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中国の古典編―漢詩を読んでみよう(20)漂白の魂―曹植(2)-楽しい読書337号

2023-03-02 | 本・読書
古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年2月28日号(No.337)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(20)漂白の魂―曹植(2)」



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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年2月28日号(No.337)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(20)漂白の魂―曹植(2)」
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 昨年10月以来の「中国の古典編―漢詩を読んでみよう」で、
 20回目です。

 今回も引き続き、
 曹操の息子で、父・曹操、次男・曹丕(そうひ)と共に
 「三曹」と呼ばれる、四男・曹植(そうしょく)の詩から、
 「七歩の詩」、および「七哀の詩」を取り上げます。


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◆ 漂白の魂 ◆

 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(20)

   三曹(さんそう)から曹操の息子

  ~ 四男・曹植(そうしょく)その2「七歩の詩」「七哀の詩」 ~

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今回の参考文献――

『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20
「六、抵抗と逃避のあいだに――三国時代から魏へ」より


 ●曹植(そうしょく)「七歩の詩」

《南朝時代に編まれた有名人のエピソード集
 『世説新語(せせつしんご)』に載っている詩で、
 前後に説明がついています。》(p.214)


 七歩の詩(ななほのうた) 曹植

文帝嘗令東阿王七歩中作詩。不成者行大法。応声便為詩。曰、

 文帝(ぶんてい) 嘗(かつ)て東阿王(とうあおう)をして
 七歩(しちほ)の中(うち)に詩(し)を作(つく)ら令(し)む。
 成(な)らざる者(もの)は大法(たいほう)を行(おこな)はんとす。
 声(こえ)に応じて便(すなは)ち詩(し)を為(つく)る。曰(いは)く、

煮豆持作羹 漉豉以為汁 

 豆(まめ)を煮(に)て持(もつ)て羹(あつもの)と作(な)し
 鼓(し)を漉(こ)して以(もつ)て汁(しる)と為(な)す

萁在釜下然 豆在釜中泣

 萁(まめがら)は釜下(ふか)に在(あ)りて然(も)え
 豆(まめ)は釜中(ふちゆう)に在(あ)りて泣(な)く

本自同根生 相煎何太急

 本(もと) 同根(どうこん)より生(しょう)ずるに
 相(あひ)煎(に)ること何(なん)ぞ太(はなは)だ急(きゆう)なると

帝深有慚色。

 帝(てい)深(ふか)く慚(は)づる色(いろ)有(あ)り


 「文帝曹丕が以前、曹植に命令して、
  七歩あるくうちに詩を作らせた」
 「出来なければ大法を行うぞと言った」
 それを聞いた曹植は、
 「命令に応じてすぐ次の詩を作った」

「豆を煮て濃い汁物を作り、豆で作った調味料を滴らせて味を調える」
「豆がらは鍋の下で燃え続け、一方、豆は鍋の中で煮られて泣いている。
 豆がらはどうして豆をそんなに激しく煮立てるのでしょう」

 「その歌を聞いた文帝は、深く恥ずかしがる表情を見せた」


王である曹丕が豆柄で、曹植が豆に例えられていて、
このような詩をみせられて、このような態度を取るとは思えません。

『三国志』にも登場するエピソードだそうですが、
曹植の個人の文集には入っていないので、
どうやら偽作と考えられています。
ただ、唐の時代には曹植の作として伝えられていた、といいます。


(画像:『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』(平凡社)より、
挿絵「兄の曹丕に命じられて「七歩の詩」をつくる曹植(『三国志通俗演義』より)」)


 ●「七哀の詩」

七哀詩  七哀(しちあい)の詩(し)  曹植

明月照高楼  明月(めいげつ) 高楼(こうろう)を照(てら)し
流光正徘徊  流光(りゅうこう) 正(まさ)に徘徊(はいかい)す
上有愁思婦  上(かみ)に愁思(しゅうし)の婦(ふ)有(あ)り
悲歎有余哀  悲歎(ひたん) 余哀(よあい)有(あ)り

借問歎者誰  借問(しゃくもん)す 歎(たん)ずる者(もの)は誰(た)ぞと
言是宕子妻  言(い)ふ 是(こ)れ 宕子(とうし)の妻(つま)なりと
君行踰十年  君(きみ) 行(ゆ)きて十年(じゆうねん)を踰(こ)え
孤妾常独棲  孤妾(こしよう) 常(つね)に独(ひと)り棲(す)む

君若清路塵  君(きみ)は清路(せいろ)の塵(ちり)の若(ごと)く
妾若濁水泥  妾(しよう)は濁水(だくすい)の泥(どろ)の若(ごと)し
浮沈各異勢  浮沈(ふちん)
        各ゝ(おのおの)勢(いきほ)ひを異(こと)にす
会合何時諧  会合(かいごう) 何(いづ)れの時(とき)か諧(かな)はん

願為西南風  願(ねが)はくは西南(せいなん)の風(かぜ)と為(な)り
長逝入君懐  長逝(ちようせい)して
        君(きみ)が懐(ふところ)に入(い)らん
君懐良不開  君(きみ)が懐(ふところ)良(まこと)に開(ひら)かずんば
賤妾当何依  賤妾(せんしよう)
        当(まさ)に何(いづ)くにか依(よ)るべき


第一句では、高楼に指す月の明かりのなか、一人の人妻がいます。

 明るい月が高楼を照らし、降り注ぐ光はまるでゆらめくようだ
 高楼の上の部屋に悲しそうな人妻がいて、
 その歎きは、尽きることのない悲しみを伝えて来る

第二段では、問いかけに答えて人妻が自己紹介します。

 ちょっとお尋ねするが、そこで歎いているのはどなたでしょうか
 彼女は答えて、私はさすらい人の妻でございます
 あの人は出かけたきりもう十年以上たち、
 孤独な私はそれ以来ずっと一人暮らしなのです

第三段もこの人妻の告白、夫との境遇の隔たりを、
曹植得意のたとえを使って述べている、といいます。

 あの人はきれいな道路の上の塵のように、
  ふらふらとさまよいがちです
 私は濁った水たまりのそこの泥のように、
  ただじっとしているしかない
 さまようあの人と、沈み込む私と、
  お互いの状況がまったく違ってしまいましたが、
 再会はいつになったら叶えられるのでしょうか

第四段は、願望で結びます。

 できることなら西南から吹く風に乗って、
  遙かに空を吹き渡り、あの人の胸の中に飛び込みたい
 しかしあの人の懐がずっと開かないままで終わってしまったら、
 この私はいったい何にすがればいいのでしょう


宇野直人さんは、曹植の作風のひとつの特徴として、
「主題と変奏」を挙げています。

 《すでに知られている作品に基づいて、
  そこに自分の個性を加えてゆく作り方》

「七哀の詩」は元歌の「古詩十九首」其の十九だそうです。

 《夫が旅に出てなかなか帰ってこない奥さんが主人公で、
  月夜の晩に眠れず悩むという内容》

 《古詩の方はその状況や悲しむようすを横から見ているような
  単純な描写である》

「七哀の詩」は、

 《主人公の奥さんが曹植自身のたとえで、
  最後の「あの人」は魏の都そのもの、或いは兄の曹丕、
  またはその跡を継いだ息子の曹叡を指しているんでしょう。》

曹植には、こういう作品が多く、

 《不幸な女性に自身をたとえて“どうにかならないものか”
  と訴えるパターンが目立ちます。》

といい、

 《不幸な女性に自分の自分の気持ちや主張を託する閨怨詩は、以後、
  曹植が確立したジャンルとして受け継がれてゆきました。》

このような女性を「思婦(しふ)」と呼ぶそうです。

 ・・・

兄も曹丕も詩を書いており、
建安時代の文壇のリーダーとして活躍しました。
次回はその曹丕の作品を紹介する予定です。

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 ★創刊300号への道のり は、お休みします。

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本誌では、「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(20)漂白の魂―曹植(2)」と題して、今回も全文転載紹介です。

またまた、10月以来の漢詩編です。

曹植の二回目で、『三国志』にも登場する「七歩の詩」(『三国志』のものとは少し異なるところもあるようですが)と「七哀の詩」を取り上げました。

 ・・・

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(20)漂白の魂―曹植(2)-楽しい読書337号
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