「Sさん、私にだって泣きたいこと・悔しいこといっぱいあるの。
でもね、人の前では絶対泣かない。一人になって泣くのよ」
今年94歳になったと言う秋田の友。歌集を編まれたと言うことで送って下さった。
お礼状を書き、届いた頃かと思い電話をしてみたら、丁度一週間のショートスティから帰ったばかりとの事。
一週間毎にご自宅とホームとの生活を繰り返し、ヘルパーさんの助けを受けながらも気丈に一人住まいをされている。
書道、短歌、刺繍、絵画、読書、そしてご自宅ではご自身の食事の用意まで。
「あと一冊エッセイ集を出すから、また読んでね」
そう語る94歳。
とてもとても私には真似できない充実の日々を送っておられる。
膨大な作品を目で追っていくと、子供さん、お孫さん、曾孫さんとの幸せなふれあいに
見え隠れしつゝ老いの辛さや哀しみも詠まれていて先が見えはじめてきた私には
それが他人事とは思えず、切ない。
人前で涙見せずに生き来しも寂寥の夜は雪の韻律
ひと冬を何処に置くかと嫁と娘ら案じくるるを寝たふりをする
置物じゃあるまいし私を夫の遺影がじっとみている
これきしの寒さに負けてなるものか小屋の漬物未だ凍らず
兎さん米寿のばさま作りたるずんだの団子早よ来て食べよ
今宵名月ずんだ団子香ばしく頭をたれて仏前に供ふ
お会いしたいな~ Nさんに・・・
でも、秋田は遠い。