夢の入口(3)

2020-06-14 07:27:51 | 童話
その夜、向うから友達がノートと2本のエンピツを持ってやって来た。
僕も自分の手を見ると、両手にノートと2本のエンピツを持っていた。

『やぁ、また夢の中で会ったね。』
『僕は、家の玄関の夢の入口から入って来たけれど、君はどこから入って来たの?』
『僕は洋服ダンスの中からだよ。』
『よし、二人ともノートに書いておこうよ。』
『うん、そうだね。』
『あれっ、僕のノートは文字がいっぱいで書くところが無いや。』
『僕のノートも文字がいっぱいだ。』
『今度は前の時よりもっと、しっかりと覚えておこうね。』
『ああ、いいよ。君も忘れないでね。』
『君こそ忘れたらダメだよ。』
『二人とも夢の入口を覚えたから、夢から出るよ。』
そして、目がさめたが、二人とも夢の入口は覚えていなかった。

『僕の持っている携帯電話は録音機能があるから、今度はこの携帯電話を持って行って、夢の入口が分かった時に録音しようよ。』
『うん、良い方法だね。』

夢の入口(2)

2020-06-13 07:19:28 | 童話
向うから友達がノートとエンピツを持ってやって来た。僕も自分の手を見ると、両手にノートとエンピツを持っていた。
『やぁ、また夢の中で会ったね。』
『僕は、机の下の夢の入口から入って来たけれど、君はどこから入って来たの?』
『僕は食堂のテーブルの下からだよ。』
『よし、二人ともノートに書いておこうよ。』
『うん、そうだね。』
『あれっ、僕のエンピツは芯が折れていて書けないや。』
『僕のエンピツも芯が折れていて書けないや。』

『しかたがないので、夢の入口の場所を、しっかりと覚えておこうね。』
『ああ、いいよ。君も忘れないでね。』
『君こそ忘れたらダメだよ。』
『二人とも夢の入口を覚えたから、夢から出るよ。』

そして、目がさめたが、二人とも夢の入口は覚えていなかった。
『今度は、エンピツが1本折れても大丈夫なように2本持って行こうよ。』
『そうしようよ。今度は大丈夫だよね。』
そして、二人はノートと2本のエンピツを枕元に置いて寝た。

夢の入口(1)

2020-06-12 08:44:06 | 童話
ある日、僕は夢の事を書いてある本を見つけた。その本には、
『みんなで楽しく遊んでいる時に目がさめて、夢が終ってしまうことがあるよね。それは、夢の出口から出て来たからなんだ。夢には入口もあるんだけれど、夢の出口から出てくると、みんな夢の入口の場所は忘れてしまうから、夢の入口はだれにも分からないだよ。』
と書いてあった。

それで、僕は友達と二人で夢の入口を探すことにして、友達が僕の家に泊まった。
そして、夢を見ることが一番多い場所を、家の中で探すことにした。
僕達は夢の中に入ったらお互いに教えることにして、家の中の別々の場所で寝た。
最初の日は二人とも夢を見なかった。

次の日、向うから友達がやって来る夢を見たので、僕は友達に夢を見ている事を教えてあげた。
すると、友達も夢をみている事を教えてくれた。

朝になって、目がさめた時に二人とも夢の中でお話しをした事は覚えていたが、夢の入口がどこだったのかは覚えていなかった。
『夢の中で君に会ったのに夢の入口のことを覚えていないのは残念だね。』
『そうだね、もう一度夢の入口を探しに行こうよ。』
『うん、二人でまた行こうか。今度はノートとエンピツを持っていて、夢の入口が分かった時に、ノートに書いておこうよ。』
『そうだね、良い考えだね。』

そして、二人はノートとエンピツを枕元に置いて寝ることにした。

アリの小さな魔法使い(5)

2020-06-10 07:42:44 | 童話
それからね、大きなエサの運び方なんかも教えるんだけれど、たくさんのアリが、みんなで協力してエサを持たないといけないので、みんながエサのどこを持つのかをみんなで考えるんだ。魔法使いはね、その決める方法を教えるんだよ。

そして、普通のアリは、僕達魔法使いの決めたエサの見つけ方や、エサを運ぶ方法を、みんなでやるんだよ。僕達アリは、みんな仲が良いので、全員でやるんだ。

そして、ケガをしそうになった時は、僕みたいな魔法使いが、ケガをしないように、いつもみているんだ。君達のお父さんやお母さんも、君達のことを、ちゃんとみているんだよ。

だから、僕達魔法使いは忙しいんだ。

あ~、忙しい、忙しい。

     おしまい

アリの小さな魔法使い(4)

2020-06-09 06:44:08 | 童話
来年の計画ができると、僕達魔法使いは葉っぱに乗って、元いた所へ帰って行くんだ。
そう、遠くから集まって来た魔法使いは、魔法が切れたら、一度地面に下りてから、また魔法で飛んで帰るんだ。

そして、温かくなってきたら、僕達魔法使いがまた集まり、生まれたばかりのアリの先生をするんだ。
前からいるアリはエサ集めに忙しいので、僕達魔法使いが先生になって、いろいろと教えるんだよ。
アリ地獄のように危険な生き物や、水たまりの様に危険な場所などを教えるんだよ。巣の外は危ないからね。

だけれど、人間は大きくて、歩いたり、走ったりするのが早いので、人間に踏まれないようにするのは難しいんだ。
だから、人間に踏まれそうになった時は、僕達魔法使いが、人間が転ぶようにしているんだ。