原爆をテーマに、過去と現代に生きる2人の女性の物語を描いたこうの史代の傑作コミックの映画化
原爆投下から13年後の広島に暮らす平野皆実は、被爆体験による深い心の傷を抱えて生きていた。
それから半世紀後、皆実の弟・旭は家族に黙って広島へと向かう。
監督
佐々部清
原作
こうの史代
脚本
佐々部清 国井桂
撮影
坂江正明
音楽
村松崇継
美術
若松孝市
【出演者】
田中麗奈
麻生久美子
吉沢悠
中越典子
伊崎充則
金井勇太
藤村志保
堺正章
【あらすじ】
舞台は原爆投下から13年後の広島。
原爆症の発病を恐れて暮らす皆実は、訪れた幸せに心の傷が痛む日々を送っていた。
半世紀を経た現在、皆実の弟・旭の行動を不審に思った娘の七波は、そのあとをつけるうちに自らのルーツに辿り着く。
★★★★
【感想】
家のすぐそばにある文化ホールの大ホールで映画が観れるということで、事前にチケットを手に入れ
熱い中観に行って来ました。
私が生まれたのが1962年7月
戦後17年の間に日本はすごい勢いで国を復興させ高度成長時代に入った。
『戦争を知らない子供たち』は、1970年に発表された曲で、
小学生低学年だった私は、当時テレビから流れていたのをよく覚えている。
二つの時代を生きる ふたりの女性
原爆が投下された時代を生きた、麻生久美子が演じた皆実と
半世紀を超え、現在を生きている皆実の弟・旭の娘の七波は
父親の旭の不審な行動をこっそり跡を付けて行く事から自らのルーツに辿り着く。
皆実を演じる麻生久美子さんの演技は秀逸だ。切なく儚かなくて、ホロホロと涙が溢れて止まらなかった。
彼女の人柄に惹かれていく会社の同僚の打越(吉沢悠)から愛の告白を受ける皆実だが、
原爆で自分が生き残った罪悪感を感じる彼女は幸せに飛び込んでいけないと思っていることを告白する。
そんな皆実の思いを打越は、優しく『生きとってくれてありがとう』と言って抱きしめる。
老いた旭を演じる堺正章の飄々とした演技や
はつらつとさっぱりした現代っ子、皆実の姪を演じる田中麗も良い。
配役皆んなが、それぞれの役割を丁寧に演じている感じに好感が持てる
ノスタルジックな映像も相まって、なんだか遠い昔の時代にタイムスリップしたような、不思議な感覚の映画だった。
奇しくも明日は広島原爆投下の日
あれから79年が経ち、被爆者の平均年齢は85歳を超えている。
高齢化が進む被爆者たちの悲惨な体験や、核兵器の廃絶を願う声をどのように引き継いで未来に伝え続けていくのか。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻などにより、核の脅威が高まる今こそ、
私たちは他人事と考えず問い続けなくてはならないと思う。
昭和20年(1945年)8月6日午前8時15分。
人類史上初めて、広島に原子爆弾が投下された。
原子爆弾は、投下から43秒後、地上600メートルの上空で目もくらむ閃光を放って炸裂し、小型の太陽ともいえる灼熱の火球を作った。
火球の中心温度は摂氏100万度を超え、1秒後には半径200メートルを超える大きさとなり、
爆心地周辺の地表面の温度は3,000~4,000度にも達した。
爆発の瞬間、強烈な熱線と放射線が四方へ放射されるとともに、周囲の空気が膨張して超高圧の爆風となり、これら3つが複雑に作用して大きな被害をもたらした。
原爆による被害の特質は、大量破壊、大量殺りくが瞬時に、かつ無差別に引き起こされたこと、
放射線による障害がその後も長期間にわたり人々を苦しめたことにある。