レフティやすおの新しい生活を始めよう!

50歳からが人生の第二段階、中年の始まりです。より良き老後のために良き習慣を身に付けて新しい生活を始めましょう。

『左組通信』復活計画<左利きプチ・アンケート>(22)利き目(2)-週刊ヒッキイ第642号

2023-05-21 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第642号 【別冊 編集後記】

第642号(No.642) 2023/5/20
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [22]
<左利きプチ・アンケート> 全公開(22)「利き手調査」番外
第49回 新版・利き目は右左どちらですか?」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第642号(No.642) 2023/5/20
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [22]
<左利きプチ・アンケート> 全公開(22)「利き手調査」番外
第49回 新版・利き目は右左どちらですか?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 今回も、前回に引き続き、<利き手調査アンケート>の番外として、
 利き手ではなく、利き目を調べるアンケートで、
 前回と同じアンケートですが、「自己申告版」にあたります。

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓
ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [22]
  <左利きプチ・アンケート> 全公開(22) 
  「利き手調査」アンケート編・番外
 第49回 新版・利き目は右左どちらですか?
┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

 ●第49回 新版・利き目は右左どちらですか?

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
左利きを考える レフティやすおの左組通信
 Lefty Yasuo's HIDARIGUMI Announcement
 
  <左利きプチ・アンケート>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
------------------------------------------------------------------
<左利きプチ・アンケート>
第49回 新版・利き目は右左どちらですか?
(自己申告による利き手別の投票による利き目テスト)

(初出)2008.2.24(最終)
------------------------------------------------------------------
<左利きプチ・アンケート>第49回
新版・利き目は右左どちらですか?

http://personal-dictionary.com/enq/view/enq.asp?EID=54913
------------------------------------------------------------------



<左利きプチ・アンケート>第49回 新版・利き目は右左どちらですか?

人間には利き手と同じように、
利き足、利き目、利き耳があるといわれています。

また脳科学者には利き脳という考えもあります。

ヒトの体は左右対称形になっています。
その左右に等しくある器官ではどちらか一方が優位となる、
利きという現象が見られます。

利きは、偏側性もしくは一側優位性などとも呼ばれるようで、
体のどちら側を優先的に使うかということを表しています。

利き手の存在はどなたも皆ご存知でしょう。

利き足は、ボールを蹴るなどの動作で確認します。

それでは利き目は、どうでしょうか。
こういう方法があります。

身の回りのあるものに指で狙いをつけます。
そして交互にどちらか片目をつぶります。
一方は、目と指と目標が一致していますが、他方ではずれて見えます。

一致する方が利き目です。

他にも、

カメラのファインダーや、単眼の望遠鏡や顕微鏡をのぞく時に
どちらの目を使うか、銃の照準を合わせる、
板塀の節穴からのぞく場合は?

などなどの測定方法があります。

利き目とは、どちらの目の映像にもう一方の目の映像を合わせるか、
この、どちらの目の映像を優先するかをいうものです。

利き目は、利き手と違い、
60%前後、最高70%程度の人が右といわれています。

※参照:『右利き・左利きの科学 利き手・利き足・利き眼・利き耳…』
前原勝矢 講談社ブルーバックス 1989/6/1


例えば、アーチェリーのような競技では、
利き手/腕よりも利き目を優先し、競技スタイルを決定するといいます。

これは、利き手/腕や利き足などの身体の利き側(利き体側)は、
訓練によってある程度の克服が対応可能だが、
利き目は訓練によってどうこうできない、
という点がネックとなっているからのようです。

アーチェリーは、いかに速く何本もの矢を射れるかを競うのではなく、
また、いかに強い矢を、いかに速い矢を飛ばすかでもなく、
いかに正確に的を射るかを競うものです。

そこで<的を狙う「目」に合わせることが大事>だそうです。

※ 参照:
Try it!!! Vol. 13 アーチェリー (Archery)
http://www.sfen.jp/try/try13.html

ただし、最近の傾向として、利き目(マスターアイ)にこだわらず、
利き手/腕に合わせた方がよいと指導する人もあるそうで、
事情は少し変ってきているようです。

※ 参照:
新迷解アーチェリー用語辞典〈第二版〉
 ますたーあい【マスターアイ】
http://nippercent.fc2web.com/ore/word/word_ma.html

ちなみにアテネ・オリンピック銀メダリストの山本博選手は
左利きですが、右手用を用いる右射ちです。

他にも、ダーツのような的当て競技でも利き目がポイントとなります。


では、貴方の利き目はどちらですか。右ですか、左ですか。

*投票者の利き手別で選択肢を用意しています。
ご自身でご自分の利き手を右もしくは左と、
どちらか判断した上で投票してください。

*一言言わせて、という方は投票後に表示されます一番下の
「ご意見ボード」をご利用ください。
貴方のご意見ご感想をお聞かせください。

1 (右利きの投票者)右
2 ( 〃 )左
3 ( 〃 )その他(両/片目が不自由など、どちらともいえない)
4 (左利きの投票者 〃 )右
5 ( 〃 )左
6 ( 〃 )その他(両/片目が不自由など、どちらともいえない)


現在の結果を見る(ご意見ボードはこちら)

※「第14回(05.2.27)貴方の利き目は右左どちらですか」
の新版アンケートです。
前回同様、利き手別投票になっています。
________________________________________
●利き手調査テスト関連アンケート
第14回 貴方の利き目は右左どちらですか
第20回 利き手調査1回目―側性係数を調べてみよう
第22回 エディンバラ利き手調査
第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト
第24回 利き手調査第4回chapman利き手テスト
第28回 利き足を調べてみよう・チャップマン利き足テスト

(自己申告による利き手別の投票アンケート)
第33回 新版・利き手調査第1回―利き手テスト側性係数を調べる
第35回 新版・利き手調査第2回―エディンバラ利き手調査
第37回 新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト
第39回 新版・利き手調査第4回-chapman利き手テスト
第41回 新版・利き手調査第5回 マクマナスの利き手テスト
第46回 利き手テストと意識の一致度は?
第49回 新版・利き目は右左どちらですか?
第51回 新版・利き足は右左どちらですか―利き足テスト

------------------------------------------------------------------
投票結果

実施期間2008.1.27-2.23(4週間・総数18/R4:L14)
------------------------------------------------------------------

1 (右利きの投票者)右 0
2 (   〃   )左 4
3 (   〃   )その他 (両/片目が不自由など、
               どちらともいえない) 0
4 (左利きの投票者)右 6
5 (   〃   )左 8
6 (   〃   )その他 (両/片目が不自由など、
               どちらともいえない) 0


------------------------------------------------------------------
<左利きプチ・アンケート>第49回 新版・利き目は右左どちらですか?
http://personal-dictionary.com/enq/view/enq.asp?EID=54913

―その後の変化―
------------------------------------------------------------------

 投票数変動確認日: 14:28 2008/01/30(t=10,R=1,L=9)
------------------------------------------------------------------

1 (右利きの投票者)右 0
2 (   〃   )左 1
3 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 0
4 (左利きの投票者)右 4
5 (   〃   )左 5
6 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 0

------------------------------------------------------------------

 投票数変動確認日: 23:14 2008/02/24(t=18,R=4,L=14)

1 (右利きの投票者)右 0
2 (   〃   )左 4
3 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 0
4 (左利きの投票者)右 6
5 (   〃   )左 8
6 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 0

------------------------------------------------------------------

 投票数変動確認日: 23:31 2008/09/24 (総数368 / R181:L187)

1 (右利きの投票者)右 57
2 (   〃   )左 62
3 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 62
4 (左利きの投票者)右 65
5 (   〃   )左 68
6 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 54

------------------------------------------------------------------

 投票数変動確認日: 15:11 2009/06/26 (総数616 / R310:L306)

1 (右利きの投票者)右 102
2 (   〃   )左 110
3 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 98
4 (左利きの投票者)右 106
5 (   〃   )左 112
6 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 88

------------------------------------------------------------------

投票数変動確認日: 15:42 2011/12/01 (総数1,018 / R531:L487)

1 (右利きの投票者)右 150
2 (   〃   )左 209
3 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 172
4 (左利きの投票者)右 159
5 (   〃   )左 199
6 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 129

------------------------------------------------------------------

投票数変動確認日: 2016.9.19 (総数1,453 / R770:L683)

第49回 新版・利き目は右左どちらですか?

1 (右利きの投票者)右 237
2 (   〃   )左 305
3 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 228
4 (左利きの投票者)右 233
5 (   〃   )左 261
6 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 189


------------------------------------------------------------------
【最終結果】
<左利きプチ・アンケート>第49回 新版・利き目は右左どちらですか?
http://personal-dictionary.com/enq/view/enq.asp?EID=54913
------------------------------------------------------------------

投票数変動確認日: (総数1,491 / R791:L700)

1 (右利きの投票者)右 246
2 (   〃   )左 310
3 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 235
4 (左利きの投票者)右 236
5 (   〃   )左 267
6 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 197


------------------------------------------------------------------

↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ 

===========================================================

2023.5.16(追記)

前回の利き目アンケートは、まだメルマガ創刊から月日がたっていない、
購読者数が少なかった時期で、期間も短く、当然といえば当然ですが、
ああいうほとんど投票ゼロに限りなく近い数字になっていました。

------------------------------------------------------------------
【最終結果】
<左利きプチアンケート>第14回 貴方の利き目は右左どちらですか
http://personal-dictionary.com/enq/view/view.asp?EID=25810
------------------------------------------------------------------
1(右利きの投票者)右          2
2(   〃   )左          2
3(   〃   )その他(目が不自由、など) 0
4(左利きの投票者)右          4
5(   〃   )左          7
6(   〃   )その他(目が不自由、など) 0
23:42 2007/09/19受付中止
------------------------------------------------------------------

これに比べますと、この第49回のアンケートでは、大きく進歩した
といいますか、ご協力を得られた、といいますか、
アンケートらしくなっています。

------------------------------------------------------------------
【最終結果】
<左利きプチ・アンケート>第49回 新版・利き目は右左どちらですか?
http://personal-dictionary.com/enq/view/enq.asp?EID=54913
------------------------------------------------------------------
投票数変動確認日: (総数1,491 / R791:L700)

1 (右利きの投票者)右 246
2 (   〃   )左 310
3 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 235
4 (左利きの投票者)右 236
5 (   〃   )左 267
6 (   〃   )その他(両/片目が不自由など、
どちらともいえない) 197
------------------------------------------------------------------


投票者は
「右利きの投票者」の方が多く(791, 53% - 右246,左310,他235)、
その「左目」が最多(310, 比率 39.2% / 右31.1%,他29.7%)。

「左利きの投票者」の方は、(700, - 右236,左267,他197)
その「左目」が最多(267, 比率 38.1%, / 右33.7%, 他28.1)。

自己申告なので、正直どうにも考えようがない
というのがホントのところです。

項目をいくつか挙げて、
利き目のテストを実施する方がいいのかもしれません。


1.カメラのファインダーをのぞく時にどちらの目を使うか?
2.単眼の望遠鏡や顕微鏡をのぞく時は?
3.銃の照準を合わせるときは?
4.板塀の節穴からのぞく場合は?

等々。

その上で、それぞれの右左でポイントを確認してもらい、
利き目を決定してもらう、というアンケートですね。

また、いずれ考えてみましょう。

 ・・・

――次回は、「利き手テスト」アンケートの関連アンケートとして、

 「第46回 利き手テストと意識の一致度は?」

を紹介する予定です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [22] <左利きプチ・アンケート> 全公開(22)「利き手調査」番外 第49回 新版・利き目は右左どちらですか?」と題して、今回も全紹介です。

追記に書きましたように、利き目を決める動作の調査項目を挙げて「利き目テスト」を実施すれば、また違ったものになるかもしれません。
今後の利き手・利き側調査としての検討材料といえるでしょう。

前回の「第14回 貴方の利き目は右左どちらですか」についてのメルマガで、私の考えた<デジカメ利き目確認法>を紹介しています。



第638号(No.638) 2023/3/18
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [21]
<左利きプチ・アンケート> 全公開(21)「利き手調査」番外
第14回 貴方の利き目は右左どちらですか」

『レフティやすおのお茶でっせ』2023.3.18
『左組通信』復活計画<左利きプチ・アンケート>(21)利き目-週刊ヒッキイ第638号
(「新生活」版)




 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』


『レフティやすおのお茶でっせ』〈左利きメルマガ〉カテゴリ

--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載

" target="_blank">『左組通信』復活計画<左利きプチ・アンケート>(22)利き目(2)-週刊ヒッキイ第642号

--
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

私の読書論170-丸谷才一『文学のレッスン』から(2)-楽しい読書342号

2023-05-16 | 本・読書
古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年5月15日号(No.342)
「私の読書論170-丸谷才一『文学のレッスン』から(2)」



------------------------------------------------------------------
◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
------------------------------------------------------------------
2023(令和5)年5月15日号(No.342)
「私の読書論170-丸谷才一『文学のレッスン』から(2)」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 今回は前々回(3月15日号(No.338) 私の読書論168)の続きで、
 小説、評論、エッセイ、翻訳と幅広い文筆活動で知られる
 丸谷才一さんのインタヴューものの文学論
 『文学のレッスン』聞き手・湯川豊(新潮文庫)から、
 気になる部分をピックアップして紹介するもの、その二回目です。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 - エッセイとは… -

  ~ 日本の随筆とは好きなものについて書くものなり ~

  丸谷才一『文学のレッスン』聞き手・湯川豊(新潮文庫)から(2)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●『文学のレッスン』――八つの文学ジャンルの文学論

『文学のレッスン』の目次は、以下の通り。

【短篇小説】もしも雑誌がなかったら
【長篇小説】どこからきてどこへゆくのか
【伝記・自伝】伝記はなぜイギリスで繁栄したのか
【歴史】物語を読むように歴史を読む
【批評】学問とエッセイの重なるところ
【エッセイ】定義に挑戦するもの
【戯曲】芝居には色気が大事
【詩】詩は酒の肴になる


この8ジャンルから、
小説に関してはいずれまた何かの機会に扱うとして、
それ以外のジャンルから、
私がこれはと思う、気になる部分を紹介しましょう。


『文学のレッスン』丸谷才一 聞き手・湯川豊 新潮文庫 2013/9/28


(以下の《》内の引用は、基本的にみな丸谷さんの発言です。)

 ・・・

前回は、【伝記・自伝】【歴史】【批評】の3つの章の中から
気になる部分を紹介しました。

今回は、後半の【エッセイ】【戯曲】【詩】から、です。


 ●【エッセイ】定義に挑戦するもの

エッセイは定義ができない、といいます。

エッセイとは、16世紀のフランス人の思想家・モラリスト、
モンテーニュによって始まった、とされています。

もちろんそれ以前にも、このような随筆というかエッセイというか、
そういう種類の文章があったのですが、
現在あるようなこれという定義ができない、
自由な、色々なタイプの文章は、
フランスのモラリスト、モンテーニュが始めたとされています。

モンテーニュは、新興貴族の出で、何かを書いて食う必要がなかった、
という背景があるといいます。

モンテーニュは、私の好きな著述家といいますか、
その著書『エセー』(『随想録』)が好きなんですね。

邦訳は完訳が全6巻(宮下志朗さんの新訳版では全7巻)と大部ですが、
私の読んだものは選集で、
<中公クラシックス>の分厚い新書サイズの全3巻の本でした。
基本的に短文集ですので、気になる部分を読んでいけばいい、
という感じです。

丸谷さんは、エッセイという形式に必要なのは、
《高級な知性》と《遊び心》
すなわち《知的な探究意識と気楽な態度》だといいます。

そういうものを持ち合わせていた人の一人が、
モンテーニュだったかもしれません。


*参照:
『エセー』6冊セット モンテーニュ著 原 二郎訳 岩波文庫 2015/7/10

『エセー〈1〉』宮下志朗訳 白水社 2005/11/1

『エセー〈1〉人間とはなにか』荒木 昭太郎訳 中公クラシックス 2002/9/10


 ●日本の随筆は好きなものについて書くもの

 《日本の随筆というのは、好きなものについて書くものなんですね。
  『枕草子』は、好きなものを書いているじゃないですか。
  ものづくしというのは、要するに好きなものづくしでもある。
  「春はあけぼの」というのは、春はあけぼのが好きだ
  という話でしょ。それからずっと下がって、『方丈記』。
  これは現実生活でお勤めをするのは嫌だ、隠者暮らしが好きだ
  という話でしょう。それから『徒然草』、
  これは友達でいいのは物をくれる友達だ、
  みたいなそういう話でしょう。
  日本人は、好きなものを書いた文章を読むのが好きなんですよ。》
   p.221

 《ゴシップとか雑学とか、それもあるけれども、
  いちばん基本的にあるのは好きなものを書くということだ、と。》
   同

なるほどという感じですね。

私がこのメルマガを書いているのも、
同じく好きなものについて書いているわけですよね。

丸谷さん曰く、

 《まあ、エッセイというのは内容があるような、ないような、
  虚実皮膜の間に遊ぶ、そういう境地が理想なんでしょうね。
  むずかしい芸事です。》p.246


 ●【戯曲】芝居には色気が大事

丸谷さんが「バロック演劇の精神」について、

 《(1)世界は劇場であり、人間はみな役者で、
  それぞれの役を演じている。(2)人生は夢である。
  この二つがテーゼであり、
  二つのテーゼは表裏一体のようになっているわけです。
  大変に虚無的な思想と、大変に華やかな心意気の両方を兼ね備えた
  人生観であり、世界観です。》p.261

これだけ抜き取りますと、意味がよくわからないと思いますが。
まあ、よく人生は舞台劇のようなものとはよくいわれます。

実感として、そういうものではないか、という気がしますね。

 ・・・

ジョージ・スタイナーの『悲劇の死』の
ギリシア悲劇のエウリピデス「バッカスの信女」を例に挙げた説明――

 《これは人生に対する恐ろしく寒々とした洞察である。
  しかし人間の苦しみが度外れのものであるという。
  まさにそのことに人間の尊厳を主張できる根拠がある。
  そういうことを表現しているのが悲劇だというんです。
  悲劇においては、結末で悲しみと喜びが溶けあう、
  苦悩と歓喜が合体して見るものを高揚させる。
  これは他のどんな形式、たとえば小説とか詩にはない、
  不思議な効果である、というのは、非常に納得がいく説明ですね。》
   pp.273-274

ギリシア悲劇の三大悲劇詩人の現存する作品は、断片は別にして、
まとまって読めるものは、ちくま文庫版で読んでいます。
どれもおもしろいですが、
ソポクレスの「オイディプス王」は名作ですし、
エウリピデスの「メデイア」などは現代でも演じられますし、
なかなかおもしろいものです。
ぜひ読んでみることをオススメします。

*参照:
『ギリシア悲劇』アイスキュロス・ソポクレス・エウリピデス
全4巻セット ちくま文庫 2009/3/25


 ●【詩】詩は酒の肴になる

「詩こそ文芸の中心」だというお話から始まります。

詩が中心にあった時代というのが、日本でも欧米諸国でもあった、と。

本来詩というものは、一定の韻律があるのが正式のものだといいます。
これが非常に大事な点だ、と。

欧米のものでも翻訳してしまうと、それが消えてしまう――
翻訳で表現するのはむずかしい――ので、つい見逃されてしまう。

中国の漢詩でもそうだ、といいます。
このメルマガの月末の「漢詩を読んでみよう」のコーナーでも、
詩の内容は紹介していますが、韻律についてはお伝えしていません。

これを説明することも形式として重要な事項なのですが、
外国語ですからやはり説明がむずかしい点があります。
漢字の説明はできますが。

 ・・・

西洋の古典劇も大部分は詩だった。ギリシア悲劇もそうですし。

詩には、言葉のレトリックと韻律という音楽的な楽しさの両方がある。

 《レトリックと音楽の同時的併存、相乗的効果、
  それが詩という快楽をもたらす。》p.297

小説でも、台詞や地の文にもあるのが普通だし、なければいけない。

これはよく理解できます。
読みやすい文章というものは、リズムがあるものですし、
それが読みやすさにつながっているものですよね。

 ・・・

 《日本近代詩というのは、これは日本近代文学全体がそうだ
  といってもいいんですが、とかく虚無感とか苦悩とか寂寥とか
  孤独とか、そういうマイナスの色調で塗られている。
  そうすると、詩になる。文学になるというところがあるでしょう。
  そうではなく、プラスの色調で塗ると、
  おめでたくてばかばかしいみたいな、
  非文学的みたいな感じになる。》p.307

これもよくわかりますね。
何か日本の文学というのは、変に暗いところがあります。
といいますか、暗い方が文学的というようなイメージがありますよね。

それだけが文学ではないはずなんですが……。


 ●相田みつをの詩と書

 《今の日本でいちばん人気のある詩人は、相田みつを。》p.314

 《相田みつをの読者はいても詩の読者はいない
  という事情の反映でしょう。》

という記述があります。

私の本屋さん時代(1980年代)にベストセラーとなった本の一つが、
相田みつをさんの最初の書と詩の著書『にんげんだもの』でした。
人間味のある文字と情感溢れる言葉が、心に優しい本です。

私も読者の一人です。
本は↓の一冊しか持っていませんが。

*『相田みつを ザ・ベスト にんげんだもの 道』 角川文庫 2011/8/25
――ベストセラー『にんげんだもの』シリーズから文庫オリジナル編集版

『にんげんだもの』相田みつを 文化出版局 1984/4/6
――ベストセラーとなった最初の著書


詩人というよりも、本来書家で、プラスアルファとしての詩で。
書があっての詩でもあるわけで、一般的な詩人ではないでしょう。

で、詩の読者がいないという話から、
実は短詩形の俳句や短歌は日本人の生活に結びついていて、
それ以外の詩は社会から遊離している、と。

俳句に関しては、今テレビでも『プレバト!!』で
https://www.mbs.jp/p-battle/

夏井いつきさんが芸能人の俳句を査定するコーナーが人気です。

お正月の歌留多取りをする家もあるでしょう。
短歌の歌集は読まなくても、百人一首は知っているという人もいます。

日本人には、短詩形の文学が向いているのでしょうか。
まあ、生活に結びついていてとっつきやすさがあります。
作りやすさでいいますと、
文字数だけ合わせればいい、という形式的な簡易さもありますね。

 ・・・

というところで、今回は終了です。

バラバラな紹介になりましたが、また機会があれば、
小説の部を取り上げてみたいものです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論170-丸谷才一『文学のレッスン』から(2)」と題して、今回は全文転載紹介です。

前回は、見出しのみの紹介でした。
今回は全文紹介です。
特にどうという理由はありません。
省略するのが面倒という部分もありますか。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
〈メルマガ「楽しい読書」〉カテゴリ

--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
私の読書論170-丸谷才一『文学のレッスン』から(2)-楽しい読書342号
--
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(12)ピアノって右利き用…-週刊ヒッキイ第641号

2023-05-07 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第641号 【別冊 編集後記】

第641号(No.641) 2023/5/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(12)ピアノって右利き用…」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第641号(No.641) 2023/5/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(12)ピアノって右利き用…」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 前回は、
 サックス奏者が<左利きの世界>(左右反転世界)に転位する
 広瀬正さんの<左利き小説>『鏡の国のアリス』から、
 サックスと左利きについて書きました。

 今回は、GWのおしまいでもありますので、
 最近始めた、初心者・独学者向けのピアノ練習や
 楽譜の読み方など音楽の基礎的なお勉強に関する
 YouTube動画の鑑賞について、その感想といいますか、
 やっぱり現状のピアノは右利き向けなんだ、
 と思ったことなどについて、ダラダラと書いてみましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―

 楽器における左利きの世界 (12)

  ◆ ピアノ初心者・独学者向けのYouTube動画から ◆

   ~ 「ピアノってやっぱり右利き用なんだ!」の巻 ~  

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●『まり先生のかんたんピアノレッスン』のお話

YouTubeの動画を見ていますと、いくつもいくつも、
ピアノ初心者・独学者向けの動画がアップされています。

最近は、そのうちのいくつかを楽しみながら見ています。

私には違いがよくわからないのですが、
ピアノの先生やいろんな肩書きのピアノ演奏家がいらっしゃいます。

そんななかから、最初のころに見た動画の一つに、

 『まり先生のかんたんピアノレッスン』

があります。その中の一本の動画

2020/08/20
【指使い】どんな曲にも応用できる!これをやればOK!
ピアノ 初心者向け 独学 かんたんピアノ講座 レッスン だれでも弾ける
https://youtu.be/397XKsr33D4




(画像:YouTube動画『まり先生のかんたんピアノレッスン』
【指使い】どんな曲にも応用できる!これをやればOK!)

は、指使いについての動画だそうで、あれこれ練習方法の説明があり、
「ハノン39番の練習」というのが出てきまして、
その説明のなかで、「右手だけ、弾いてみましょう」といい、
《右手だけでいいです》との発言がありました。

7'30"ぐらいのところで、
「なぜ右手だけでいいか」
について、こんな内容の説明がありました。

《だいたいメロディを弾くのは右手なので、右手だけでいいと思います。
 クラシックのピアノをしっかり弾いていきたいという方は
 左手も練習してみてください。
 そうではなくて、
 いま流行っている曲とか自分の好きな曲をちょっと弾いてみたいな、
 というぐらいの方は右手だけで十分です。》


 ●ピアノにおける「片手」演奏とは「右手」演奏!

《右手だけでいいです》

なぜなら、

《だいたいメロディを弾くのは右手なので》

というわけですね。


「初心者は、初めは片手でメロディだけ弾いてみる」
というのが、一つの道のようです。

この「片手で」という場合は、当然のごとく「右手」を指すのですね。

この<楽器における左利きの世界>シリーズの初めの方でも
書きましたように、
ピアノ鍵盤というものは、左から低音部がはじまり、
右へ行くほど音階が上がって行き、右側は高音部になります。

で、人間の腕は、左右で動き方が違い、
右腕は「左から右へ引く」動作が都合がいい。
逆の左腕は、「右から左へ」引く動作が都合よくなっています。

で、音階は、低音か高音に移行する方が、気持ちがいい、伸びやか、
高揚するもののようです。

で、右利きの人は、右腕・右手を動かす方が得意なので、
演奏も右手を中心に設定する方が都合がいいのですね。


――ということで、ピアノ演奏において片手演奏とは、
ズバリ右手演奏になるのです!

うーん!

現状のピアノというのは、やっぱり右利き用になっている、
というわけです。

だからこそ、右利き用だけでなく、左利き用も! 
という気持ちになるのです。


 ●左手だけのピアニスト、舘野泉

右手をケガして弾けなくなったピアニストさんが、
左手だけのピアニストとなる、というケースがあります。

日本で最初に「左手だけのピアニスト」として有名になられたのが、
舘野泉(たての いずみ)さんではないでしょうか。
館野さんの活躍もあって、
その後何人かの左手ピアニストが誕生していると聞いています。

左手だけのピアノ演奏についてもまた調べておきたいものです。

ちなみに、
その元祖的な左手ピアニストの舘野泉の番組が放送されたようです。


鬼が弾く 左手のピアニスト 舘野泉
86歳、新たな音楽への挑戦
https://www.nhk.jp/p/ts/2K86JQXP68/

《59分拡大版
 好評につきBS1で再放送決定!5/4(木・祝)午前6時~です》

(残念ながら放送はすでに終わっていますけれど……。)


*参照:


(画像:2021.11.14演奏する左手のピアニスト舘野泉さん=神戸新聞松方ホール(撮影・吉田敦史))

・舘野泉さんの左手演奏のYouTubeの動画
【舘野泉】左手のピアノ/村田昌己 作曲 《時のはざま 》
Izumi Tateno/ Masaki Murata: Interstices of Time
https://youtu.be/I_OEDwzEHuo


・左手のピアニスト・智内威雄(ちない たけお) 公式サイト
https://tchinai.com/

・第89号(No.89) 2007/7/7「<左利きQ&A>(9)鍵盤ハーモニカ」
 ▼左利き講座<左利きQ&A>▼ ..第一土曜日掲載
(9)左利きと音楽・序二段―鍵盤ハーモニカ
  ☆ 左手だけのピアニスト、舘野泉 ☆彡


 ●私のミニ・キーボードのこと

さて、実は私、前にも書いたかもしれませんが、
(調べてわかったのですが)平成の元年のGWに買った、
おもちゃのようなミニ・キーボードを持っているのです。




(画像:1989年に買った私のおもちゃミニ・キーボード CASIO PT-280 ミニ鍵盤32鍵(2.5オクターブ)、セットした松田聖子のロム・パックと付属の楽譜集、本体の取扱説明書)

CASIOのPT-280というやつで、ミニ鍵盤32鍵(2.5オクターブ)です。
トリセツの写真を見ていただけばわかりますように、
ミニ鍵盤で32鍵という点がおもちゃっぽいですが、
機能としましては、それなりに結構なものが付いていまして、
弾ける人ならそこそこ楽しめるものだろうと思います。

ミニ鍵盤ということで指が結構窮屈で弾きにくいのですが、
曲のロム・パックを入れ替えるといろんな曲を自動演奏したり、
次に弾く鍵盤を光でナビゲートするというナビゲート演奏もできます。
それで買ってみたのです。

当時松田聖子が好きで、ロム・パックも買い、やってみました。
ピアノはおろか鍵盤など触ったこともなかったので、
もちろん、弾けませんでした。

今回、いろんな動画を見て、
少しは弾けるようになる――ような気がしてきました。
ちょっと楽しみになってきましたね。

こんなふうに教室に行かなくても、実際に演奏を見ながら、
教えてもらえるとはいい時代になったものだと思います。

 ・・・

以上、今回はこの辺で。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(12)ピアノって右利き用…」と題して、今回も全紹介です。

YouTubeの動画を見て、あれこれ勉強しているという話は以前から聞いていました。
自分でも、腰を痛めて、病気をしてから、お医者さんの動画や整体の先生の動画など見るようになりました。
役に立つと思う反面、ほんとうにこれで大丈夫なのかな、とちょっと不安になることもあります。

今回のピアノのお勉強にしましても、人の数だけ動画があり、ちょっとずつやり方――といいますか、教え方といいますか、も違うようです。
自分にあってると思うものを選ぶしかないのでしょうね。

人は違っても言ってることが共通してる場合もあります。

その辺を最大公約数的に捉えて勉強を進めてゆくのがいいのでしょう。

 ・・・

ネットを調べてみると、「左手のピアニスト」と呼ばれる人たちがいることがわかります。

みなさん、基本的に「現状の(構造の)ピアノ」に合わせて努力されているようです。
最初は普通に両手で弾いていた人たちなので、まあ、当然その方がやりよいのでしょう。

これらの人たちは、左手・左腕での「自然な動き」の演奏に対応した「左利き用(反転)ピアノ」のようなものを求める気持ちはお持ちではないのでしょうか。
一度確かめておきたい気がします。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』


『レフティやすおのお茶でっせ』〈左利きメルマガ〉カテゴリ

--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(12)ピアノって右利き用…-週刊ヒッキイ第641号
--
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国の古典編―漢詩を読んでみよう(22)建安の七子、竹林の七賢-楽しい読書341号

2023-05-03 | 本・読書
古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年4月30日号(No.341)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(22) 建安の七子、竹林の七賢」



------------------------------------------------------------------
◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
------------------------------------------------------------------
2023(令和5)年4月30日号(No.341)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(22) 建安の七子、竹林の七賢」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 「中国の古典編―漢詩を読んでみよう」22回目です。

 今回も引き続き、魏の「建安の七子」の詩から王粲「七哀の詩」、
 「竹林の七賢」の詩から阮籍「詠懐詩」を取り上げます。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◆ 天才少年の詩/竹林の七賢 ◆

 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(22)

  ~ 建安の七子から、王粲「七哀の詩」 ~

  ~ 竹林の七賢から、阮籍「詠懐詩」 ~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今回の参考文献――

『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20
「六、抵抗と逃避のあいだに――三国時代から魏へ」より


 ●建安の七子・王粲「七哀の詩」――天才少年の詩

「建安の七子」については、前回までにもお話ししてきました。

後漢最後の年号・建安(196-220)の時代に、
魏で開花した新しい文学は建安文学と呼ばれ、「建安の七子」とは、
曹操が主宰したこの魏の文壇サロンに集まった優秀な文人たち――
孔融(こうゆう)・徐幹(じょかん)・応瑒(おうとう)・陳琳(ちんりん)・
劉楨(りゅうてい)・阮瑀(げんう)・王粲(おうさん)の七人の総称です。

まずは王粲(177-217)。
王粲は、劉楨と並んで曹操親子を助けた双璧とのこと。
この『漢詩を読む 1』では、江原正士さんが
水戸黄門の助さん格さんのように例えています。

名門出身の天才肌で、若くして亡くなったとき、
追悼文を曹植が書いている褒めているそうです。

長安にいた十代の頃のエピソードとして、
当時の文壇のボス・蔡邕(さいよう)を訪問したときの話があります。
蔡邕が体格の貧弱な小男を迎えに出たのを客たちが驚くと、
私も叶わぬ天才少年だと紹介した、といいます。


今回紹介します「七哀の詩」は、
曹操に仕える前、17歳の時の詩です。
魏の覇権が確立する前、戦乱の世の民衆の悲惨な状況を
《ドキュメンタリータッチ》で詠っています。

江原正士さんは、後世の杜甫の詩風に似ている、と。
対して宇野直人さんは、
建安の七子の作品はたくさん『文選(もんぜん)』に収録されていて、
杜甫はこれを熟読していたので、《栄養分を吸収したでしょう》と。

 ・・・

七哀詩(しちあいし)三首  七哀の詩三首  王粲(おうさん)

 其一            其の一

西京乱無象  西京(せいけい) 乱(みだ)れて象(しよう)無(な)く
豺虎方遘患  豺虎(さいこ) 方(まさ)に患(わざはひ)を遘(かま)ふ
復棄中国去  復(ま)た中国(ちゆうごく)を棄(す)てて去(さ)り
委身適荊蛮  身(み)を委(い)して荊蛮(けいばん)に適(ゆ)く

親戚対我悲  親戚(しんせき) 我(われ)に対(たい)して悲(かな)しみ
朋友相追攀  朋友(ほうゆう) 相(あひ)追攀(ついはん)す
出門無所見  門(もん)を出(い)づれども見(み)る所(ところ)無(な)く
白骨蔽平原  白骨(はつこつ) 平原(へいげん)を蔽(おほ)ふ

路有飢婦人  路(みち)に飢(う)ゑたる婦人(ふじん)有(あ)り
抱子棄草間 子(こ)を抱(いだ)いて草間(そうかん)に棄(す)つ
顧聞号泣声 顧(かへり)みて号泣(ごうきゆう)の声(こえ)を聞(き)き
揮涕独不還  涕(なみだ)を揮(ふる)つて独(ひと)り還(かへ)らず

未知身死処  未(いま)だ身(み)の死(し)する処(ところ)を知(し)らず
何能両相完  何(なん)ぞ能(よ)く
        両(ふた)つながら相(あい)完(まつた)うせん
駆馬棄之去  馬(うま)を駆(か)つて 之(これ)を棄(す)てて去(さ)り
不忍聴此言  此(こ)の言(げん)を聴(き)くに忍(しの)びず

南登霸陵岸  南(みなみ)のかた霸陵(はりよう)の岸(きし)に登(のぼ)り
回首望長安  首(かうべ)を回(めぐ)らして
        長安(ちようあん)を望(のぞ)む
悟彼下泉人  悟(さと)る 彼(か)の下泉(かせん)の人(ひと)の
喟然傷心肝  喟然(きぜん)として心肝(しんかん)を傷(いた)ましむるを


「第一段」――自分はこれから都落ちすると述べる。

 長安はすっかり乱れ、礼儀も秩序もなくなった
 山犬や虎のような凶悪な連中が今まさに災いを行っている
 私は国の中心を見捨てて去り、身を守ってもらうべく南の方、
 荊州地方に赴くことにした

「第二段」――長安を発つ別れの場面と郊外の悲惨な状況。

 親戚たちは私の前で別れを悲しみ、
 友人たちは追いすがるようにしてくれた
 町の門を出て行くと見えるものは何も無く、
 ただ白骨が野原を一面に蔽っているばかりだ

「第三段」――道中で母と子を見かける痛ましい場面。

 途中、飢えた女性が、
 抱っこしていた赤ん坊を草むらに置き去りにした
 彼女は振り返って赤ん坊のあき越えを聞いていたが、
 涙をほとばしらせたまま、もはや戻ろうとはしなかった

「第四段」――次の二句は母の台詞。

 私自身、自分の死に場所がわかりません
 ましてこの子と二人、両方とも生き永らえることは無理でしょう

 (それを聞いて、)私は馬を走らせてそこを逃れた
 彼女の言葉をそれ以上聞いていられなかったのだ

「第五段」――よき前漢時代を思い出し、
       これからの平和への願望をにじませて終わります。

 私はやがて覇陵に向かい、文帝の墓のほとりの高台に登った
 そして振り返って都長安を眺めた
 今こそよくわかった、むかし、「下泉(かせん)」の歌を歌って
 古(いにしえ)の明君を慕っていた人びとの心境が


「下泉」は『詩経』におさめられた歌謡の一つで、
悪政のもとで民衆が昔の明君を思った心を詠んだもの。

また「黄泉の国、あの世」の意味もあり、
世を去った文帝や前漢の全盛時代を担った人たちが
この乱世を悲しんでいるだろうという意味にも取れる、といいます。

王粲は、曹操に認められてからは、若くして重臣の扱いとなり、
その後、このような実録風の詩は作れなかったのかも、といいます。


 ●竹林の七賢・阮籍「詠懐詩」

魏は曹操のあと、曹丕と曹植の勢力争いや、
曹丕のあとを継いだ息子・曹叡(そうえい)が優秀な君主でなく、
軍事面を将軍の司馬氏に一任、その司馬氏がだんだん権力欲を強め、
軍事クーデターを起こすと、反発する知識人たちが出てきました。

この司馬氏が勢力を強めた魏の後半から晋に移り変わるころ、
世の中の表面から隠れて政府の批判を続ける地方の知識人たちが
一定の力を持つようになります。
このような人たちを「逸民(いつみん)」と呼ぶそうで、
その流れは後漢の末期から続いていると言われ、
そこから出てきたのが、「竹林の七賢」(竹林にこもった七人の賢人)
と呼ばれる人たちでした。

阮籍(げんせき)・嵆康(けいこう)・山濤(さんとう)・向秀(こうしゆう)・
劉伶(りゆうれい)・王戎(おうじゆう)・阮咸(げんかん)です。

司馬氏が自分の立場を正当化するために、
儒教を悪用して《支配―従属化の論理》にしてしまったことに反発し、
世間の常識に背を向けて山に籠もり詩を作り、
儒教の対極にある老荘思想に傾倒したり、体制の外で生きる彼らは、
一層の名声を得ました。

阮籍は「竹林の七賢」の代表格で、
七賢の中には権力の怒りにふれて殺された人もいるのですが、
狂人を装って難を逃れ、生き延びました。

本書『漢詩を読む 1』では、
阮籍(げんせき 210-260)という人が選んだ生き方を表す言葉として、
《凍(い)てつける孤独》という見出しをつけています。

 ・・・

詠懐詩(えいかいし)八十二首  阮籍(げんせき)

 其一     其の一

夜中不能寐  夜中(やちゅう) 寐(い)ぬる能(あた)はず
起坐弾鳴琴  起坐(きざ)して鳴琴(めいきん)を弾(だん)ず
薄帷鑑明月  薄帷(はくい)に明月(めいげつ)鑑(て)り
清風吹我襟  清風(せいふう) 我(わ)が襟(えり)を吹(ふ)く

孤鴻号外野  孤鴻(ここう) 外野(がいや)に号(さけ)び
翔鳥鳴北林  翔鳥(しようちよう) 北林(ほくりん)に鳴(な)く
徘徊将何見  徘徊(はいかい)して将(は)た何(なに)をか見(み)る
憂思独傷心  憂思(ゆうし)して独(ひと)り心(こころ)を傷(いた)ましむ


(前半)

 夜中になっても寝つくことができず、起き出して座り、
 琴をつまびいて気晴らしをしようとした
 窓辺の薄いとばりに明るい月が照り、
 吹きこむ夜風が私の襟元をなでる

 群れからはぐれた一人ぼっちの鴻(おおとり)が遠い野原で泣き叫び、
 夜空を巡り舞う小鳥たちが北の方の森で泣いているのが聞こえる
 私はこうしてうろうろとさまよって、
 いったい何を見ようとしているのか
 かくして私は一人恐れ悩み、心を苦しめるばかりである


寂しい詩で、月の出た夜、悩みがあって眠れず外に出て行くという
「古詩十九首」や曹植にもあるパターンですが、
それらにある艶めかしさやロマンの雰囲気はなく、冷え切っています。
《夜の闇の中、何も希望がない》と訴えています。
「詠懐」とは、《自分の宗男奥底に秘めた気持ちを用心深く歌い出す》
という、阮籍が開拓した詩題です。
象徴や比喩、神話の世界を引用しながら、注意深く自分の思いを告白し、
狂気を装った奥に隠れた本音が見えてきます。

阮籍は、とんちんかんなエピソードが多い人物として知られ、
気に入った人は黒眼で応対し、嫌なヤツは白眼で応対したといわれ、

人の好き嫌いが激しいことを「青眼白眼」といったり、「白い眼で見る」
「白眼視する」という言い方もここから出ているといいます。

そのような奇行を計算してやっていたのだろうと言われています。

中国の知識人は常に政治の現場とつながりがあり、
生き延びるのも大変だった、と宇野さんの解説にあります。


 ●阮籍「詠懐詩」八十二首其十七

詠懐詩(えいかいし)八十二首  阮籍(げんせき)

 其十七    其の十七

独坐空堂上  独(ひと)り座(ざ)す 空堂(くうどう)の上(うえ)
誰可与歓者  誰(たれ)か 与(とも)に歓(よろこ)ぶ可(べ)き者(もの)ぞ
出門臨永路  門(もん)を出(い)でて永路(えいろ)に臨(のぞ)むに
不見行事馬  行(ゆ)く車馬(しやば)を見(み)ず

登高望九州  高(たか)きに登(のぼ)りて
        九州(きゆうしゆう)を望(のぞ)めば
悠悠分曠野  悠悠(ゆうゆう)として 曠野(こうや)分(わ)かる
孤鳥西北飛  孤鳥(こちよう) 西北(せいほく)に飛(と)び
離獣東南下  離獣(りじゆう) 東南(とうなん)に下(くだ)る

日暮思親友  日暮(にちぼ) 親友(しんゆう)を思(おも)ひ
晤言用自写  晤言(ごげん)して 用(もつ)て自(みづか)ら写(のぞ)かん


(第一段)
 たった一人で、誰もいない座敷に座っている
 一緒に親しく語り合うにふさわしい人は誰か、いやその相手はいない
 気晴らしに家の門を出て、遙かに続く路上にたたずんでみても、
 道を行く馬車や馬は見えない

(第二段)
 高い山に登って見渡す限り天下を眺めても
 はるばると遙かに大平原が続いてゆくだけだ
 たった一羽の鳥が西北を目指して飛び、
 群れを離れた獣が東南へと駆け下って行った

(結び)
 やがて暮れ方となり、懐かしい親友のことを思い出した
 なんとか彼と語り合って、
  自分からつらい気持ちを晴らしてしまいたいものだ


自身の孤独感を強調した詩。

最初の四句で、《私には友だちがいない》と歌い出し、
門を出ても人はいないというのは、実際に町に出れば人はいるので、
《心象風景でしょう》といいます。
《心を許せる人がどこにもいない、その孤独感を示す》。
第二段では、九州とは中国を指すことばで、
中国のどこにも友達はいない、自分は一人ぼっちだ、という喪失感。
鳥や獣も関わりを持つことなく、主人公の孤独感を強調します。

 《心のなかに風が吹く、なんともいえない詩です。
  屈原の時代から、中国の知識人の悩み、絶望の系譜は
  ずっと受け継がれているんですね。》p.246


 ●私の読後感想を少し……

建安の七子の代表、王粲「七哀の詩」の
戦乱の世の民衆の悲惨さを描く詩を読んでいますと、
昔職場の上司からお聞きした、
戦中の大阪大空襲の翌日の風景のお話を思い出します。
学徒動員で工場勤務していたそうで、路上に死傷者が……。

ロシアのウクライナ侵攻に関しても、同様に、
悲惨な状況が展開されているようです。
戦争というものは、上に立つ権力者の都合で、
結局苦しむのは一般庶民ということなんでしょうか。

竹林の七賢・阮籍「詠懐詩」の孤独感についても、
まあ、なんともいえないものがあります。
私も結構孤独に生きてきた日があり、
私の場合は自分の勝手な思い込みでもあったのですが、
ある種のつらさがあります。

今回のコロナ禍にあっても、
そういう孤独地獄に堕ちている人も少なくなかったのではないでしょうか。
まわりを見渡せば、
何かしら逃げる余地があるかもしれないのですけれど、
それが見えなくなってしまう瞬間というものがあります。

人は、やはり人にしか助けられない、人にしか助けてもらえない、
そういうものなのではないでしょうか。


*参考文献:
『阮籍の「詠懐詩」について』吉川 幸次郎 岩波文庫 1981/4/16

―《竹林の七賢の巨頭・阮籍は陰謀と詐術うずまく魏晋時代(三世紀)に
 生き,「詠懐詩」八十二首を残した.著者は,これを中国詩のうち最も
 調子の高いものだと評し,またその人物を敬愛してやまぬ.表題作は
 「詠懐詩」に斬新大胆な読みを加え,中国詩史上,五言詩が阮籍におい
 て真に一つの文学形式となったことを論証する》



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(22) 建安の七子、竹林の七賢」と題して、今回も全文転載紹介です。

今回は、建安の七子から、王粲「七哀の詩」、竹林の七賢から、阮籍「詠懐詩」を、一部紹介しました。

戦乱の時代を生き抜いた人たちの詩です。

現代においてもどこかしらあちこちで戦乱が続いています。
なんとかならないものか、と。
政治の問題というのか、権力争いなのか、なんとも頭の痛い問題です。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
〈メルマガ「楽しい読書」〉カテゴリ

--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(22)建安の七子、竹林の七賢-楽しい読書341号--
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする