風の遊子(ゆうし)の楽がきノート

楽描き水彩画「鋳物工場の作業風景を描く」

三重県桑名市へ出かけたスケッチ会の目玉は、地場産業である鋳物工場での取材でした。成果の1枚がこれです。

桑名市は、吉永小百合の代表作「キューポラのある街」(1962年)の舞台になった埼玉県川口市と並ぶ鋳物の街。1600年代の初め、鉄砲製造を皮切りに桑名藩の奨励策を受けて繁栄、戦後も200を超える工場があったといわれています。

近年は、バブル経済の崩壊や海外の安価な製品の流入、円高不況、従業員の高齢化、さらに後継者不足と次々と難題に直面。経営環境は厳しさを増す一方ですが、現在も31の事業所が川口市の工場との技術交流や新商品の開発に勤め、高品質な製品を生み出しています。

見学・取材をお願いした工場にお邪魔すると、やや薄暗い場内で鉄くずなどの原料が溶け、熱気が伝わってきます。
この日の外気温は30度を超える真夏日でしたが、その程度とは比べものになりません。

溶鉱炉で溶けた溶湯(溶けた鋳鉄)を「取鍋(とりべ)」と呼ばれる、専用の桶からを鋳型の注湯口へ。鋳鉄が温度の低下で固まったりしないように、素早くかつ静かに細心の注意をはらって作業が進みます。
溶けた火花が飛び散る中で、黙々と作業するベテラン従業員。そんな様子を描きました。


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