またしても旧聞です。
この件に関しましては、以前、わが左利きメルマガ
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii 第66号(No.66) 2007/1/27「<左利きプチ・アンケート>第37回」』の「◎左利きニュース◎ 『AERA』連載記事&『なぜヒトの脳だ~』」で、簡単に紹介しました。
が、今回改めて通読しましたので、こちらにも書いておきます。
* 『なぜヒトの脳だけが大きくなったのか―人類進化最大の謎に挑む』 *
濱田穣/著 講談社ブルーバックス(2007.1.20刊)
京都大学霊長類研究所形態進化分野助教授で、霊長類の形態比較を研究する(ニホンザルなどの身体形態と成長・加齢を比較し、ヒトの進化を考察する)著者が、ヒトの脳がなぜこれほどまでに大きく発達してきたのかの謎に、新たな視点から迫ります。
脳の進化を保障したのは、脂肪であり、脂肪をためることが可能になったことが、人類の脳を大きく発達させたのだというのが結論です。
この結びつきがおもしろく、かつユニークな視点です。
まず、ヒトの進化について語られ、脳の発達を促した要因を探ります。
言語コミュニケーションを成り立たせた発声器官の発達から、さらなる脳の拡大へと、話が続きます。
本書のそういう流れの中で、脳の進化のもうひとつの大きな原動力となった手の発達、そして利き手の進化について検討されます。
「第4章 脳の拡大は、なぜ、どのように起こったのか?」に、
「利き手と言葉と脳の発達」(117-122p)という項目があり、そのなかで、
霊長類における利き手の進化の歴史を説明しています。
<ヒトはいかにして利き手を獲得したか>についての説です。
1.それは左利きから始まった
霊長類の進化史の中で「左利き」が最初にあった。
キツネザルのような原猿類の「利き手」は左手―右手で木の幹にしがみついて身体を支え、食物に左手を伸ばす。
霊長類では、三次元の樹上空間での運動性が適応に必要な条件で、視覚・空間定位感覚と身体定位能力という、これらの機能を持つ右半球が発達した。
その影響を受けて、同じく右半球のコントロールする左手が、より精密な運動を必要とする食物採取に使われ、利き手となった。
2.「右利き」の進化
第二段階は、生活の場所が地上に移行してから始まった。
しがみつきの必要がなくなり、利き手の偏りがなくなる。
地上生活に伴い、集団での社会生活に必要な音声が発達した。
脳におけるこの聴覚・発声領域が右手の運動コントロール部分と近接しており、影響を与え、「右利き」が発生した。
原猿類の「左手伸ばし」より精密な手指使い(マニュピレーション)が発達した。
3.「右利き」から言葉が進化した
第三段階は、人類進化の過程で起こった。
「利き手」のマニュピレーションが精巧になり、言語コミュニケーションが発展し、手が物を、発声器官が音声(言葉)を操作する。
これらは、大脳左半球が関与する。
そして、言葉を操る専門の領域(ブローカ野、ウェルニッケ野)も生まれた。
しかし、右利きであっても、「左手がどうしようもなく不器用というわけではない」とあります。
「左手は左手らしい動作を担当している」、「とくに対象物を保持すること」で「右手の及ばない能力だ」といいます。
同じように音声でも、「左半球の言語中枢だけが重要なのではない」という。歌や言葉に情感を与えるには、右半球や脳の奥にある辺縁系の働きが重要だ、といいます。
もうひとつ、気になる点を書いておきますと、ヒトの幼児が発達する間にも、左半球の「言語野が右手の動きにも関係していることがわかってきた」といいます。
「どちらかの中枢に障害があって、その機能発達が損なわれると、もう一つの機能発達も遅れがちとなる」とあります。
言語と手の精緻な運動との発達は相互に乗り合わせしているのだ、と。
これは、発達障害の子に左利きが多いなどといわれることと何か関係があるのでしょうか。
…まだまだ分からないことばかりです。
・・・
以前『お茶でっせ』の記事:2004.9.19
「ヒトにはなぜ利き手ができたか」で、
利き手の発生のメカニズムについて、同じく京都大学霊長類研究所の元所長、久保田競/著『脳を探検する』(講談社 1998年刊)の説を紹介しました。
原始的なサルでは左利きで、類人猿のチンパンジーになると、親指を使う高度なつまみ方では右手だ、という。
どうやら、道具を使うという要素が取り入れられたときから、右利きの要素が現れたと考えられる。
利き手だった左手でしっかりと保持し、自由になったあいている右手で細かい作業をするようになった。
こうして右手と左脳が発達して来たと考えられる。
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※ 参照:『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii
第66号(No.66) 2007/1/27「<左利きプチ・アンケート>第37回」』
◎左利きニュース◎ 『AERA』連載記事&『なぜヒトの脳だ~』
※ 参照:『お茶でっせ』記事
・2004.9.19
ヒトにはなぜ利き手ができたか
※ 参照:
『レフティやすおの本屋』左利きの本棚/研究書2
・『なぜヒトの脳だけが大きくなったのか 人類進化最大の謎に挑む』
濱田穣/著 講談社ブルーバックス(2007.1.20刊)
※ 参照:
・『脳を探検する』久保田競/著(講談社 1998年刊)
※本稿は、ココログ版『レフティやすおのお茶でっせ』より
「利き手の進化の歴史:『なぜヒトの脳だけが大きくなったのか』から」を転載したものです。