ab Cuore 

帰国した時ノンポリだった私が見たのは≒無政府状態の日本。
ショック、怒り、希望をこのブログに書きました。

2/24 二卵性双生児 第8話 日常生活

2025-02-24 13:33:09 | あほ

2/24 二卵性双生児 第8話 日常生活



虹子は就職はしないと言った。

どういう仕事をしたいかまだわからないから一応大学院に進むと言った。


生活費はどうするんだいと宗太が聞くと、どうってことないように親がいいって言ったもん
と答えた。


そういうことで、虹子は大学院生になった。


虹子が宗太に恋をしたせいか、何かいいたげなことがよくあった。


虹子は直に聞かないで、郵便受けに入っている手紙の差出人なんかを

注意していたようだ。

一度、封筒の差出人をこの人誰と宗太に聞いた。

宗太は何か嫌な気がした。

一種の嫉妬なんだろうけど、これまでの女の中にいなかったタイプの虹子。


宗太は虹子に怖い顔をして、どうして?と聞いた。

虹子はすぐ引き下がったけど、

宗太は虹子を追い出そうかと真剣に思った。


虹子はそれを感じ取った。

二度とその類の質問はしなかった。

二度と、しばらくの間の。


虹子は宗太の側にいたかった。

宗太がもし、女友達、それ以上らしきを連れてきても、

受け入れただろう・耐えただろう。


本当は宗太には注意しなければならない特別な理由があった。


宗太が友人と称する男を連れてきた。

宗太より若く、むしろ虹子の年代で、背が高くモデルのアルバイトで生活している男だった。

虹子が台所に出て来るころに、その男と台所で飲み始めていた。

虹子は台所で人声がすると思ったけど

夕食を作るために台所に行った。



宗太は虹子を男に紹介し、虹子にも男を紹介した。

男は雄一郎と言った。

この男はモデルをやっているんだ。

と虹子の関心をひくために言ってみた。


すごいんですねと虹子は言った。

それからラーメンを作り終わると、テレビのある居間に行ってしまった。


可愛い子じゃないかと雄一郎は言った。

大学院生だ。

恋人はいなそうだから、よかったら誘ってみたらと励ました。

虹子は台所の企み?は知らなかった。

宗太が気がつかないだけど、雄一郎は虹子の好みではなかった。

一目でこの人、嫌と思った。

虹子は夕食を終えると、しばらくテレビを見ていたけど

早々に部屋に引き上げてしまった。


虹子の主義、男にエニイチャンスも与えない。


虹子のタクチック。 虹子は大学の購買部でアルバイトを始めた。

それは見知らぬ大人の世界に入らないためもあったし

宗太に先日のようなことを二度とさせないためでもあった。

購買部には男子学生のアルバイトが数人いた。

どの子にしようかな? と虹子は候補を見定めた。

虹子は一番ハンサムに見えない男子を2人選んだ。


一人は背はまあまあ高いけど、坊主頭に近く、なんとなくだらしない

服装だったけど、本当は礼儀正しい男だった。

坊さんと虹子は呼ぶことにした。

彼は学生ではなくて、購買部で働いている男だった。


もう一人はデブで先日のモデルをやっている男と対照的だった。

大吉という名だったので大きっつあんと虹子は呼ぶことにした。

親切な男で力仕事を手伝ってくれた。


日曜の朝、大きっつあんが虹子を10時ごろ訪ねてきた。

大学3年で虹子の昔のノートを借りにきたのだ。

大きっつあん、上がってとリビングに通した。

それからノートを部屋から持ってきて大吉に渡した。

大吉はノートを開けて少し読んで、

詳しいですね、よくこんなにメモれましたねと言った。

あの教授は早口でとてもこんなに書けない。


こっちにいらっしゃいと

台所に呼ぶと、カフェ オウ レを出した。

砂糖壺を前に出すと、僕、砂糖入れないんです。

そのほうが味がわかるような気がしたと言った。


へーと虹子は感心した。

私、そんなに物の味って考えたことないわと言うと

僕の両親は食べることが好きで、山菜集めなんかするし

子供だからってのけもんにしなかったから

僕たちも子供の頃から山菜の天ぷらなんか食べたもんです。

おいしいですよ。


あらそう、私今でも山菜の天ぷら苦手よ。

そうなんだと言いながら宗太が台所に入ってきた。

だんなさん?

まさか、宗太、大家さんよ、

宗太、こちら大きっつあん、大学の後輩。


お邪魔してますと大吉はペコっと頭を下げた。


まさかは宗太にショックだった。

あのまさかの言い方は2人の関係を一撃で打ち壊した。

お湯を沸かしながら虹子はこんな男がいいのかと無言で考えた。


それから数日後、坊さんが来た。

午後だった。

宗太が虹子さんはいませんよと玄関先で言うと

そうですか、午後はいるって言ったんですが。

2時近くで宗太は普段はいるんですが今日はまだ戻っていませんと

言うと坊さんはじゃ、これ渡しておいてください。

配達を頼まれたので。

わかりました。

箱はそれほど大きくなかったけど、ずっしりと重かった。

そこに虹子がついた。

坊さん、ごめん、ごめん、と言った。


坊さんと呼ばれた男はにっこりして、宗太に渡した箱をひったくり

虹子に渡した。

ありがとう、上がって。

宗太、大学の購買部の人。

こちら、大家さん。


坊さんはうれしそうに上がりこんだ。

リビングに通して、箱を部屋においてご苦労様でしたと言いながら

コップとジュースを持ってきた。


坊さんは下宿してるんですか、花園さん?と大きな声で聞いた。

アパートでも借りればいいのにとさらに言った。

私、家賃なんかにお金使いたくないの。

ここ、朝食つきで1万ちょっと。

と虹子は言った。

そりゃ、安い。

僕はシェアしているんですが、アパート代だけで月2万5千、6千か払ってます。

おしゃべりな子だと宗太は思った。


坊さんはまもなく帰った。

帰ったのがわかると宗太は出てきた。

台所から虹子、お茶入れたよ、と呼びかけた。

虹子は台所に来た。

本を持っていた。

大きなフランス語と英語の辞書だった。

すごい本だねと宗太が言うと辞書よと虹子が答えた。


宗太はほうじ茶を入れ、戸棚からせんべいを出した。


へんなこと聞くけどさ、虹子の好みのタイプってどんなの?

好みのタイプ? 男の?

そう

ないわは虹子は言った。

そういうの出会ったらわかるんじゃない?

俳優とかでも、役柄で好きな人はいるけど、他の映画でも好きとは言えないし。

どんな配役の俳優だった?

うーんと虹子は思い出そうとしたけど、

なんの映画だったかな? 思い出せないわ。と言った。


このお煎餅おいしい。 どこの?

と聞いた。

それは玄米とか黒米で作ったせんべいだった。


虹子を見ながら、虹子が俺に恋しているって

俺の錯覚だったかもと宗太は思った。
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二卵性双生児、 9話 ハエ それから榎本教授


玄関先で虹子が殺虫スプレーをまいている。

どうしたの?と宗太が聞いた。

こんなところにハエが出るからと虹子はまだ天井辺を伺っている。

おかしいわ、食べ物もないのに。


宗太は黙って部屋にさがった。

ハエなんか気にしないようだった。


夕方、2人が台所でそれぞれの夕飯の仕度をしながらしゃべっていた。


明日生ごみを捨てる日ね。

夜のうちに玄関に出すのやめたほうがいいと思う、

玄関の外にしましょうよ。


わかった、外だと忘れるかもね。


と宗太が言うと私が忘れないわと虹子が言った。


宗太はハエは生ゴミのせいだと思っていると考えた。


だいぶ暖かくなったねと数日たって宗太が言った。

この家は夏は暑い?

暑いさ、エアコン全室にあるよ。


宗太は予定を立てていた。

要るのはドラム缶? または何にしよう。

セメント? もっと軽いものがいいけど・・・・

宗太は書き物の手を休めてPCで検索した。


それから発泡スチロールの手もあると思った。


どのくらい要するか、日程を考えた。


1日では階段の下ろし上げできつい。


虹子はこのところ大学院に毎日通っていた。


虹子のついている教授は虹子に翻訳をしてくれと言った。

虹子は学術論文は自分で読むからこそ益もあると思いますがと言ってみた。

ざっとでいいんだ。

彼は仏文学全般を教えていたけど、あまりフランス語ができない。

学生の間では日本語に訳した本で仏文学を学んだというもっぱらの評判だった。

意地の悪い学生がどの訳者がいいですかと質問した。

上田敏かなと教壇で答えたとか。


虹子は教授に頼まれた論文を持ち帰った。

そして宗太に榎本教授ったら論文を日本語に訳してだって。

あの人、本当にフランス語の出来が悪いんだからとぼやいた。

なんの論文だいと虹子に聞いた。

知らないわ、まだ見てもいないし。

虹子がその論文を発表してやったら? と宗太がゲラゲラ笑いながら言った。

虹子は真面目にその案を考えだした。


玄関に生ごみを置きに行った。

天井辺りをハエが数匹飛び回っていた。

虹子はじっとハエの行き先を見ていた。

ゴミ袋を玄関ドアの外においてから、

再びハエを追った。

しかし、天井は高く、ハエの行き先は見えない。

明日明るい時に見てみようと虹子は思った。


翌日、虹子はそんなことはケロケロ忘れていた。


虹子はうちに居る時、教授に頼まれた論文をかなり雑にノートに訳した。

教授でも読めるだろうところは飛ばした。

だから翌週の初めには教授に訳文のノートとともにこんなんでいいですかと

渡した。


週末に入る前教授は再び一冊の本をよこし、これ読んでくれると言った。

それは小説だった。

虹子は表紙を見て、これ映画になったんじゃないと思った。


そして先日の論文のテーマ、映画と文学を思い出した。

































































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