シベリウス:交響曲第6番/第7番
指揮:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
管弦楽:モスクワ放送交響楽団
録音:1974年、モスクワ
LP:VICTOR VIC-4005
今回はゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(1931年―2018年)が、モスクワ放送交響楽団を指揮した「シベリウス:交響曲全集」の中から、第6番/第7番を収録したLPレコードを取り上げる。ロジェストヴェンスキーは、1931年モスクワ出身の指揮者。20歳の時、ボリショイ劇場でチャイコフスキーのバレエ音楽「るみ割り人形」を指揮して一躍注目を浴びる。当時の旧ソ連政府は、ソ連文化省交響楽団を創設するのに際し、ロジェストヴェンスキーを音楽監督に就かせたことでも分かる通り、旧ソ連国内では確固たる地位を固めていた。初来日は、1957年。以後、度々日本を訪れ、1990年には読売日本交響楽団の名誉指揮者となる。さらに、長年ロシア音楽の普及に務めた功績により、2001年勲三等旭日中綬章を受章するなど、日本とは深いつながりを持つ指揮者だ。モスクワ放送交響楽団、ロイヤル・ストックホルム・フィル、BBC交響楽団、ウィーン交響楽団の各首席指揮者を歴任してきた、ロシアを代表する巨匠であった。シベリウスは、生涯で合計7曲の交響曲を作曲した。第6番は、第7番という最高傑作の橋渡し的交響曲という位置づけをされることもある。手法的にも内容的にも第7番に似ている曲とされることも否定できない。しかし、その一方では、田園的な楽想と抽象的な楽想の見事な統一という、独自性を兼ね備えた交響曲とも取れる。一方、交響曲第7番は、シベリウスが交響曲で到達した至高の境地が盛り込められた最高傑作という評価が下されている作品。単一楽章からなり、その内容も、第1番の交響曲から積み上げてきた、それまでの楽想の集大成といった趣が強い作風となった。このLPレコードでのロジェストヴェンスキーの第6番の指揮ぶりは、その出だしから北欧の田園的田園風景を思い起こさせるような、透明感と優雅さが込められており、引きつけられる。どことなく心躍るようにユーモラスに指揮する部分もあり、シベリウス特有の魅力がしばしば顔をもたげる。この録音は、シベリウスの後期の交響曲は難解だという、紋切型鑑賞法に一石を投じる内容だ。オケもロジェストヴェンスキーの指揮に敏感に反応する。一方、第7番は、深みを込めた指揮ぶりが全面を覆いつくし、シベリウスの心の底を除き込むような、壮絶さがリスナーにひしひしと伝わる。世界各地での紛争が絶えない人類へ対しての、何か祈りのようにも感じられる。これは、人類が到達した交響曲の最高峰の一つであり、そして、その演奏でもあり、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキーの指揮の凄味の一端に触れた気がする。(LPC)