「日本人はどこから来たか」とか「邪馬台国はどこにあったか」などというテーマは興味が尽きない。
いろいろ想像をたくましくして考えるのは自由だが、最後はやはり「科学的所見」が決め手になるのであろう。
「日本人になった祖先たち」 篠田謙一著(国立科学博物館人類研究部長)
興味深く読ませていただいた。
母から子供に伝わるミトコンドリアのDNAと、男性に継承されるY染色体を構成するDNAは、それを伝えた系統を遡ることが出来るのでルーツ探しの道具として使われる。
篠田氏はこのDNAをもとにして日本人のルーツを探った。
◉日本人の基層となった縄文人をひとくくりにできない。
沖縄本島、本土日本(本州、四国、九州に住む日本人)、北海道には、それぞれ異なった歴史を持つ。
現代人の集団で、この縄文人とある程度の近縁性を示したのは、アイヌ、琉球、本土日本という日本列島の集団に加えて、朝鮮半島の人たちや台湾や沿海州やカムチャッカの先住民だった。
◉大陸集団、特に北東アジアの集団が日本列島に進入して在来の縄文系集団と混合した。
この渡来集団は主に北部九州の縄文人と混合した。しかしこの渡来集団もかなり在来の(揚子江周辺や朝鮮半島の)縄文人と混血が進んでいた。
そして彼らは稲作農耕民であったと考えられる。
農耕民の弥生人は狩猟採集民の縄文人より人口の増加率が高いから、数百年で在来系の集団を数の上で凌駕する。
最後に篠田氏の主張を紹介したい。
私たちのDNAを研究してみると、そもそも人類の持つDNAの違いはごくわずかであること、そしてその成立の経緯から、私たちの持つDNAはほとんどが東アジアの人々に共有されていることがわかりました。少なくとも私たち自身が公正や信義を重んじているのであれば、人類700万年の歴史から見ればほんの少し前に分かれた世界中の人々や、ほぼ同じ遺伝子を持ち、DNAから見れば親戚関係の集団であるアジアの人々にそれを期待することは、それほど間違った話ではないと思います。DNAが明らかにした、人類集団の成り立ちの真の姿は、この日本国憲法前文の精神の正しさを生物学の立場から裏付けているように思えるのです。
ムスカリとチューリップ