愛知県美術館を会場にした名古屋のアート専門大学3校の卒展シリーズ2週目、名古屋芸術大学第44回卒業制作展を見てきました。26日(日)まで。
同大学の作品は、県美術館のほか東区の市民ギャラリー矢田と大学西キャンパス(北名古屋市)でも展示。また大学院の修了制作展は28日(火)から3月5日(日)まで、市民ギャラリー矢田で予定されています。
美術学部の日本画コースと洋画コースは県美術館に展示。妹や鯉を描いた淡い日本画作品に見入ったあと、洋画の展示室に入って出会った立体作品に驚きました。
巨大な食パンだったのです。板を箱状に組んで全体をキャンバスにして焼き立ての食パンを描き上げ、カットしてトーストした2切れも展示してあります。その間には制作に使った絵の具や筆、ペインティングナイフなども展示され、ダイナミックな制作の様子を思い浮かべました。
「パンが好きなのでよく描いてきましたが、(卒展なので)思い切って制作しました。油絵具だけでなくメデュウムやジェッソ、砂も使っています」と作者の女子学生。
昨年暮れ、僕は愛知県美術館で所蔵品展「日本で洋画、どこまで洋画?」を見て、洋画という言葉はいずれ「死語」になるのではと思いましたが、この食パン絵画の作品も伝統的な洋画の概念を吹き飛ばす傑作です。
デザイン学部の作品は、多種多様。絵本や日用雑貨、子供の玩具、遊び場、衣装、町おこしなどの提案。思考を近道してしまうインターネット検索の時代、「個人情報」とは何なのだろう、人間関係の距離の取り方とは、などといった現代の日常をテーマにした研究…。
ある総合病院を取り上げ、患者サイドからみて、病棟別シンボルや診療科目別の分かり易い色分け、院内フロアの標示などの提案も。どの作品からも、研究や制作にかけた学生たちの意気込みに引き込まれながら、会場を回ってきました。
描かれた食パン(上)と使用した絵の具(下)