アリの小さな魔法使い(3)

2020-06-08 07:26:40 | 童話
毎日働いていたアリ達が、冬になって巣穴でじっとしている間に、僕のようなアリの魔法使いが集まって会議をするんだよ。そうだよ、遠くからも、みんな魔法を使って飛んでくるんだ。

えっ、どうやって飛んでくるのかだって。僕達アリは、人間の魔法使いのように、空飛ぶホウキや空飛ぶジュータンは持っていないので、木の葉っぱに乗って飛んでくるんだ。
寒い時に、木の葉っぱがいっぱい飛んでいるでしょ。全部の葉っぱに、僕達アリの魔法使いが乗っているんだよ。

そうそう、遠くから集まってくる時は、魔法が遠くまで届かないので、魔法が切れた時は、一度地面に下りてから、また魔法で飛んでくるんだ。
だから、葉っぱは高くまで上がったり、地面に落ちてきたりしながら遠くへ飛んでいるんだ。

そして、魔法使いのみんなが集まったら会議が始まり、今年生まれたアリの数や、今年集めたエサの量などが報告されるんだ。
そのあとで、来年の計画を考えるんだけれど、来年のアリの数を予測して、みんなに必要なエサの量を考えて、そのエサの見つけ方や、エサを運ぶ方法を相談するんだよ。
だから、計算するのが大変なんだ。そうしないと、たくさんのアリが生きて行けないからね。

アリの小さな魔法使い(2)

2020-06-07 07:16:00 | 童話
それから大切なことなんだけれど、僕達アリの家は地面の下にあるので、雨がたくさん降ってきて僕達の家に水が入ってくると困るので、僕が魔法を使って巣の入口にふたをするんだよ。
いつもは、雨が降ってくるのが分るので、早くから全部の巣の入口にふたをするんだけれど、急に雨が降ってくると、魔法使いの僕は忙しいんだ。

だから、僕達アリが行列を作って歩いている時に、出かけるアリと帰って来るアリとが、頭でコッツンコをしているよね。あれはね、出かけるアリが帰って来るアリに、魔法使いの僕がどこにいるのか教えてあげているんだよ。
僕の魔法が必要になった時に、僕のいる所を知らないと困るからなんだよ。

えっ、僕のような魔法使いは僕だけかい、だって?
僕達アリは体が小さいので、魔法も小さくて遠くまで届かないから、僕みたいな魔法使いはたくさんいるんだよ。

アリの小さな魔法使い(1)

2020-06-06 07:28:01 | 童話
僕はアリですが、魔法使いなのです。
みんなが歩いている時や、走っている時に、つまずいて転ぶ時があるよね。
あれはね、僕達アリが踏まれそうになったから、僕が魔法を使って踏まれないようにしたからなんだよ。

それと、君達は見たことがあると思うんだけれど、大きなエサの昆虫を、僕達がたくさんで運んでいる時に、少し経ってみんなが気が付いた時には、もう運び終っていることがあるよね。これも僕の魔法なんだよ。

あとね、僕達はエサを探して遠くまで歩いて行くけれど、時々迷子になることがあるんだ。その時僕が魔法で帰り道を教えるんだよ。

もう一つ、僕達アリが高い木に登って行くのを見たことがあるでしょ。僕達アリも高い所から落ちることがあるんだけれど、その時も僕が魔法を使って、そっと地面に着くようにしているからケガをしないんだよ。

夢の向こう(3)

2020-06-05 07:31:34 | 童話
それからしばらくは、高い空の上を走っているモノレールに乗っている夢や、幅が広くて、高く大きなエスカレーターで駅から滑って降りてくる夢はみなかった。

ある日、僕はすごく高い空の上を走っているモノレールに乗る駅にいた。
切符を買って待っていると赤い色のモノレールが着いたので、みんなと一緒にモノレールに乗った。
モノレールは速いスピードで、前に乗った時と同じ高い空を走って行った。
そして、モノレールの駅から幅が広くて、高く大きなエスカレーターでみんなと一緒に滑って降り始めましたが、僕だけ途中で別のエスカレーターに乗り換えた。

僕が乗ったエスカレーターが着いた所に学校があった。教室の中を見ると先生が
『これから勉強を始めますので、みんな寝てください。』
と言って、生徒も先生も寝てしまった。寝ながら勉強をしているのだった。
チャイムがなると、先生が
『勉強が終りましたので起きて帰りましよう。』
と言ったので、生徒がみんな帰ってしまった。

よく見ると、学校の横に僕の家が有った。僕がドアを開けて家に入るとお母さんが
『あらっ、おかえり。寝ながら宿題をやりなさい。』
と言った。寝るのと起きているのが反対なのだと気が付いた。

そして、僕は寝ながら歩いてエスカレーターを乗り換えた所に来たので、夢の出口へ行くエスカレーターに乗り換えた。
『早く起きないと学校に遅れるわよ。』
とお母さんに起こされた。

僕は夢の向うより、夢の中の方が良いなぁと思ったので、今は夢の向うの探検はしていない。
君達は夢の向うの探検で何か見つけたら教えてほしいなぁ。

   おしまい

夢の向こう(2)

2020-06-04 07:14:19 | 童話
またしばらくして、夢の中で友達が向うから歩いて来たので『夢の向うから帰って来たの?』と聞いたら『そうだよ。』と言ったので、僕は『夢の向うへ探検に行ってくるよ。』と言うと、友達は『うん。』と言って夢の出口から出て行ってしまった。

僕は一人で、前の探検の時よりもずっと遠くまで夢の中を歩いて行った。
ずっと歩いて行くと遠くに家が見えてきた。
もっと歩いてその家に着くと、家の中から、僕のお父さんとお母さんが出てきて『おかえり。』と言った。
僕は『ただいま。だけど、ここは夢の中なの? それとも夢の向うなの?』と聞くと、お母さんが『ここは、夢の中よ。夢の向うは、ここからモノレールに乗っていくの。』と言った。

僕はすごく高い空の上を走っているモノレールに乗って、大きな駅に着いた。それから、幅が広くて、高く大きなエスカレーターで、みんなと一緒に駅から滑って降りた。

『早く起きないと学校に遅れるわよ。』
僕はお母さんに起こされた。大きなエスカレーターは、みんなが学校や会社へ行かないといけないので、みんな夢の出口へ向って行っていたのだ。
僕が大きなエスカレーターに乗っている時に、もう一つのエスカレーターが動いているのが見えた。

そうか、途中で、もう一つのエスカレーターに乗り換えれば、夢の向うに行けたのではないかと思った。
今度、すごく高い空の上を走っているモノレールに乗って、幅が広くて、高く大きなエスカレーターに乗ったら、僕だけエスカレーターを乗り換えようと考えた。