正常な左フォークはオイル抜きで放置しながら、待機時間に右側フォークの分解をやってみた。
まだオイルも抜いていない状態でトップボルトを少し緩めただけ。
最大の難所はフォークボトムのM10キャップボルトが手持ちの工具で抜けるかどうか?
前もって用意した対辺8mmのヘキサレンチを切断したストレートヘキサレンチにソケットを付けて、スピ
ナーハンドルで回そうと試みる。
期待半分に普通の工具構成で回そうとしてみたが…
アウターチューブを足で踏んづけて固定してもフォークが供回りして不安定で、まったく緩む気配が感じ
られない。
いろいろな力加減でやってみたけれどダメだった。
どうしよう・・・どうしよう・・・
簡易万力が有るのを思い出し、ボトムに噛ませてフォーク本体を回りにくくさせてみた。
スピナーハンドルも長い柄の物に交換。
この状態でしっかり押さえながらエイ!っと回したらバキって音が鳴って…
無事に緩んでくれたよ。
もう一人押さえてくれる助手でも居るか、ちゃんとした作業台に万力を固定してから行えば、もっと楽に
できただろうなw
なおボトムボルトを抜く時にインパクトレンチを使えばこんなに苦労しなくて済む。
やっと緩んだのでそのままボルトを抜いてみた。
ボトムに密閉用の銅ワッシャーが張り付いてたからピンセットで救出。
外したついでに寸法を測っておく。
もしもナメた時に代替品を探す貴重な資料になるからね。
ここは多分高張力ボルトを使ってる思うので、ホムセンの安ボルトではなくメーカー純正品を使いたい。
SR400やSRV250の物が同寸のようなので、外せたものの不幸にしてナメてしまってた時は代替品として
覚えておけばいい。
銅ワッシャ(銅パッキン)の寸法から察すると、ブレーキホースのバンジョーボルトのクラッシュワッシャー
と同寸で汎用品を使うことができる。
なおフォーク内を分解した後でボルトを回そうとすると、ダンパーロッドが供回りして抜けない可能性
が高いから非分解のまま緩めたのだ。
中のスプリングが押さえになって、供回りしにくくなるのを利用した作業順番なんだ。
まだオイルは入ったままなので下から排出。
けっこう汚れていて丁度いい交換時期だったよ。
このままインナーフォークを引っ張るとスポッとアウターチューブから抜ける。
構造的にボトムボルトがダンパーロッドを介して抜けどめになってるのだ。
ダンパーロッドの先端にアルミ製のロックピースがある。
見かけなければアウターチューブ内に残ってるはずだから、逆さまにして取り出そう。
やっと分離できのでアウターフォークのダストシールとCリングを外し、オイルシール本体や内部を観察して
みたけど特に目立ったキズは無い。
YBRはコストカットのためかスライドメタルが無い構造だった。
いよいよオイルシールを外すよ。
キズ防止用に自転車の古タイヤを切った当てゴムをはさみ、タイヤレバーを使ってテコの原理で少しずつ
抜く。
徐々に回しながら栓抜きの要領で均等に抜くのが良い。
同時にレバーの先端でフォーク本体の壁にキズを付けないように、微妙な差し込み位置を探しながら
作業しなけばならない。
この作業が一番気を使って時間がかっかった。 ふぅ・・・
無事に抜けた漏れオイルシールをポイして、用意した新品オイルシールにシリコングリスを薄く塗布する。
外周と内側に塗った。
BW'S100用オイルシール「4VP-F3145-00」
次に登場するのが特殊工具の…水道管の蓋。
耐衝撃塩ビ管用継手の止水用キャップ「HIキャップ(25ミリ)」約80円也でホムセンの水道管
売り場で見つけられる。
ところが実際に当ててみるとアウターフォークの穴より微妙に太くて入らない。
しかたないのでグラインダーと棒ヤスリで外周を削る追加工をした。
後で調べたらキャップだけが根本で1mm太く、他の継手関係はそのまま使えそうなので、皆さんはキャップに
こだわらずに使いやすい物で行うと良いと思うよ、
入ったよ♪
オイルシールリップの上下方向を間違えずに装着し、ハンマーで少しずつたたきながら打ち込む。
奥行きの加減はCリングの溝が出る程度で、一番奥の突き当りまで打ち込む事はしない。
打ち込みすぎると次回交換時に引っ掛ける隙間が無くなって具合が悪いからだ。
全周のわたり均一に圧入し、Cリングストッパーを装着。
さらにダストシールも手で圧入しておくと後が楽だ。
いよいよインナーフォークを挿入。
ダンパーロッドの先端にアルミのロックピースを付け、アウターフォークを逆さまにし下から慎重に
差し込む。
上から銅ワッシャー(今回は再使用)、ボトムボルトを入れて仮止めする。
増し締めは寝かせて単純な工具構成で行った。
密閉は銅ワッシャーの潰れで確保してるので、バカみたいに強く閉め込む必要は無い。
固くなってからキュっと増し締めするだけで十分だ。
もしも緩んだとしてもアクスルシャフトに突き当って脱落する事は無く、せいぜいオイル漏れで異常を知ら
せてくれる程度である。w
残りはフォークオイル交換と同じ作業。
正常な左側フォークと同じように立ててトップボルトを外し、内部部品をすべて取り出した。
インナーフォーク内に残ってるオイルを排出させて暇つぶしに新品オイルの準備。
今度は新品オイルの投入だ。(今回用意したのはスズキのG10。安かったのでw)
まずインナーフォークを一番下まで押し込んでからフォークオイルをメスシリンダーで測って160cc入れる。
左右それぞれ同じ量で構わない。
そしてインナーフォークをゆっくりと何回か上下させて底に溜まった気泡を上昇させる。
次に一番下まで押し込んでから立ててしばらく放置。
気泡が抜けるまでの時間が必要なんだな。
暇つぶしにトップボルトのサビ落としや、散乱した工具を整理したり次の準備でもすると良い。
最後の仕上げは油面調整。
用意したのがホースに付けた油差しと割り箸と輪ゴムによるT字型の位置決め治具でテープで止めてる。
ホース先端とTの柄の距離が油面距離になる。
サービスマニュアル指定は156mmだが、読者のG氏がお世話になってたバイク屋のメカさん情報
では142mmとの事。
俺の今までのセッティングはスペシャルブレンドオイル(G10+G15)を150mm。
今回は久しぶりに粘度G-10だけでやってみたい。
だが過去に156mm+G10で少しフニャフニャした感触がして気に入らなかったから、今回は指定よりも
11mm上げて145mmを試した。
こうすれば密閉された内部空気量が減って踏ん張り方が硬い方向へと変わるだろう。
気泡が抜けたであろうフォークが一番下まで下がってるか再確認し、油面治具を差し込んで油差しを1回
握って離すと、ポンプ同様に余分なオイルが吸い上げて設定した145mmの油面が一発で出せる。
油面調整が済んだら今度はインナーフォークをゆっくり伸ばし、抜き取ってた部品を順番通り、元の方向
通りに入れてトップボルトを仮止めする。
ここは後で増し締めするので適当に硬くなったらOK。
やっと左右のフォークが完成したからブラケットに装着する。
純正位置はフォークトップとアッパーブラケットが面位置なので、金尺で平面を出せばいい。
平面を確保しながらロアーブラケットのボルトを締める。
次に仮締めしてたトップボルトを高ナット+レンチで本締めする。
ここもOリングで密閉されてるのでバカ締めする必要はない。
硬くなったらストップで十分だ。
トップボルト本締めが終わったらアッパーブラケットのボルトを締める。
ここを壊す人が居るらしいので、上下ブラケット共に締め過ぎに注意してください。
オフロード車の整備テクのうち、わざとロアー側を若干緩めにして転倒時にフォークをたわみやすくして
インナーチューブの曲がり破損を防ぐ裏技があるくらいだ。
最後にアクスルシャフトが素直に通るか確認し、異常なたわみの有無をチェックする。
これでやっとフォークが組み上がったから、外した部品類やタイヤを元通りに組み上げて完成。
朝一から始めるつもりが家の用事に阻まれて開始時間が遅れたのと、途中の難所でアタフタして手間取
ったり、ネタ用に撮影したりで結局フォーク整備しかできなかった。
そんなわけで力つきて予定してたステムベアリングの確認整備は後日気合が入った日に実行する
事に変更。
「もうゴールしてもいいよね?」
見てもわかるようにフォークオイルシールの交換は結構面倒で手間暇がかかり、お店に修理依頼すると
意外と高額になる内容。
YBRはまだ単純な構造だから少しは安くあがるだろうが、フルカウルのSSだと数万はいくだろうな。
インナーフォークの軽い掃除を怠らず、俺みたいに酷使しなければオイルシール漏れはめったに起きない
と思うけど、YBRは車重に対してフォーク径が若干細く、片側ブレーキ機構によりブレーキング時に右側の
ヨレが大きくなるのがオイルシールへの負担になってると想像する。
他のYBR乗りさんの漏れ話も、ブレーキ側右フォークという例が多い。
軽く試走した結果、漏れはピタリと止まった。
純正指定じゃない台湾ヤマハのオイルシールでもまったく問題なく装着できたのが大きな収穫だった。
国内正規販売でKN企画も販売してる入手性の高いフォークオイルシールが使える事を証明できた。