★ 歌人クラブ新人賞の服部真里子 ★
平成27年度日本歌人クラブ新人賞は服部真里子歌集『行け広野へと』に決定した。この歌集については既に昨2014年10月19日の私のブログに書いた。彼女は「未来短歌会会員」で黒瀬珂瀾に師事している。「未来・4月号」から真里子の最新の作品を5首抄出する。
♦ 水を飲むとき水に向かって開かれるキリンの脚のしずけき角度
※ キリンの長い首の歌は多いが脚は珍しい。結句の「しずけき角度」に哀愁が漂う。
♦ まちがえてふりむくような夕暮れに牡丹の巨きな顏咲いている
※ 振り向いたら人ではなく牡丹の顔、花ではなく顏、この結句で1首は鮮やかになる。
♦ 夕闇に手をさし出せばこぼれくる桜は乳歯のほの明るさで
※ 夕闇の桜を乳歯に見立てる、若々しく鋭い視線に桜の花も驚いたことだろう。
♦ あなたが覗きこむとあなたの湯豆腐が薄いむらさき色に陰るよ
※ 夕食のひとコマを1首にしてしまう、スパイスが利いているのだ彼女の歌は。
♦ 春の日のあなたに話していたかった音立ててひかり曲げるセロファン
※ 甘く平凡な上句だが斬新な下句に驚く。メリハリが利いる。20代でかくも自在に。
新人賞受賞歌集『行け広野へと』は19歳から27歳までの作品289首が収められている。
私には若さが眩しい歌集であるが、
4月19日 晴天 サングラスをかけて午後はそぞろ歩きを。 松井多絵子
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