えくぼ

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囁くという文字

2014-07-14 09:25:24 | 歌う

             { 囁くという文字 }

♥ われのみのベンチにすわる昼さがり名の知れぬ鳥の青き囁き  松井多絵子

 「囁く」は不思議な文字である。「愛」の言葉ならバラ色に見える。「噂」なら灰色になる。耳もとに口を寄せ、声をひそめて話す。「アナタだけに知らせてあげる」という内緒のお話は怖い。

 ☁ 死ぬばかり我が酔ふをまちていろいろのかなしきことを囁きし人  石川啄木

 泥酔するほど啄木を飲ませ、「かなしきこと」 を囁く男、啄木に好意的な人ではないだろう。啄木が聞きたくないことをあえて聞かせる、そんな男と飲んだ酒は彼を悪酔いさせたのだ。

 今日、7月14日の朝日歌壇には 「集団的自衛権」をめぐる阿部内閣への不信の歌が多い。
高野公彦選者は第1席から4席まで、他の選者も阿部政権への批判の歌が採られ、昨日朝日での永田和宏選者の「ふつうの人がこんなに」 発信していることが伝わってくる。

 ☁ 政治家の密議のやうだ三人が一人に寄り添ふ囁くの文字  (飯能市) 佐久間敬喜

 この歌は正面から 「集団的自衛権」を批判しているわけではない。「政治家」の密議のいやらしさを、詠んでいる。「囁」くという文字は 1つの口と3つの耳からできている。政治家の密議の様子を凝縮したような文字。この一首をあの世の啄木も注目しているであろう。

※ 高野公彦 「評」 に四首目、一人は阿部首相で、あとの三人は、、、とも読めそうな作。とありました。あとの三人は誰ですか、佐久間敬喜さん。 7月14日  松井多絵子