ちょっとした浮世絵ブームのようですね。といっても、江戸期のそれを基本にしながら今の世相や風俗を描いた現代浮世絵。時おり、展覧会も見かけます。
名古屋の愛知県ギャラリー12階のアートスペースで開かれている「現代浮世絵 中根幹夫個展」を見てきました。12月24日(月)まで。
中根さんは名古屋在住。40年ほど前からデザイン画やイラスト画を描いてきましたが、15年ほど前からは現代浮世絵に没頭しているそうです。
15年間の作品から選んだというA3サイズの浮世絵が並ぶ会場を見て回ると、日本髪の美人画や動物画をモチーフにしながら、現代の風俗や世相を4文字熟語や風景画などを入れ、水彩絵具でウイットを利かした浮世絵に仕立てています。
「でも、いつも私はアウトローなのです」と笑う中根さん。
「平成名古屋駅前界隈」や「平成尾張名古屋今昔物語」と題した作品にはツインタワーや大須観音、大観覧車を。「快食快便日々之好日」は美人がうまそうなどんぶりを手にしています。
麻生元総理が読み間違えた「未曾有」や2003年の「火星大接近」なども取り上げています。
「何を描くかよりも、まず言葉やニュース選びから始めます。だからその時、その時の絵日記や記録画みたいなものです」
――「絵に『上がり』という文字が入っていますが、どういう意味ですか
「この絵を描き終えた、と言うだけです。終、ですね」
――「重要」との文字もありますね
「意味はありません。100均でこんなハンコが手に入ったから何枚かに押してみました。見る人が『これは何だ』と聞いてくれるのがうれしいですね」
――スマホ用の浮世絵も描いたそうですね。
「ええ、請負仕事でね。でも私はスマホを使えないのですよ」
作品と同様、話もコミカルに続きます。
「これまで別の美術館で個展をやろうと思ったけどうまくいかなくて、とうとうエルミタージュでやって来ました。あとはルーブルとスミソニアンが夢です」