http://www.sankei.com/premium/news/161027/prm1610270006-n1.htmlより転載
2016.10.28 01:00更新
【政界徒然草】
解散あれば「86減」…自民若手にショック療法は通じるか 取り返しつかない「最弱」に党執行部、40人を格付け!
早期の衆院解散・総選挙が取り沙汰される中、自民党幹部が支持基盤の弱い若手議員の教育に焦りを隠せないでいる。党所属衆院議員の約4割が当選1、2回の若手で占められており、このままでは「86議席減」との説もささやかれる。党執行部は若手対象の選挙塾を開くなどして尻をたたいているが、効果は議員によってまちまち。「見せしめに2~3人の現職を差し替えたほうがいい」との“ショック療法”を求める声まで挙がり始めている。
「過去2回の衆院選はフォローだったが、同じ状況が続くとはかぎらない」
衆院東京10区と福岡6区の補欠選挙での勝利から一夜明けた24日。下村博文幹事長代行は二階俊博幹事長が国会内で開いた「選挙塾」で、出席した若手議員たちにこうハッパをかけた。
下村氏はさらに、次期衆院選で野党統一候補が擁立された場合、自民党は選挙区で前回の223議席から「86減」の137議席になるとの試算も披露。あえて具体的な数字を示すことで、危機感の乏しい若手に現実味を感じさせる狙いがあったようだ。
党選対幹部は「最弱グループ」の若手議員たちが支持基盤を固められない理由として、選挙運動の中心となる地元の地方議員との連携ができていないからだと解説。「すでに取り返しがつかないほど折り合いが悪いケースがほとんどで、ほぼ処置なし」と頭を抱える。
また、公募で選ばれた議員の中には「党本部が面倒をみてくれる」とタカをくくり、自ら支持を広げるための努力をしない者も目立つという。選挙区での連日の駅立ちなど「まじめさや心意気を売る活動」(選対幹部)が少なく、地元の地方組織から候補の差し替えを求める声も挙がっている。
党執行部が選挙塾を開いたのは、こうした「最弱グループ」にムチを入れ底上げを図る目的がある。自らも落選経験のある萩生田光一官房副長官は選挙塾で「皆さんの活動状況次第では候補者を差し替えるのが安倍晋三総裁(首相)の意向だ」とクギを刺した。
ただ、今回の選挙塾の内容に疑問を呈すベテランもいる。選挙塾では、各議員に課している「党員獲得千人以上」のノルマ達成に向け、党幹部が自らのやり方を指南するなどしたが、「党員を増やせる力がある者は選挙に強い。選挙に強くなってこそ党員を増やせる。順番が間違っている」「党役員が自分のやり方を一方的にしゃべって終わりでは選挙塾にならない」などの批判もある。
若手が一気に増えた第2次安倍政権発足後の選挙塾を振り返ってみると、地元選挙区の効果的な回り方や後援会のつくり方など、当時の党執行部の選挙塾は具体的なノウハウを教える内容がほとんどだった。
例えば、石破茂前地方創生担当相は幹事長時代、「(地元選挙区では)祭りで屋台を一軒ずつ回り、焼きそばもフランクフルトも腹いっぱいになるまで食べろ」などと細かく指示した。
谷垣禎一前幹事長は平成24年に大量当選した若手衆院議員を「虎の子の119人」と称し、当時選対委員長だった茂木敏充政調会長を中心に、後援会の築き方や街頭演説の心得など、実用的な指導をした。
党選対幹部は「今回の選挙塾は『差し替えをするぞ』という警告。それを真面目に受け取るか受け取らないかは、若手次第だ」と、若手の意識改革に期待感を示した。(政治部 豊田真由美)