{ 世田谷の緑道 }
想像は緑道から羽ばたいた柴崎友香さん、世田谷の住宅街を蛇行する小道の散歩が
小説『春の庭』を生み、第51回芥川賞に決定した。世田谷区には烏山緑道、蛇崩川緑道、北沢川緑道などなど緑道が多く、わたしも毎日のように歩いている。優雅な散歩ではなく日々の餌を得る買い物の途中に緑道を通る。車や自転車さえ通らない静かな道、スベリ台や砂場、ベンチまである公園のような道である。
緑道を歩く 六首 松井多絵子
かしの葉とモチの葉をつなぐ蜘の巣はまるでレースのテーブルセンター
わが町の胸かも此処は水車橋跡に佇み深呼吸する
滑る子を待つスベリ台のスロープの急なる傾斜を微風が滑る
どのような語らいありしかこのベンチあるいは恋の入り口、出口
春先にわれを酔わせた紅梅の花のなき枝を光が走る
歌碑あらば六十歳のこの梅はわたしの町のブランドの木だ
柴崎友香さま 芥川賞、おめでとうございます。✿ 春の庭 の広告の貴女のお顔を見ながら、緑道で時折すれ違うあの人って感じがしました。九年前から世田谷に住んでいられるとのこと、私は生まれたときから世田谷、子供のころは田舎でした。いつのまにか周りがオシャレになり、とまどっています。でも緑道は大好き、ここの空気はおいしいです。お忙しくなっても緑道を散歩なさいますように。貴女に緑道でお目にかかれますように。
わたしも緑道から羽ばたきたいです。 7月29日 松井多絵子