遠方よりエンジン不調&再生要求頻度が多いという事で相談を受けていたCG5クオン…
事の発端は…
地方を走行中チェックランプが点灯して最寄りのディーラーに入庫…
No1とNo3のインジェクターが不良と診断され、その時はチェックランプだけ消してもらい帰庫し地元の整備工場に修理を依頼したところ、1番と3番のインジェクターだけ、しかも中古のインジェクター(廃車になった同型のエンジンから取り外したものらしい…)に交換したらしくそれ以降エンジンの調子が悪くなり更にDPFの堆積メーターの溜まりが早くなった…との事。
まあインジェクターの部分交換なんて今時のディーゼルエンジンにそんな作業をする整備工場がある事にもビックリですが…
それよりも中古のインジェクターって何⁇
そんなものあるの!?って感じ。
仮に中古があったとして…(絶対使わないけど…)
1番と3番だけ交換する!?
おまけにIDコードも登録していないらしいく…
そりゃ調子も悪くなるわな…
修理後も不調のため再度持ち込んだら今度はDPFやら燃料添加弁やらEGRバルブなどを交換されて戻ってきたがエンジン不調は直らず…
最終的に…圧縮が抜けている可能性があるのでエンジンを載せ替える必要があると説明されたらしいです…
さすがにおかしくない!?と言う事で相談を受けていました。
色々と話を聞いてると、圧縮が抜けているかもしれないという結論に行き着くだけのエビデンスは何も無いんですよね…
とりあえず近くに来るタイミングで会社に寄ってもらい診断する事に。
診断機を繋げてみるも現在エラーはナシ。
インジェクターのバランスを見てみると…
分かりやすくグラフにするとこんな感じ。
全体的なバランスも良くないのは見ての通り、中古インジェクターとやらを使ったとされる1番と3番はガッツリ増量補正が入ってる…笑
どうやら1番と3番には本当に中古が使われているようです…
とりあえず書き換えられていない1、3番のIDコードを正規のコードに書き換えて様子を見るも、結果はあまり改善はしませんでした。
という事で、とりあえずインジェクターを交換しないと次に進めない状況なので…
見積もりを出してインジェクターを交換する事になりました。
基本的に高精度な制御がされている昨今の多段噴射インジェクターは交換する場合、全数同時交換が基本です…
結局は全体のバランスの問題なので、部分的に交換すればバランスが崩れるのは想像に難くないですよね。
ユニットインジェクターはリビルトでも高額なので修理費用を抑えたい気持ちは分かりますが、全数換えておかないと後々別のトラブルを起こすだけです…
という事でインジェクターの交換…
交換作業自体は至ってシンプルで特に苦労する事もありませんが…
1番の難点はロッカーシャフトASSYが重たい事くらい…
取り外したインジェクター
で、インジェクターを取り付けて…
ロッカーシャフトを乗っけたら…
バルブクリアランスとプレリフトの調整。
後はカバーや取り外した補機を組み付けたら、完了。
IDコードを書き換えて、燃料系統のエア抜きを行い…
エラーコードが無いことを確認したら…
エンジンを始動して暖気&各データを点検していきます。
暖気も終わったらインジェクターのバランスを確認。
良好です…
交換前はこんな状態でしたから。
新車のデータとか見てても思うのは±10%くらいまでなら特に気にする必要もないのかな…なんて考えてますが、このあたりは今後色んな車両データを見て検証していく予定。
で、圧縮が抜けている可能性があると言われていたエンジンですが…
簡易診断として診断機から車上テストが可能なので実施してみると…結果は問題ナシ。
このテストは各シリンダのクランキングスピードやクランクケース内圧などの変化から各シリンダの圧縮状態を簡易的に診断する機能だと思いますが…
ここで数字がおかしかったら物理的にコンプレッションを測定して下さいね…という位置付けなのであくまでも参考値ではありますが…
仮にこのテストで明らかにおかしな数値が出ていれば圧縮が抜けている可能性もゼロではないと思いますが…
実際にはグラフの通り問題ナシ。
その上で現状エンジンのかかり具合やアイドリングでの振動や走行中のエンジンフィーリングも含めて個人的には圧縮が抜けてるとは到底思えません…
まあそういう診断をしたのには"何か"理由があるのかもしれませんがお客さんの事を考えたらもう少し慎重に診断するべきだと思うんですけどねぇ…
堆積メーターの溜まりが早いという症状に関しては…
とりあえずデータ上の堆積演算値をモニターしながら100km程試運転してデータ取り。
一度お客様に車を返し、業務に使ってもらいながら更にデータを取る予定です。
どこの数字をアテに演算してるのか、まだ確信が持てていない所もあるのでこればっかりは現車で変化を見ていくほかありません…
結果的に時間と労力を使っても何も分からない可能性も十分あり得ますが、結果はどうあれこういうプロセスから得られる情報は非常にためになるんですよね…