝て、夢の入口を探している。
夢の入口が見つかったら教えあうことにしているが、二人とも入口はまだ見つかっていない。

おしまい