{ 比べあい地獄 }
香山リカがまた本を出した。♥ 『比べずにはいられない症候群』、わたしたちは他人を意識しすぎる。勝った、負けたのしがらみから脱出することを勧めている本らしい。誰だって負けるのはイヤ、でも勝のは大変だ。香山リカに言われなくても私は他人をできるだけ意識しないよう心がけている。そのためには自分が好きなことに打ち込めばいいのだ。松井旅子と名前を変えたいほど旅が好きな私は、人の気持ちより天気のほうが気になる。とは言えこの世にいる限り 「比べ合い」 は避けられない。「マイペース女」と自負している私だが、、、。
♠ 友はみな旅をしている連休に昼餉のための瓜を乱切り
♠ ふきげんな我に焼かれて塩鮭のばら色の肌は土色となる
♠ アフリカの旅より帰りてきし友はわれより偉くゆたかに見える
♠ ボロ市に買いしインドの壺を持ちインドより帰国せしごと我は
旅は詩である。短歌の仲間たちはよく旅をする。旅が歌になる。しかし体調を崩した夫を残して旅に出られない私は歌のなかでボヤイている。私がいかにも惨めな女のように。
♠ 知らぬこと分からぬことの数多あり中国という国、隣家の人々
♠ 窓際の鏡のなかに立つ裸体、となりの庭の葉のなき沙羅の
隣は何をする人ぞ、と思いながら、でも気になる、冬はことさら。
♠ 下りるのは誰よりはやく上るのは常にわたしは殿(しんがり)である
♠ 横書きの手紙がとどき縦書きの返事を送りし後のさびしさ
若い方たちからの手紙は横書き、わたしは縦書きの返事を書き齢の差を意識する。
香山リカ先生 今のあなたで大丈夫といわれても香山リカさん私を知らない
先生に診察していただくほど私は重症ではないとおもいますが。
7月15日 松井多絵子