出張で、 鹿児島 に行くことになった。
飛行機を降りると、さすが南国。
あっづ~~~い!!
とはいえ、初めて降り立った鹿児島にワクワクしてしまう。
事前に日本酒をリサーチしてみるものの何も得られなかったので、もう気分は地元の食!ついでに焼酎。
ラッキーなことに、17時に仕事から解放された。が。
一人ポツンと天文館のホテルに取り残される。
うーん。
こういう旅先で一人飲みというのは初めてだけど 「いっちょ行ってみるか。」
下調べで行ってみたかった、天文館繁華街の 焼酎天国 へ。
うわー、しっぶー。
でも、ここまで来たら引き換えしたくない。勇気を出してお店へ。
いきなり一番客。
店内は、年季の入ったいい雰囲気。
そして、このものすごい数の焼酎が圧巻だ。
しかも、ほとんどの焼酎に個人名らしきラベルが貼られている。
雑誌の切り抜きやサインの色紙なんかも沢山あって、有名店のようだ。
座敷は広すぎるので、6席ほどの小さなカウンターに座って、ビールをお願い。
すると、お通しには、さっそく鹿児島地元の きびなご と、もずくが。
次いで、お店のスタッフであるおばちゃんに
「県外から来たんですけど、地元のオススメといったら何でしょう。」 と、聞いて、
きびなご刺身 と 薩摩地鶏刺し を注文。
どちらも、食べたかったもの♪
きびなご、キラキラしてて、鮮度が良いのが分かる。
そして、歯ごたえの良いこと良いこと!魚なのに、噛むと「ザクッ」という音。
タレは酢味噌かな。
薩摩地鶏の刺身も、すごい歯ごたえで、噛めば噛むほど旨味がでてくる。
こりゃーウマイ!
しかも「きびなご」400円、「地鶏刺し」500円って、この量にこの味なのに、超安い。
ビールもそこそこに、おばちゃんに「焼酎が欲しいんですが・・・」と聞くと、
飲んでみたい銘柄を言ってくれれば、作りますから、と。
あれ?下調べのときは、
「自分で好きな焼酎を棚から取って好きなだけ入れて、お会計は自己申告」
というシステムだったけど・・・。
それは昔の話なのかしらん。
まぁ、いいや。
紫尾が美味しいなんて事を聞いたことがあったので、 紫尾の露 という銘柄を、お湯割りで。
すると、コップに作ってくれる。
うーん。
芋焼酎ってことは分かるけど、美味しいってことは分かるけど、
味わいの詳細については書けましぇん。(焼酎に関しては、まったく無知なもので)
あ、でもお湯で割ってしばらくしてからの方が、
お湯と焼酎が馴染んで、まったり美味しくなることは発見!
などと、一人でつまんでいると、常連らしきお爺ちゃんが一人で入ってきた。
当然座るのはカウンター。
「大将、今日何刺身がある?」「サバとかカツオとかありますねー。」
そんな会話が耳に入ってくるけど・・・
ふーむ。サバにカツオ、どこにでもありそうだ・・・と、思っていた折。
お爺ちゃんが、おもむろに話しかけて来た。
「あんた、県外から?旅人?」と。
旅じゃないんですけど、出張で初めて鹿児島に来たので、美味しいのを食べようと思って来たんです。
と答えると、
「良い店選んだね~。ここはこの辺りの中でも、本当にエエ店だぁよー。」 とニッコリ。
こんな言葉に始まり、一人客であるお互いの様子を伺いながら、ポツリ、ポツリ・・・と会話を交わしていく。
すると、お爺ちゃんが
「お前さん、まだサバ食べとらんね。 このサバ、屋久島の首折れサバ っちゅーてね。」 と。
なんですと!サバはサバでも 屋久島の首折れサバですか?!
そそそそれは、食べたーい!「どこにでもあるサバ」ではないじゃないか! と、
私も速攻追加でお願い。
もちろん捕れたて新鮮な生だ。
一口・・・。
「んんっま~~~い!!!!」
思わず叫んでしまった。
目までウルウルしてたに違いない。
もっちもちで、でも歯ごたえがすごくあって、甘みもあって・・・これ、サバ?!
何なのでしょう、このウマさ。
美味しいものを食べて、涙が出そうになったなんて。
お爺ちゃんや、マスターも、その反応に 「えっへん」 って感じに喜んでくれた。
「首折れサバは、いつもあるとは限らんのよ。しかもココのは最高。あんた、ラッキーだったね。」 と。
その他にも、お爺ちゃんが
「とんこつ っちゅーのも東京の“豚骨”とは違う、鹿児島のモン。」 と教えてくれた。
豚骨というより、骨付きスペアリブを大根と一緒に煮込んだ角煮のようなもの。
味噌ダレが独特、甘いんだけどしつこくない甘さというか。
全然あぶらっこくなくて、これは焼酎のキレに合う味なのかも。
こんな風に食べ物の話から、すっかりお喋りモード。
お爺ちゃんは、鹿児島生まれの鹿児島育ちで、これまた旅好きなんだとか。
鹿児島の見所、知覧の陸軍特攻隊の話、郷土料理の話・・・
お爺ちゃんによると、
「東国原知事が自慢しとる宮崎地鶏の炭火焼は、もともと薩摩地鶏のなんだ。」
など、いろ~んな鹿児島の話をしてくれる。
いつしか、お爺ちゃんキープの わか松 という焼酎を、私も頂いている。
「旅好きに悪い人はおらんが、アンタはまた面白い。これ一緒に飲みましょう。」
と言ってくれるもんだから。
エヘヘ、ありがとうございます、とちゃっかり。
そして、流れは息子さんの話から急展開。
「もう息子は川崎にずっと居るから、孫にもなかなか会えんの~。」とおっしゃる。
まぁ偶然、私も川崎市民。
なんとなく胸がザワザワして、「最寄の駅は覚えてらっしゃいますか?」 と聞くと。
うぎゃーー!なんと!ウチと同じ駅ではないですかーー!!!
これはこれはこれは! 何かの縁を感じる!
お爺ちゃんと口を揃えて 「世の中の繋がりってのは、面白いねぇ~。」と、もう完全に意気投合。
「よし。この後は、いつも鶏焼きの店に寄るんだが、アンタも一緒にどうかね。」 とな!
こうなったら勢いだ。行かねばなるまい。
お魚と郷土料理を美味しく食べさせてくれた焼酎天国を後にし、
地元を知り尽くしているお爺ちゃんの後を付いていく。
「あそこの店もいいし、ここもいいよ。」などと言いながら、丸万 元祖鳥焼 というお店に到着。
ここも、ずいぶん古くからやっていそうなお店だ。
カウンターや小上がりも、ほどよく古ぼけているけど、この年季を感じさせる雰囲気がまた良い。
目の前には、こんな看板。
薩摩地鶏の炭火もも焼専門店らしい。
「赤塚不士夫先生より、当店オリジナルロゴマークを書いて頂きました。」
「全日空 翼の王国より、鹿児島のステーキという表現で紹介されました。」
「初代元祖の店」
などと、書かれている。
お爺ちゃんがさっき言っていた言葉を繰り返した。
「宮崎の丸万なんてのは支店、ここ天文館の丸万が本店で、薩摩地鶏のもも焼が大元だ。」と。
そして もも焼き2つ! とお爺ちゃん元気よく注文。
私は内心 「えっ。 一人一個? 食べきれるかな。」 と思っていたのだけど・・・。
出てきたものを見て納得。
炭火焼の骨付きのもも肉が、どどーーーん!! と。
これは威勢良くかぶりつくのが良さそうだ、2人1個じゃかぶりつけない。
手で持って、肉汁滴る鶏肉をガブっと。
すんごいジューシ~~~。
この焼き加減・・・中はレアで、外はカリカリで、香ばしくて。
かぶりつきながら汁を「じゅるっ」と器用にすすらなければ、もったいなーい!
女であることをすっかり忘れて、無我夢中で骨までしゃぶってしまった。
(あ、もともと女と見られてないから大丈夫か)
そうそう、瓶ビールを注文すると、普通に サッポロ赤星 が出てきたのも感動。
こんな美味しいお店、お爺ちゃんに連れてきて貰わなかったら、知らなかったです。
それに、お爺ちゃんと一緒だから、こんなに楽しい時間が過ごせたのかな。
丸万でも、会話が尽きることがなく。
でもお仕舞いの時間は来るワケで。
もうお爺ちゃんは、ご帰宅の時間、その別れ際。
「またきっと会えるでしょう。 きっとね。 そんな縁を感じるよ。」 と、固く握手。温かい手だ。
そして、踵を返して、潔いお別れ。
天文館商店街に消えていった。
そいえば、お互い名前すら名乗らなかった。
聞こうかな? 名乗ろうかな? と思った時はあったのだけど、なんか 「そんなの要らない」 と。
それよりも、もっと大切なものを貰った気がする。
またどっかで会えますよね、お爺ちゃん。
うん、本当に会えそう。
そんな根拠も無い確信が不思議と持てて、なんだか安心して、何も聞かなかったのかもしれない。
また一人に戻ったけど、一人じゃないような温かい気持ちで、鹿児島の夜は終了したのでした。
[焼酎天国 ※残念ながら2011年に閉店しました。]
TEL:099-224-9750
住所:鹿児島県鹿児島市山之口町9?33
営業時間:17:00~翌0:00
定休日:日、祝
[丸万 元祖焼鳥]
TEL: 099-224-6808
住所:鹿児島県鹿児島市山之口町12?31
鹿児島の人たちは、
お店の人もお客さんもみんなとっても温かくて、
本当に心がほっこりします。
焼酎天国は、お母さんがもう歳だからということで
閉められてしまったそうですね。
また一つ、名店が無くなってしまったと
残念に思います。
楽しい時間を過ごせて良かったですね(^^)
また 鹿児島にいらしてくださいね~