2017.10.10(火)
今日は第48回衆議院選挙の公示日(投票日22日)である。それに合わせて読んだ訳ではないが、『日本会議 戦前回帰への情念』 山崎雅弘著や『カエルの楽園』 百田尚樹著は意味深である。投票日までに是非とも『カエルの楽園』はご一読願いたい。
最近読んだ本。記載するのは今回で7回目、評価を付けるのも気が引けるが、最も面白く読んだものは☆5つである。最近発見したことだが、このシリーズが意外と好評だということ。これを読んで読書したという方も現れた。
『日本会議 戦前回帰への情念』 山崎雅弘著 集英社新書 評価☆☆☆☆☆ ’17年8月25日読了
書評:本書は日本会議が設立された歴史的背景と会議の最大の目的である「憲法改正」、安倍政権の諸政策と日本会議の主張や運動、思想や価値観、目指す方向等が一致している安倍政権との繋がりを検証している。先に結論から申し上げると、私は著者の意見とは恐らく対極にあると思われる。
日本会議の何が悪いのか?一旦緩急あれば・・・の教育勅語の復活が何故悪いか?世界のどの国から見ても自国を自国民が守るのは当たり前のこと。自民党の憲法改正草案にも揚げ足取りとしか思えないような論評である。先に読んだ「戦争と平和」百田尚樹著とは対極の著書か。
著者は戦史・紛争史の検証・分析の歴史研究家であり、この著書では大東亜戦争時の国家神道・国体思想の批判に徹している。要するに過去の大戦の反省である。確かに戦時下の国体明微運動(「国体の本義」、「臣民の道」は天皇と国民の道を表したもの)は現代には必ずしもそぐわないかも知れないが、精神的・普遍的な伝統文化・精神は守らねばならない。
著者は政治的には日本会議が戦前回帰の懸念ありと警鐘を鳴らしている。では、近年の中韓両国の日本の領土・領海侵略侵犯に対しては手を拱いて遺憾の意を表明するに留まっているが、これで国を守っていけると思っているのか?中国は沖縄までも自国の領土だとうそぶいており、このままでは何れ日本は中国の属国になってしまう。
著者は本当の愛国心云々と言うが、安保条約の下での現状維持が愛国者なのか?勿論、条約は戦争回避の抑止力となるが、抑止力だけでは国は守れない。これは愛国心というよりも寧ろ、「9条教信者」である。
日本会議に否定的な著者は、現憲法下で70年間、平和的な発展、繁栄を維持してきたではないかという。非政治的な文化の維持や存続に関する日本会議の運動には敬意を払うと述べているが、過去の反省のみ(著者の検証・分析力には敬意を払う)で今後どのように国を守っていくのか具体的な将来の展望がないのだ。反省は必要だが批判ばかりでは国は守れない。
自分の考え方に否定的な本を読むのも面白い。長くなったので寸評じゃなく書評としたい。
『ロスジェネの逆襲』 池井戸潤著 文春文庫 評価☆☆☆☆☆ ’17年8月31日読了
寸評:半沢直樹シリーズ第3弾、IT企業の敵対的買収において買収会社に1500億円融資した東京中央BK、一方、BKの子会社東京セントラル証券に出向中の半沢直樹が、被買収会社とアドバイザー契約を結び顧客本位の最適なソリューションの提供に奮闘。親会社と子会社が争い、一見利益相反行為に見えるが、BKは融資における初歩的なミスを犯していた。終盤のBKの追加融資を決定するための役員会に乗り込んでの大逆転劇、文句なく面白い。
『永遠の0』 百田尚樹著 講談社文庫 評価☆☆☆ ’17年9月7日読了
寸評:遅ればせながら読んだ。私は明治以降の戦記物は殆ど読まない。いろいろ理由はあるがここでは割愛する。実は私の祖父も大東亜戦争で戦艦「榛名」に乗艦したが、負傷のため早期に退役した。祖父の生前、戦争の話は子供の頃何度も聞かされたものだが、今では殆ど覚えていない。母親からも内地空襲の話は良く聞いたので、もうあまり聞きたくないというのが本音、トラウマになっているのかも知れない。
この本の評論で、戦争を煽った帝国主義を賛美するものだとしばしば目にするが、読了してみて全くそんな感想は抱かなかった。当時の帝国主義の世相の中で史実に基づき、或いは残り少ないゼロ戦搭乗者の生存者の重厚な取材に基づき書かれているため、そういう感想を抱く人が居るのかも知れないが、全く的外れだと言っておきたい。もっと素直に読んでも良い本である。物語の内容については触れないが感動はした。私のような戦争を知らない世代や戦争体験者、その時代に生きた人それぞれである。じっくり読んで欲しい。
『本当は恐い 日本むかし話 秘められた異聞録』 深層心理研究会編 竹書房文庫 評価☆☆☆ ’17年9月8日読了
寸評:昔話は子供に聞かせるおとぎ話であり、物語に形を変えた教訓でもある。同時に語り部たちの夢物語でもあったとされる。童話やおとぎ話はその殆どが子供向けに脚色が施されている。それも親しみやすい表現、解り易い内容に改められ、要所を削除してしまったり子供に聞かせたくない部分も消され、今に伝わる愛される話になっているものが多い。その結果、ストーリー展開はうやむやになり「めでたし、めでたし」という結末のものばかりである。だがそれでは物語からもたらされるはずだった教訓を得ることはできない。表層意識を垣間見る程度である。
本書では物語の原話まで遡るが、それは非人道的、反社会的なタブー話や目を覆いたくなるような残酷性や恐怖感、或いは過度な好色性に満ちていることが多い。だがその原話にこそ人間の性や欲望、願望、残忍さ、自己愛、慈愛、性愛という生命の伊吹、つまり深層心理が潜んでいるという。それを探求していくことで物語に秘められた真実を追求し、作品が持つ本来の魅力をあぶり出そうと試みる本である。ふふ・・何だか若返りの本でもあったな。
『眠れないほどおもしろい 「古代史」の謎』 並木伸一郎著 王様文庫 評価☆☆☆☆ ’17年9月15日読了
寸評:記紀(古事記、日本書紀)を含めた古代史の本は多く読んでいるが、この本では新たな諸説を随分発見した。特に日本人のルーツに関する諸説、また記紀よりも古いとされる封印された日本の古史三書、古伝三書をはじめとする古史古伝の記述など、奇想天外のものも多いがなるほどと納得させられることも多い。古史古伝の中でもスーパースター的な存在と言える「竹内文書」は記紀の原本になったとのことだ。しかし歴史学の立場からはこれらの古史古伝はいづれも「偽書」とされている。今後もっと検証されても良いように思う。
『穴』 小山田浩子著 新潮社 評価☆☆☆☆☆ ’17年9月20日読了
寸評:第150回芥川賞受賞作。著者の作品を初めて読んだ。表題作を含め他2篇の短編が収録されているが、3部作とみて良い。平凡な日常を描いた作品で読み始めはどうということもないが、時折顔を覗せる異界、現実のうつせみから夢の中へとごく自然に移行してはまた現実に戻り、どれが現実なのか解らなくなる。次第に物語の中に引きこまれていき、最後には読者をハッとさせるところが良い。こういう感性を持った作家に久しぶりに出会った。私が純文学において五つ星を付けるのは稀である。秀作である。著者の他の作品も読んでみたい衝動に駆られた。
『日本人が一生使える勉強法』 竹田恒泰著 PHP新書 評価☆☆ ’17年9月22日読了
寸評:「和の精神」に立って書かれた竹田式勉強法、仕事術、成功哲学を解説、自己啓発本である。和の精神とは西洋式とは正反対の日本の価値観に基づく成功哲学である。何のために勉強するのか、自分の人生が豊かになる勉強の実践とは、まずは一分野を徹底的に追求し勉強する。更に次の専門分野へと学問を究める。その過程で総合力と統合力が備わる、徹底した自分磨きが絶対条件であるというような論旨であるが、参考程度に留めたい。
『シャイロックの子供たち』 池井戸潤著 文春文庫 評価☆☆☆☆ ’17年9月26日読了
寸評:ある銀行の一支店の人間模様を描く。一遍一遍の主人公が違い、独立した短編のようであるが、何時の間にか長編へと変貌していく。融資ノルマに押しつぶされる渉外員、投資信託のコンプラ、出世競争、上司の理不尽さ、女子行員同士のライバル心、格差のある社内恋愛、精神破綻、家族への思い、そんな中で現金紛失事件が起こる。そして不祥事隠し、二転三転する犯人捜し、行員の失踪事件、支店エースの架空融資、行員のギャンブルなどなど銀行内で起こりそうな諸事情が満載されている。事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤を描く、圧巻の金融クライム・ノベルである。
『無頼のススメ』 伊集院静著 新潮新書 評価☆☆☆ ’17年9月28日読了
寸評:無頼とは自分には頼るもの無しということだ。また常に何かに対して、どこかで怒っている人間のことでもある。表に怒りを出さなくても、誰かとつるむのでは無く、自立した個として怒るというのはとても大事なこと。生きている限り戦いは一旦始まったら、とにかく最後まで立っていることが重要である。著者に共感する部分は多々あるが、共感するが故の反感もある。目立つことをするな、人とつるむな、孤を知れ、他人には干渉しない、イデオロギーなど若者が罹りやすい流行病のようなもの、等々の人生教訓書である。何よりも吉行淳之介氏のエピソードが数回出てくるところが良い。
『不道徳教育講座』 三島由紀夫著 角川文庫 評価☆☆☆☆☆ ’17年10月5日読了
寸評:著者は近代日本文学の第一人者である。純文学に於いて端正な由緒正しい文学を書く。そして厳しく真面目な気難しい芸術至上主義者である。文学を離れたエンターテナーの著者とは全くの別人である。本書は井原西鶴のためしに習って、当時流行の道徳教育をもじって「不道徳教育講座」を開講。昭和33年から週刊誌「明星」に連載されたものであり、女性向大衆週刊誌のためか著者は裃を脱いでふざけている。しかし吉行淳之介、安岡章太郎、遠藤周作らの卓抜で軽いが解放感にあふれたエッセイと並ぶ傑作である。既に60年前の作品であるが、今も決して色褪せていない。
「大いにウソをつくべし」「約束を守るなかれ」「喧嘩の自慢をすべし」「公約を履行するなかれ」「自由と恐怖」等々全69章からなる。これらのことを実践すれば病院送りは間違いない。この書は三島の小説に現れない座談における機智や逆説、笑いが十分に発揮されている。不道徳は真の道徳に並んでいる。しかし、心理分析が得意な三島流思考回路はとても複雑で論旨は哲学的かつ難解な章も多かった。
最終章の「おわり悪ければすべて悪し」では自殺を完全否定しているが、著者は1970年11月、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決した。当時私は中学3年生、割腹自決に大変なショックを受け、高校へ入学してから三島文学を読み始めた。とは言え、大学生まででありその後40年近く著書を手に取ることは無かった。著者の未読の著書も多くあり、最近になって三島純文学に触れ直してみようと思った次第。学生時代は吉行淳之介120冊、三島由紀夫は30冊程度の読書だった。
『カエルの楽園』 百田尚樹著 新潮文庫 評価☆☆☆☆☆ ’17年10月10日読了
寸評:ひょっとすると、10月10日公示、10月22日投票の衆議院選挙に合わせて発売された本かも知れない。余りにタイミングが良すぎる。この本は寓話の形を取りながら、日本国の本質をえぐり出した名著であり予言書である。読み始めればすぐに現代の日本社会、そして安全保障をテーマにした物語だと言うことが解る。物語はカエルの社会に例え、日・中・韓・米が入り乱れる。何より怖ろしいことは、この寓話が現在、我々の目の前で少しずつ現実になりつつあることだ。勿論、この寓話は別の読み方もできるが、著者の謂わんとしていることは、9条の改憲が出来なければ日々高まる中国や北朝鮮の脅威に対して、日本は国民の命と安全を守ることが困難であると言いたいのだろう。本書の結末では、かつて楽園だったナパ^ジュ(JAPANを反対から読む)国が壊滅し、生き残ったカエルたちは食用の奴隷か普通の奴隷にされてしまう。9条を頑なに信奉し、紛争や戦争さえなければ奴隷の平和でも良いと心から思っている。現在、こう思っている日本人の何と多いことか。
【10月10日過去の釣行記録】
・2005年第2埠頭中電前、11:00~14:30、小潮、釣果=2人でキス25
・2008年南周防大橋下埠頭、19:20~20:55、中潮、釣果=メバル3
・2009年洲鼻港、19:30~21:00、小潮、釣果=アオリイカ1
・2010年洲鼻港防波堤、06:00~11:00、中潮、釣果=キス3・カワハギ13・クロ1
・2011年第2埠頭中電前、06:10~10:10、大潮、釣果=キス7・小ダイ2
【この日の釣り情報】
・この日の釣り情報はありません。
【旧暦8月21日釣行記録】
・2008年09月20日、徳山晴海埠頭、19:30~22:37、中潮、釣果=チヌ1・アジ3
・2007年10月01日、室積西の浜漁港、18:10~19:48、中潮、釣果=アオリイカボウズ
・2007年10月01日、ビックモーター沖、19:30~22:00、中潮、釣果=メバル4・アジ8
・2015年10月03日、新川港・落港、05:30~08:40、中潮、釣果=アオリイカボウズ
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