僕の元気君(2)

2021-03-10 10:21:29 | 童話
それから、昨日、隣りの男の子が転んで足を擦りむいたので、元気君が行ってバンソウコウになっていたんだ。だけど、すぐ良くなったので、今日帰って来たんだ。
『元気君はすごいんだね。』

元気君は勉強も教えてくれるよ。勉強を教える時は先生に変わるんだ。
『ふぅ~ん。元気君は今どこに居るの?』
今はね、う~んとね、居ないね。
『僕はもう帰るから、元気君が来たら教えて。』
ああっ、いいよ。

なんだ元気君、そこに居たの。友達が会いたいと言っていたけれど、会えないのかなぁ。
えっ、会っても見えないし、声も聞こえないの。やっぱり友達には見えないのか、残念だなぁ。君は僕だけの元気君だから他の人には会っていても、見えないし声も聞こえないのだね。見えるようになるのには、どうすればいいのかなあ。

そうだ、友達も友達だけの元気君ができるすればいいんだ。それにはどうすればいいの?
ふぅ~ん、学校での勉強や宿題をちゃんとやるだけじゃなくて、年寄りや小さい子に親切にしていると元気君が来るんだね。

そうだね、元気君が僕の所に来るようになる前に、僕は年寄りの人に電車の座席を代わってあげたし、迷子の子を交番に連れて行ってあげたし、妹が転んでケガをした時に薬を塗ってバンソウコウを付けてあげたりしたね。
でも、みんなやっている事じゃないのかなぁ。
そうか、1回だけではなく、いつも、ずっとやっていないといけないんだね。

僕は電車やバスの中ではいつも席を代わってあげているよ。よしっ、友達に教えてあげよう。友達にも元気君が来るといいんだけれどね。

だけど、友達の所に元気君が来たら、僕の元気君はどうなるの?
そうか、友達の元気君と僕の元気君とは別なんだね。元気君は何人くらい居るの?
そうか、数えきれないくらい居るのか。

元気君はいつまで僕の所に居ることかできるの?えっ、小学6年生までなの、もって永く一緒に居られないの?
そうか、元気君はたくさん居ても、子供の方がもっとたくさん居るから、次の子供の所へ行かないといけないんだね。

それでは後2年、僕と一緒に居られるね。
えっ、僕が悪い子になると元気君は直ぐ居なくなってしまうの?そんなのイヤだよ。良い子にしているから居なくなったらダメだよ。約束の指きりだよ。

僕の元気君(1)

2021-03-09 11:55:11 | 童話
僕の元気君は、今はハムスターだけれど、昨日はカピバラだったよ。

『どうして変わるのか?』だって、
あのね、元気君は、僕が友達でいて欲しいものに何にでもなってくれるんだ。自転車だったこともあるよ。明日は滑り台がいいかなぁ。

『どうして僕には元気君が居るのか?』だって、
それはね、僕が元気君を大事にしているからだよ。

『元気君はどこからきたのか?』だって、
遠い所から来たらしいけれど、僕の知らない所らしいんだ。

『元気君はお話しするのか?』だって、
僕と居る時だけ、お話しをするよ。

『元気君を見たい。』だって、
お父さんもお母さんも見えないらしいから、君も見えないと思うよ。

『元気君はずっと一緒に居るのか?』だって、
いつも僕の所に居るけれど、時々元気の無い子の所へ行くんだ。
先月は病気で入院している女の子の所へずっと行っていたよ。
『その女の子は元気になったの?』うん、元気になって退院したから、また僕の所に帰って来たんだ。
『その女の子の所に居る時は、何になっていたのか?』だって、
最初は絵本になって、女の子のお母さんに読んでもらっていて、元気になり始めてからは上履きになって、足を優しく包んでいたんだって。

ぼく(7)

2021-03-08 09:11:53 | 童話
『もう一つあるよ。お母さんやお父さんが手を近付けてきたときに、手のひらを握るのではなく、指を一本だけを強く握るんだ。そうすると、みんな喜ぶよ。』
『ふぅ~ん、そうなんだ。』
『わたしも指を一本だけ握ってあげて、みんなに喜んでもらっているわ。』
『僕もやっているよ。そうすると、みんなが「かわいいわねえ。」と言って喜んでいるよ。』

『もう他に無いかなあ。』
『いっぱい有るよ。大人の人が「居ない居ない、バァ。」と言ったら、声を出して笑ってあげるんだ。これも喜ばれるよ。それからね、足の裏をコチョコチョされた時は、足だけではなく、両手両足を全部バタバタさせるんだ。足だけでは喜ばれないよ。あっ、バタバタさせる時に口を大きく開けることを忘れないようにね。』
『うん、分かった。今日からやってみるよ。』
『わたしもやるわ。』

『僕はもう大きいからハイハイをしているんだけれど、ハイハイしている時にドテッと転んで見せると笑いながら喜ぶよ。テレビのお笑い番組で、時々わざと転んでいるのを見て、わざと転んだのを知っていて笑っているけれど、僕の転ぶのは本当に転んでいると思っているみたいだよ。』
いっぱい有るんだね。

だけれど、お母さんやお父さんもぼくと同じ事をやっていたと思うんだけれど、大人になると全部忘れるのかなあ?
ぼくも大きくなったら忘れると思うので、今の内にお母さんやお父さんを喜ばせてあげようと思うんだ。

おしまい

ぼく(6)

2021-03-07 10:06:54 | 童話
『ねえ、みんな、お母さんやお父さんを喜ばせる方法が有るんだけれど、みんなのお母さんやお父さんはどうかなあ?』
『どうするの?』
『大きく口を開けて、両手と両足をバタバタさせるんだよ。そうすると、みんなが「かわいい、かわいい。」と言って喜ぶよ。お母さんは、ぼくの顔に自分の顔を押しつけて喜ぶよ。』
『わたしもやっているけれど、お母さんもお父さんも喜ぶわよ。』
『僕のお母さんも喜ぶよ。』
『ふぅ~ん、よし、僕も家に帰ったらベッドの上でやってみるよ。』
『すごく喜ぶよ。』

ぼく(5)

2021-03-06 13:53:30 | 童話
『あっ、また赤ちゃんがお医者さんの診察が終って出て来た。』
『お医者さんは何と言ったの?』
『うん、順調に成長していますねと言ったよ。』
『良かったね。』
『うん、お母さんも喜んでいたよ。ぼくはたくさんオッパイを飲んでいるからね。』

『もうお母さんと帰るからね。みんなバイバイ。また今度ね。』
『うん、バイバ~イ。』
『バイバ~イ。』
『赤ちゃんのお友達がたくさん居てよかったね。』
『・・・』
『さあ、帰ってきたからベビーベッドで寝ててね。』
『・・・』

ぼくはお母さんのお話ししている事は全部分るんだけれど、まだ口でお話しができないので黙っています。
だけれど、目でお話しをしているのがお母さんには分かりません。お母さんも赤ちゃんの時には目でお話しをしていたのになあ。
ぼくもきっと、大きくなったらみんなと目でお話しができなくなるんだね。