えくぼ

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万葉集に詠まれた鰻 

2014-07-21 09:17:20 | 歌う

            { 万葉集に詠まれた鰻 }

 昨夜、鰻を食べた。スーパーで買った蒲焼をレンジで30秒温め、炊きたてのご飯にのせただけだが、とても美味しかった。おいしい食べ物が数多ある昨今でも、鰻は文句なしにオイシイ。まして食糧不足の時代の日本では、さぞ美味しかったことだろう。近年は海外からの輸入も増え、人工授精により生まれ育ったウナギ2世が順調に生育しているそうだ。しかし養殖用の稚魚シラスの捕獲量が減少したため、鰻の値段が上昇している。

 ♥ 痩す痩すと生けらばあらむをはたやはた鰻を取ると川に流るな

 ♥ 石麻呂にわれ物申す夏痩せによしと言ふものぞ鰻とり食せ

 この二首は万葉集の大伴家持の歌である。今から千年以上も前に鰻が食べられていたとは。しかも「夏痩せにならないように鰻を食べなさいな」とは。われわれの祖先は生きるために、いや死なないために、川の魚も、毛虫も、蛇も、カラスも食べて生き延びたていたのか。鰻は万葉びとには貴重なエネルギー源だったが美味しく食べることができただろうか。

 鰻の蒲焼は江戸時代の初めかららしい。当時は丸のまま焼いて酒や醤油で味付けしたらしい。貝原益軒により 「土用の丑の日」が。 ウナギ屋に頼まれて、「土用の丑の日には鰻を」と店先に書いて大当たりしたらしいと、吉野正美著『万葉集歳時記』に書かれている。

 ♥ 吾がなかにこなれゆきたる鰻らをおもひて居れば尊くもあるか  斉藤茂吉

 茂吉が鰻の好きなことはよく知られている。すでに胃腸にある鰻が自分の活力となることをおもい感謝しているらしい。鰻が茂吉に数々の名歌を詠ませたとしたら。昨夜わたしが食べた鰻よ 前頭葉を刺激して、会心の作を、今日のわたしのメモに、、。

                            7月21日  夏枯れの松井多絵子