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「豊穣神・デーメーテール」

2010-06-05 22:05:48 | ギリシャ神話

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 「大地の女神は優しい母、娘を彷徨い探して三千里」


 暗緑色の衣をまとった収穫の女神はクロノスとレアーの娘で、ゼウスやヘーラーの姉にあたる。
 しっかりした大人の女の落ち着きを称えた彼女は、ガイア、レアーに続く地母神としての性格を引き継いでいる。
 ところがこの大人の女性が髪を振り乱して激怒したために地上は大飢饉に見舞われるという世界の危機に直面することがあった。


 デーメーテールには目の中に入れても痛くないほど溺愛しているペルセポネーという娘がいたのだが、もちろん父親は例のあの人(ゼウスのスケベ爺だ)。
 しかし、なんと、まあ、この娘に変な虫が付いてしまう。冥界の王ハーデースである。彼は、ペルセポネーをとても気に入ってしまい、結婚させてくれとゼウスに掛け合った。
 末っ子のゼウスは兄と姉の板ばさみになって困り果てた挙句、


 「わしはそいうことに口を出す権利はないなあ!」


 という何とも無責任きわまりない逃げ口上を売ったのだ。


 これを聞いたハーデースは、――よし、それなら勝手にさせてもらう―― とばかりにペルセポネーを略奪し、冥界へと連れ去ってしまったのだ。
 事態を知って怒り狂ったデーメーテールはオリュムポスから立ち去って、女神としての仕事を放棄してしまう。
 こうなると、さあ大変! 地上には草木の1本も育たないのだ。
 デーメーテールの怒りは容易に治まるものではなかったが、唯一の救いはペルセポネーがまだ冥界の食べ物を口にしていないことだった。
 冥界の物を口にしなければ、再び地上に戻って、母のデーメーテールと暮らすことができる。
 ゼウスはこのことを彼女に告げて安心させる一方、ヘルメースを冥界に派遣してペルセポネーを迎えに行かせた。


 さて、兄のハーデースはペルセポネーを返すことに同意はしたが、
 ――ここままでは世界が滅びる―― と言った弟の言いなりでは、何か気に食わない。そこでこっそりペルセポネーに冥界のざくろの実を騙して食べさせてしまったのだ(ちょっとおとなげないよ、ハーデース)。
 再び失望したデーメーテールはオリュムポスには戻らなかった。遂にゼウスは母のレアーに仲裁を頼み、ペルセポネーは一年の内、3ヵ月を冥界で、残りの9ヶ月を母の元で過ごすことになった。
 そうです。つまりペルセポネーが冥界で過ごす3ヶ月間は「豊穣神・デーメーテール」の機嫌が悪く、地上では植物が育たない冬に当たるというわけなんだ。




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