台湾が”脱原発”決めた理由2017年1月24日放送
富川悠太:
こちらをご覧ください
台湾の夜市の様子なんですが、明かりが煌々と輝いていまして、多くの人で賑わっていますね。
おいしそう。
安くて美味しいんですよね、私も行ったことがあるんですが。
で、この台湾では電力の14%を原発で賄っているんですが、その台湾がアジアで初めて、脱原発に踏み切ったんです。
その理由は…
龍門村 呉世 揚 村長(41):
あれが台湾で4番目の龍門原発です。
今年法律が改正され完全に閉まることになりました。
原発を抱える龍門村の呉世村長。
村長になった6年前から原発の凍結を訴えてきました。
龍門村 呉世 揚 村長(41):
我々が原発に反対するのは福島の事故を見たからです。もし何か起きたら日本のようになり、事故処理はうまくいかないでしょう。ここは通称「日の丸原発」。
日本企業が主要部分のほとんどを作ったことからそう呼ばれています。
しかし、一度も発電することなく幕を降ろすことになりそうです。
2011年3月24日
台湾民進党 蔡英文主席:
脱原発を掲げることは政治リスクが高いけど、原発事故のリスクに比べたら大したことありません。台湾のトップを決める去年の総統戦で勝利を収め6年ぶりに政権交代を果たした蔡英文氏。
選挙の公約として掲げた一つが「脱原発」でした。
台湾立法院 今月11日(2017年1月)
電業法改正案可決します。
選挙の公約通り今月、台湾の立法院で2025年までに原発ゼロを明記した法案が可決されました。
蔡英文総統率いる与党民進党は、全体の14%の電力をまかなう原発を止める代わりに自然エネルギーを4%から20%に引き上げるとしています。
脱原発法案を取りまとめた民進党の幹部は「
福島の事故が大きなきっかけになった」と言います。
台湾民進党 陳明文議員:
チェルノブイリの事故は遠くの出来事だと感じましたが、日本の原発事故には震えあがりました。
こんな事が本当にあり得るんだと。
日本ですら原発の事故を起こしてあれほど大きな被害が出てしまいました。
ましてや台湾があのような事故に対応することは不可能でしょう。
資源に乏しい台湾は1970年代から原発を導入してきました。
現在4箇所に原発があり、そのうち3箇所は台北から30km程しか離れていません。
事故が起きれば300万人ほどが避難しなければならないと言います。
そして台湾は地震の多発地域です。
住民は
みんな反対だよ
原発は火力や水力とは違い危険なものだから。
子供を持つ親として心配だから、原発を廃止すると聞いて喜んでいます。
2013年脱原発を訴える10万人デモ
子供を守れ
原発反対
福島の事故後反原発のうねりが高まり、第4原発の建設時には8割の人たちが反対しました。
反対運動を主導してきたNGOは、
脱原発を進めてきたNGO 洪中⚫️氏:
日本で原発を持つ電力会社が影響力を持っているのを知っていますが、
台湾では市民が政治に圧力をかけるんです。
私たちは特別なことは何もやっていません。
結党以来脱原発を掲げてきた民進党は電力業界とのしがらみがなく、
前政権の国民党で原発推進の族議員が去年軒並み落選したことも政策の転換につながったと言います。
公営の台湾電力は政権交代によって分社化や電力の自由化を迫られています。
台湾電力 林徳福報道官:
当社は独占状態なので今後影響が出ると思います。
我々は公営企業なので政府に従うのは絶対です。
再稼動を進める日本。
そしてアジアで初めて脱原発を決めた台湾。
台湾民進党 陳明文議員:
確かなことは
福島の原発事故を受けて、台湾は懸念を深め脱原発を推進したということです。
そして脱原発法が成立したのは、台湾の人々の共通認識があったからです。
この目標に向かって進まなければなりません。
台湾第4原発がある龍門村。
原発が建ってからは観光客が減ったと言います。
龍門村 呉世揚村長(41):
万が一原発で事故が起きたら誰が責任を取るんですか?
権力者は責任を取らないでしょう。
経済のために原発を動かすというのは冗談を言っているとしか思えません。富川悠太:
事故後日本は原発再稼動を進めていて、中国もインドも原発の設置をどんどん増やしていっています。
そんな中で台湾は脱原発に踏み切った。
後藤さん、この違いはなんでしょうか?
後藤謙次:
あのー、富川さんも覚えていると思いますが、6年前の東日本大震災の日にですね、一番多くの義援金を寄せてくれたのが台湾の人たちなんですね。
200億円以上といわれて、日本の政府が世界の有力紙に感謝の広告を出したほど応援してくれたんですね。
その分台湾の人たちは被災地の状況、とりわけ第一原発に強い関心を寄せていてですね、去年の9月には当時の日本の総理大臣菅直人さんを台湾に呼んでですね、当時の状況の説明を受けているんですね。
まさに日本の福島第一原発事故を他山の石として台湾としてどう取り組むか。
そしてこの6年間でですね再生可能エネルギーがかなりのスピードで技術革新しているんですね。
これも台湾に大きな影響を与えている。
そして台湾全体として36000平方kmがま、実効支配の地域なんですね。
日本のほぼ10分の1なんですね。
ここで第一原発のような事故が起きればですね、ひとたまりもない、という危機感が今回の決定の背景にあると言われているんですね。
翻って日本なんですけれども、未だに東日本大震災の被害を受けた方々10数万人が避難生活を強いられているんですね。
にも関わらず、エネルギー政策というのは、その当時の延長戦のまま続いているわけですね。
この再生可能エネルギーの技術革新が続けば、それだけ物事はどんどん進んでいくんですね。
しかし一旦翻って、その原点をもう一回考え直すという、その分岐点に立っているんだというのが、
台湾の人たちが我々に教えてくれている、それが現実だと思いますね。
富川悠太:
そうですね。
そして台湾の人たちの状況を見ていますと、政治が民意をどう汲み取れるのか?ということも考えさせられます。