小学校から大学まで、学校の勉強というものにはなじめなかった私でしたが、図書館や図書室は大好きで、そこには、必ずお気に入りの本があって、いまでもその本がある場所の書架の画像たちが記憶が淡くなりながらも目に浮かぶことがあります。
好奇心は本が解決してくれる。本がさらに好奇心を生み出してくれる。好奇心の赴くまま、自分自身の興味のある分野や作家を追いかけて、読書をしていました。
大学生の時には、夏休みのたびに図書館の書籍整理のアルバイトをしていて、その図書館にしかない本にもさわることができて、興味はあるけど教えてもらえない例えば「物性」に関する本などを見つけたりして、とても楽しい時間を過ごしていました。
図書館の中の少し異質な現代文学の書棚に、「赤いダイヤ」という本を見つけ、借り出して本を読んだのが、作家「梶山季之」との出会いでした。
「赤いダイヤ」の衝撃は、井原西鶴の「日本永代蔵」を読んだとき、バルザックに違和感を覚えゾラを読んだとき、ブルーバックスの「絶対零度への挑戦」を読んだとき、「奇想天外」というSF雑誌を手にしたとき以来のものでした。そして、経済小説の面白さを教えてくれました。
それ以来、講義時間が空くと、図書館の窓辺で日差しを浴びながら「赤いダイヤ」を読むのが気分転換の時間のひとつでした。
書店の文庫棚には、作者名を指したコーナーがありましたが、かなり艶っぽいものが多く、手に取ることをためらわれるものがありましたが、それでも、自分の本棚に、「青いサファイヤ」などの書籍が一冊一冊と増えていきました。
「もっと経済小説書いてくれればいいのに」と思っていました。
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それからずいぶん時がたち・・・
私の書棚の景色は10数冊の専門書を除き、全く別のものに変わってしまいました。
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先日、所属している異業種交流会、埼玉県産学官交流プラザで、総会の講演会で大下栄治さんのお話を聞きました。
社会の表に出てこない事柄を話されて、とても興味深い講演会でした。
講演会後、名刺交換をさせて頂き、事前に「最後の無頼派作家梶山季之」の書籍を書かれていたことを知っていたので、少し話をさせて頂きました。
「(世の中の人が)梶山季之を知らない」という話を聞いて、戻ってから、Amazonで調べてみたら、ほとんど絶版になっているようでした。
早速、「最後の無頼派作家梶山季之」を手元に。
帯に書かれた「昭和の転載作家!初めて明かされる凄すぎる、45歳の生涯!渾身の書き下ろし!」が示すままの内容でした。
・文春砲のDNAを作った人
・先にシナリオをつくり取材するのではなく、材料主義、つまり取材して取材して事実を積み上げて記事にする
・「売れなくては申し訳ない」と「書きたいものを書きたい」のはざまで常に葛藤し続けた人
・・・男性の方はまた違う感想を持たれるかも・・・
読み進めるにつれ、歯車がカチカチなって、答え合わせができているような感覚に襲われました。
「(世の中の人が)梶山季之を知らない」というのはもったいないなあと思うのと同時に、直木賞候補となり今も岩波文庫になどにある「李朝残影」を読んだことのある方、経済小説の新しい扉を開いたと感じたことのある方、艶っぽい本に触れたことがある方、少しでも名前を知っている方は、一読してみる価値のある本だと思います。
極めて個人的なこと・・・
学校の勉強になじめず、本ばかり読んでいたことが、今の仕事に役立っているのは読解力だけだと思っていましたが、近年なんとなく感じてはいたことでしたが、何十年もたった後に仕事の役に立っているんだなあと、本を読み終わった後感じて、なんだか愉快になってしまいました。