時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

欧米の民主的空爆 (カンボジアと比較しながら)

2015-12-08 22:05:39 | 中東
とうとうアメリカでは、シリアへの地上軍の派遣を支持する声が半数を超えたようである。

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米国市民の大半が初めてシリアとイラクにテロ組織「イスラム国(IS)」
撃退のための地上軍を送ることを支持する用意を示した。
CNNと調査センターORCの合同調査で分かった。

回答者の53%が地上作戦を容認する用意がある。
これまでこの数字が半数を超えることはなかった。
68%が既に米国が採択している対IS軍事行動は充分に攻撃的ではなかった、と見ている。

カリフォルニアのサンベルナルディノにおける銃乱射(テロ行為と認定されている)により、
地上作戦の遂行を容認する市民が多くなっていると見られている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/us/20151208/1281794.html#ixzz3tjaTlJ9j
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忘れてはならないのが、アフガン戦争にせよイラク戦争にせよ、
これらは国民の圧倒的な支持によって行われたということである。

ある学者は、民主主義は戦争を起こしにくくするためのシステムだと語るが、
 実際には、民主主義は大衆が容認する限り、暴力が維持されるようになっている。

その暴力が国外に向けば、それは空爆になり、国内に向けば差別や弾圧となる。
フランスでは、パリ事件を通じて市民の監視下が進む中、極右政党が台頭しつつある。


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フランスで行われた州議会選挙で、マリーヌ・ルペン氏が党首を務める
「国民戦線」が現時点でトップに立っている。ロイター通信が報じた。


出口調査によると、「国民戦線」の得票率は、
フランス北部と北東部で30パーセントを超えている。
2位は、サルコジ前仏大統領が率いる共和党で
得票率はおよそ27パーセント、3位はオランド大統領率いる社会党。

ルペン氏は、現在の結果を、
フランスにとって歴史的な出来事だと指摘し、「国民戦線」に投票したのは、
「息苦しいシステムの代わりとなるものを明確に選択した愛国者たち」であると述べた。

フランス州議会選挙は2回投票制。今回の選挙は、
全政党にとって、2017年の大統領選挙の前哨戦とみなされている。

州議会選挙第2回投票は、13日に実施される予定。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/europe/20151207/1279946.html#ixzz3tjd0T1gR
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日本の政党で例えるならば、1位が維新の会、2位が自民党、3位が民主党という状況である。
どれだけ危機的な状況か何となく感じ取れるだろうか……

次の州議会選挙で、どの政党が首位を取ったとしてもシリアへの空爆は止まらないだろう。

空爆自体は戦闘機に搭乗するパイロットが行うものだが、
その爆弾はフランス(アメリカ)国民の総意を象徴したものである。


ここで、民主主義の名の下に行われる空爆が如何に偽善的なものかを論じておきたい。

空爆と聞いて、私が真っ先に頭に浮かぶのがカンボジアにおける米軍の空爆である。
カンボジアというと、ポル・ポトの虐殺のほうが有名だし、
大抵の人権運動家や平和主義者はポル・ポトが如何に悪かをこれでもかと書き綴る。

ところが、実のところ、ポル・ポト政権だった1976~1979年の3年間で亡くなった
100~300万人の犠牲者のほとんどは飢餓によるものであり、
直接ポル・ポト政府に殺された数は案外少なく、5~15万程度しかない。

対して、1968年より行われてきたアメリカ軍のカンボジア空爆は大変苛烈なもので、
その投下量は第二次世界大戦中に連合国が太平洋で行った爆撃の合計に匹敵するものだった。

人口密集地に落とされたこともあり、この爆撃では数十万の農民が死亡した
200万の農民が難民になり、田園地帯が破壊されたことで深刻な食糧不足に陥った。

この空爆を支持したヘンリー・キッシンジャーは
動いているものはすべて、飛べるものなら何でも使ってやっつけてしまえ
と発言したが、彼は後にノーベル平和賞を受賞している。

言語学者であり、また有名な批評家でもあるノーム・チョムスキーは、
ポル・ポト政権の3年間ほどカンボジア史において徹底的に調べつくされた時代はないが、
その数年前はどうかというと、ほとんど何も知られていないに等しいとコメントしている。

事実だけを淡々と述べれば、ポル・ポトよりキッシンジャーのほうが人を殺している。
ところが、前者は前代未聞の独裁者として記憶され、後者は平和への貢献者として称えられる。

なんともはや凄まじい話だが、昨今のシリアや列強の空爆に対する意見や世論はまさにこれで、
右翼も左翼もアサド政権やダーイシュ(ISIS)が如何に悪かということを強調した上で、
仏軍の暴力行使を強く求め、懐柔できそうな武装組織を支援し、侵攻にゴーサインを送っているが、
その実、自分たちがこれまで何をしてきたのか、しようとしているのかについて語ろうともしない。

しかも、この態度は誰かに強要されてとられたものではなく、
民主主義国家の中で自発的に共通善として示されたものなのである。

このように民主的に承認され、推進され、歯止めが利かなくなった暴力が現地に何をもたらすか。
言うまでもない。


英仏の欺瞞に満ちたシリア空爆 (対テロ作戦の真のねらい)

2015-12-07 00:11:52 | 中東
イスラム国(IS、ダーイシュ)を支援していた国として
アメリカ、イギリス、フランス、イスラエル、トルコ、サウジアラビア等が挙げられるが、
先のパリのテロ事件を口実に、この内の半数以上がシリアへの空爆を強化し始めた。

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英国は、シリアにおけるテロ集団ダーイシュ(IS、イスラム国)への攻撃を強化する意向だ。

英国のマイケル・フェロン国防相は、ダーイシュ(IS)に対する攻撃作戦を展開中の空軍機が
離発着するキプロス領内にある「アクロティリ」英空軍基地を訪問し、次のように述べた。

「我々は、ダーイシュ(IS)への攻撃をさらに強める。
 英国政府は、テロリストらの司令本部や彼らの資金源に対する軍事攻撃を求めている。」

2日夜遅く、英国議会は、シリアにおける軍事作戦への自国の参加を承認した。
これを受けて2日から3日にかけての深夜、ダーイシュの陣地への初の攻撃が実施され、
3日から4日にかけての深夜も、作戦は続けられた。

英国防省は、標的となるのは、シリア東部の油田地帯の施設だと伝えた。
なおイラク領内のダーイシュの陣地に対する作戦は、国際有志連合の枠内で2014年から行われている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/middle_east/20151205/1276136.html#ixzz3tYJyoQOU

シオニスト政権イスラエル軍の戦闘機が、シリア南部のダマスカス郊外をミサイルで攻撃しました。

パレスチナのゴッツ通信によりますと、
イスラエル軍の戦闘機は、4日金曜、数台のトラックを攻撃しました。
イスラエル当局は、これらのトラックは武器を運んでいたと主張しています。

シオニスト政権の戦闘機は、
これまで何度も、さまざまな口実を用いては、シリア領土を空爆しています。


これ以前に情報筋は、シオニスト政権が、
シリアのテロ組織ISISやヌスラ戦線に武器や資金を提供していることを明らかにしています。

http://japanese.irib.ir/iraq/item/60366
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以前から指摘していることだが、シリア政府はこの空爆を許可していないし、
そもそも、これら国家はシリアに無断で爆弾を落とし、場合によっては誤爆もしている。

当然、国内でも反対の声は大きい。
例えばイギリスでは国民の約半数(3000万人)が空爆に反対している。

英国のキャメロン首相は空爆に反対する人々を「テロリズムの味方」と規定した。
彼の理屈では、3000万の市民がテロリストの支援者ということになる。

だが、忘れてもらっては困るが、そもそもテロリストを経済的軍事的に支援してきたのは
米英仏・列強侵略トリオおよびイスラエル・トルコ・サウジの中東侵略トリオだ。

イランラジオのキャラミー解説員は次のように語る。


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ISISによるパリ同時多発テロの後、
 まずはフランス、それに続いてイギリスとドイツがシリアでのISISとの戦いに入りました。

 ~中略~

イギリスとフランスは、
シリアのISISに対する空爆を自国の安全を保障するものとみなしている中で、
この5年間、テロの危険の拡大とこれらの国でのテロリストの活動を事実上黙認していました。


イギリス、フランス、ドイツは、シリアとイラクの
ISISの拠点に対する空爆によりアメリカの対テロ連合の作戦に参加していますが、
この連合は基本的に、2014年12月の結成時から多くの曖昧な点を含んでいます。
 
この連合のこれまでの行動は、ISISの弱体化や消滅の助けにはなっていません。

シリアやイラクのISISの拠点に対するアメリカ率いる連合の偏った攻撃、
対ISIS作戦の一方でのこのグループへの支援は、この連合の存在を見せかけのものにしています。

アメリカの対ISIS連合の失敗の経験に注目すると、
イギリスとフランスのシリア空爆への参加が実を結ぶことはないでしょう。
 
なぜなら、この攻撃は、
シリアのアサド合法政権との調整によって行われていないからです。


シリア領空でのイギリスとフランスの利己的な動きが、イギリス国防大臣の言うように、
イギリスやヨーロッパの他の国々の街中を安全にすることはないでしょう。

なぜなら、アメリカの対ISIS連合の存在にも拘わらず
パリの街頭がISISの攻撃に晒されたからです。


テロとの実際の戦いは、シリアの現政権と軍隊との協力にかかっています。

ロシアとイランによるテロとの戦いでのアサド政権への協力は、
この悪しき現象との闘争の真の戦線を示しており、
シリア各地へのISISの影響力を弱めることにつながっています。
(http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/60420)
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シリアのアサド大統領は、
大統領はイギリスとフランスのシリア空爆は違法で無意味なものだとし、
「イギリスとフランスは、シリアのテロリスト支援の筆頭にいる」と述べた。

実際、英仏は武装組織への支援を止めていない。
これについてモスクワ国際関係大学のアンドレイ・イワノフ氏は次のように説明する。


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ところでここ数日、ダーイシュの石油インフラへの爆撃に英仏が加わった。

英仏の動機は異なる。
オランド仏大統領はテロリストらに
先日のパリへの攻撃の見せしめを行う断固とした姿勢を示そうとしている。


キャメロン英首相にはダーイシュに対する勝利者のひとりとなり、
シリアの将来を決める権利を得たいという目論見がある。


キャメロン氏はオバマ氏と同様、シリアの将来をアサド氏抜きで描いており、
米国と同じように現シリア政権に反対して戦う他の武装集団をテロリストとして認識することも、
これに攻撃を行うことも拒否している。



それだけではない。
反アサド派にアサド体制転覆を、またはシリア領土の一部を強奪するのを幇助するため、
米英はどうやら今、NATOの陸上部隊をシリア領内に送り込むことをたくらんでいるらしい


言い方を変えると、
テロリストらには西側が嫌うアサド氏をどかすことが出来なかったため、
西側のテロリスト庇護者らは今度は自ら乗り出して国家テロを起こそうとしている
ことになる。

テロを相手にした戦争に加わるにあたり、
日本が絶対に理解しておかねばならないのは、このゲームの非常におかしなルールだ。

テロリストと認証されるのは
欧米や他の「文明国」に攻撃を仕掛けた人間だけであり、
シリア、ロシア、中国にテロ攻撃を行う者らは
自由や民主主義を勝ち取ろうと立ち上がった「文明人」と見なされる。


問題なのはこうした「戦士(文明人)」らは
よくコントロール下から外れてしまい、欧米の一般市民を殺害しはじめるということだ。


もし日本がテロリストを「悪者」と「善玉」に仕分けるとすれば、
日本も裏切り者らの標的になりかねない。こうした裏切り者は
西側から資金と援助を喜んで受け取りながらも、やはり西側の文明、
これに日本も相当するのだが、これを敵ととらえ、勝利を手にするまで戦うべしと考えている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20151205/1275551.html#ixzz3tYQTcpzA
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イワノフ氏は「コントロール下から外れてしまい」と述べているが、
私はイスラム国といっても一枚岩ではなく、列強が同組織の派閥抗争を利用して、
親NATO派を支援しながら反NATO派の拠点を攻撃しているのではないか
と考えている。

実際、これまで歴史的に列強諸国家は、
自分たちに従う「レジスタンス」を利用して邪魔になりそうな「ゲリラ」を潰してきた。

典型的なのがインドネシアの事例で、スカルノ政権を転覆したスハルトは
アメリカのお気に入りだったが、彼が真っ先に着手したのが国内の共産党党員の虐殺だった。

コンゴではアメリカとベルギーは、後に「アフリカ最凶の独裁者」と呼ばれるモブツを支援し、
当時国民に人気のあったルムンバを暗殺、政権を掌握した。
モブツはこの功績を称えられ、ケネディから功労勲章を得ている

モブツはルムンバと同じ組織に所属する人間だった。
スターリンとトロツキーのそれが典型的だが、組織である以上、派閥の抗争は避けられない。
歴史的に列強は常にグループ内の対立を煽り、巧みに利用して自己の支配を拡大させてきた。

ISISは巨大な組織で、シリア、イラク、アフガン、トルコと広範囲で活動している。
当然、派閥はあるはずで、今回の英仏の空爆もまた、ISIS組織内の反米、反仏派を一掃し、
自分たちの言うことだけを聞く人間に実権を握らせようとしているのではないだろうか?

無論、これは推論にすぎないのだが、パリの事件以前に、
ヌスラ戦線へのロシア軍の空爆を「穏健派の攻撃だ」と非難する一方で、
アフガンのタリバンを「反政府組織」と称して撲滅に励んでいた様子を見ると、
同じアルカイダ系でも敵と味方をその時々の都合で区別している気がする。

実際、彼らが攻撃しようとしている組織は、
ISIL→ISIS→IS→ダーイシュと日本維新の党並みに次々に分裂・統合・改名しており、
ダーイシュを攻撃することはダーイシュと敵対する過激派の援護へとつながるのである。

列強に逆らわないテロリストを支援し、体制を転覆させ、自国に有利な軍事・経済協定を結ぶ。
19世紀から続く列強の帝国主義は健在だ。グルジアやウクライナの教訓を私たちは忘れてはならない。

留意すべき事実は、こういう狡猾で残忍なゲームの仕掛け人が民主主義国家だということ
民主主義は完全無欠の政治システムではない。そのことを忘れ、善悪二元論で他国を貶め、
独善的な態度で非西欧型国家を攻撃しつづける姿勢は断じて許すわけにはいかない。

ロンドンでイスラム教徒への暴力が激増中

2015-12-03 00:29:49 | 中東
イギリスの首都ロンドンで、イスラム教徒に対する暴力が増加しています。

イルナー通信によりますと、ロンドンの警察は30日月曜、報告の中で、
この一年の間にイギリスの首都ロンドンでの
イスラム教徒に対する犯罪や暴力が47%増加した
としました。

この報告はさらに、
昨年10月から今年の10月にかけて、845件の犯罪が報告されたが、
 その前の年の同じ期間の統計は576件だった
」としています。

さらに、
フランスの首都パリで起こった同時テロにより、
 こうした暴力が増加している
としました。

これについて、イギリスのイスラム教徒の権利擁護団体・テル・ママは、最近、報告の中で、
「フランスのテロ以来、イギリスではイスラム教徒に対する犯罪や暴力が300%増加した」としています。
さらに、「この暴力の最大の犠牲者は、イスラム的な装いを身につけた女性たちだ」と報告しました。

11月13日にパリで起こった同時テロで、少なくとも132人が死亡、352人が負傷しました。
テロ組織ISISがこれらのテロ攻撃の犯行を認めています。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/60267-

ヨーロッパには歴史的にイスラム文化に対する偏見が存在する。
ムスリムに対する差別を「イスラモフォビア」、ロシアに対するそれを「ルソフォビア」と呼ぶ。

この二つは未だに欧米社会に根強く残っているが、それらが
ここ最近の国際情勢の影響を受けて、ますます激しくなっているといった印象を受ける。

フランスの港町、カレーでは難民キャンプが放火されたそうだ。
どこの国にも極右がいるという好例だが、フランスのそれは他国よりも激しく感じる。

住処を焼かれた難民にとって、これはテロ行為以外の何物でもないのだが、
こういう事件を好意的に受け入れるネトウヨ(及び極右系まとめサイト)って凄すぎる。
(「難民キャンプ フランス カレー 放火」と検索をかければ、ヒットする。正直、紹介したくないのでURLは貼らない)

なぜトルコはロシア軍機を攻撃したのか?

2015-12-01 00:19:17 | 中東
トルコ軍によるロシア戦闘機撃墜事件。同事件をきっかけに露土関係は急速に冷え込んだ。

トルコ側はロシアが領空侵犯をしており、
10度にわたる警告に応じなかったために攻撃したと語っている。

ところが、後の調査で領空をロシア戦闘機が通過した時間はわずか17秒だったことが判明した。
つまり、17秒の間にトルコ軍は10回も警告を発したことになる。これは明らかにウソだろう。

トルコが攻撃した背景として、ロシアやイランではトルコのIS(ISIS)支援を挙げている。
確かに、トルコはサウジアラビア、アメリカ、イスラエルと並び、ISを支援している国家だ。

シリア国内でIS兵として戦う外国人傭兵の大多数はトルコ領内から入っている。
トルコ政権の黙認なしに、これだけ多数の武装戦闘員が国境を越えられはしない。

また、IS戦闘員の武器はトルコ領を通って供給されており、
トルコ政府自体がシリア産石油を現在進行形で奪取し続けており。
その石油はすべてトルコのエルドガン大統領の息子の所有する企業に供給されている。

そして、ここが肝心な点だが、トルコは、ロシアがISが所有する、
石油を積んだトラック500台以上を破壊した途端に態度を激変させた。


このような状況からトルコの攻撃的な姿勢がロシアのIS攻撃に起因すると考えるのは自然だ。
また、フリー・ジャーナリストの田中宇氏はIS以外の過激派への攻撃も原因の一つとみなす。

田中宇氏:トルコの露軍機撃墜の背景

だが、私はこれとは別の理由がある気がしてならない。

ISにせよヌスラ戦線にせよ、ロシア軍が攻撃する過激派は所詮はトルコ国民ではない。
確かに民族的な繋がりはあるかもしれないが、現在、トルコはロシアと共に
天然ガスをロシアから供給するためのパイプラインを建造している最中であり、
経済的にロシアの存在が無視できないこのタイミングで、
わざわざ他国のテロリストのためにロシアと険悪な仲になる挑発をするだけの義理がない。

つまり、ロシアと敵対してなお得られる何らかのメリットがない以上、
ここまで強硬な態度をいきなり取る理由が見つからないのである。


では、そのメリットは何かと言う話になるが、
ここで考慮すべきなのが、もともとトルコがNATOの所属国であることだ。

ここで前述の田中氏の評論を引用しよう。

「トルコはNATO加盟国だ。NATOは、加盟国の一つが敵と戦争になった場合、
 すべての同盟国がその敵と戦うことを規約の5条で義務づけている。

 そもそもNATOはロシア(ソ連)を敵として作られた組織だ。
 戦闘機を撃墜されたロシアがトルコに反撃して露土戦争が再発したら、
 米国を筆頭とするNATO諸国は、トルコに味方してロシアと戦わねばならない。
 これこそ第3次世界大戦であり、露軍機の撃墜が大戦の開始を意味すると重大視する分析も出ている。
 ロシアとNATO加盟国の交戦は60年ぶりだ。

 ここ数年、米欧日などのマスコミや政府は、ロシア敵視のプロパガンダを強めている。
 NATO加盟国のトルコの当局は、ロシアと対決したら世界が
 自国の味方をしてくれると考えているだろう。だが、私の見立てでは、
 世界はトルコに味方しにくくなっている。今回の露土対立は、世界大戦に発展しにくい。」

田中氏はフランスもIS掃討に本腰を入れるようになったこの状況で、
国際社会がトルコを支持するのは考えづらいと述べている。

NATOとの関わりに注目する点までは私も田中氏と同じだが、同氏の見解では
なぜフランスとロシアが協力してIS掃討に乗り出したこの時期に攻撃を?
という問いに上手く答えられないような気がする。
ロシアがISを攻撃し始めたのは大分前だから、仮に攻撃するならもっと前に行ったはずだ。

ここで気にすべきことが、
フランスやアメリカがロシアと協調しなければならなくなった時期と
トルコが両国に代わってロシアを非難し始めた時期が一致する
という事実だ。


つまり、パイプラインの建設を犠牲にするだけの意味がある何らかの利益を受けることを条件に、
トルコがロシアの空爆を非難する役目を米仏から引き継いだのではないだろうか
と思う。

実際、ウクライナではパイプラインの建設は中止になったが、
その代わり、キエフ政権はアメリカを中心に経済的軍事的支援を得ることが出来た。

ウクライナもトルコもNATOの従属国であることを踏まえれば、
米仏が表面的には協力しながらロシアを攻撃するためにトルコを利用するのは十分有り得る。

以上、状況証拠からトルコの攻撃の背景を推測したが、
今後、仮に米仏が何らかの支援をトルコに行ったりすれば、この読みは当たりとなるだろう。
(逆に米仏がロシアに味方してトルコを非難すれば外れたことになる)


最後に、本記事とは無関係の内容だが、今回の田中氏の記事、
実は、スプートニクの徳山あすか記者が同氏のホームページから
そのまま転載したものらしいのだが、それって記者としてどうなのだろう?

完全にボランティアであり、取材費も時間もない個人が非営利目的で行うなら理解できる。
しかし、仮にもプロの新聞記者がネットの記事をそのまま引用って……手抜きすぎだろう。

この徳山記者は前から単なるインタビュー記事を、
それも日本の保守系知識人からインタビューしたものを編集して掲載するだけの
アルバイトでも出来そうなことばっかりしていて、記者としては3流だと思っていたが……

実際、リテラの梶田陽介記者と比べると、梶田記者が関連図書を読み、
きちんと基本を学んだ上で取材を行い、記事にしていることは容易に想像できる。

自民党が持ち出した「共謀罪」の危険すぎる中身!
テロ対策は嘘、トイレ落書き計画リツイートするだけで逮捕も


これなどを読むと、取材相手の言葉だけでなく、
地の文でも(つまり梶田記者自身が)共謀罪について解説を行っているのだが、
徳山記者の場合、取材相手の言葉だけで説明されており、
テープの内容をそのまま文章にしただけだということがすぐにわかる。

元産経の記者らしいリュドミラ・サーキャン氏もそうだが、
スプートニク紙には、なぜか右派の人物も混じっており、
それは中立的といえばそうだが、日本とは別視点の解説を行うという
このメディアの最大の特徴を台無しにしているような気もする。

フランス軍、イラクの小学校を空爆

2015-11-26 22:13:55 | 中東
フランス軍の戦闘機が、イラク北部モスルの東部にある小学校を空爆し、生徒28人が死亡しました。

ドイツのDPA通信が、イラク軍の将校の話として伝えたところによりますと、
フランス軍の戦闘機は、25日水曜、モスル東部の小学校を爆撃し、
これにより、生徒28人が死亡、5人が負傷しました。

テロ組織ISISが犯行を認めたパリでの同時テロの後、
フランスは、イラクとシリアにあるISISの拠点への空爆を拡大しました。

フランス国防省の発表によりますと、フランスの戦闘機は、24日火曜、
モスルの西45キロの場所にあるISISの訓練キャンプと司令部を爆撃しました。

フランスとその同盟国は、
シリア、さらに国連の許可すら得ずに、
シリアのISISに対して空爆を行っています。


(http://japanese.irib.ir/iraq/item/60114-%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E8%BB%8D%E3%81%AE%E7%A9%BA%E7%88%86%E3%81%A7%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%
AF%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%AD%90%E4%BE%9B%E6%95%B0%E5%8D%81%E4%BA%BA%E3%81%8C%E6%AD%BB%E4%BA%A1)



案の定である。

世間では、ロシア軍とトルコ軍のいざこざが注目されているが、
見えないところで、フランス軍は罪のない子どもを殺している。


ロシア軍、トルコの救援車列を空爆か

↑ロイター通信の記事、よく読むとロシア軍が空爆した証拠はないらしい。
 情報源はトルコの過激派と「人権団体」。

もちろん、ロシア軍がやっていない証拠もないのだが、
このような不確かな情報がすぐさま報道される一方で仏軍の小学校爆撃は取り上げられない。

看過されるサウジアラビアのジェノサイド

2015-11-26 21:54:56 | 中東
サウジアラビアのジェノサイドが終わらない。

イエメンの国営サバ通信によると、24日火曜、サウジ軍の戦闘機がジャウフ州の住宅地を攻撃し、
落下地点にあった家屋に住む一家(10人)が全員死亡した。同時刻、サウジ軍はサヌア州でも空爆。
前日には、イエメン北西部のハッジャ州のラジオ局を攻撃した。

イランラジオによれば、11月24日時点で、サウジと同盟国の攻撃で、
一般市民数千人が死傷、数万人が難民となり、医療等の重要施設の80%が破壊されている。


これは、どこかに潜伏しているテロが行ったものではない。
サウジアラビアという国家の軍隊が堂々と行っていることだ。


フランスのテロ事件はあれほど大々的に報道されたのに、
なぜ、サウジアラビアのジェノサイドはこうまで無視されるのだろう?

私の知る限り、きちんと特集を組んで報道したのはイランラジオとスプートニクのみ。
まぁ、探せばロシア・トゥデイやシリアタイムスあたりも書いていそうだが、
少なくとも日本の主要新聞では、そんなことは起きていないかのようにスルーされている。

イエメンに住む人間は何人死のうがどうでもいいかのようだ。

こういう事態に対して、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、
さすがに少しは取り上げているのだが、いわゆる喧嘩両成敗手法を用いており、
よく読むとサウジの虐殺は直接書かれず、国内の武装組織の非難に集中している。

アムネスティは、きちんと調査を行っていると書いているが、
調査をしているのであれば、どうしてサウジの連日の空爆に無頓着なのだろう?

例えば、イランラジオはサウジの空爆でインフラが破壊されたことに触れているが、
アムネスティの場合、「紛争によって」破壊されたと書いている。

主語がぼかされている。

イエメン:サウジアラビアらがクラスター爆弾を使用か

上の記事も一件、サウジを非難しているように思われる。
しかし、冷静に考えれば、冒頭に挙げた事件のように、サウジは今も空爆を続けており、
クラスター爆弾を使おうと使うまいと、現地で人は殺されている。

空爆ではなく、クラスター爆弾使用を責めているこの記事は、
あたかも、ある殺人事件の裁判で、殺人そのものではなく、
凶器が非合法のナイフだったことに検察側が憤っているようなものだ。

仮にクラスター爆弾でなければアムネスティはどう動いたのだろうか?
どういう爆弾を使ったかではなく、数ヶ月以上に続く空爆そのものを非難して欲しい。

この一見、サウジの空爆に触れているようで、実のところ、それほど触れていなかったり、
敵対勢力も同時に非難することで相対的に同国の責任を軽減する手法。どうなのだろう?

韓国でもパククネ政権が警察を動員させてデモ参加者に放水・催涙液を発射し、
29人が負傷、26人が連行され、デモを扇動したとの疑いで国内の労組の家宅捜索が強行された。

話によると、この13万人が参加したデモでは民衆による暴力もまたあったらしく、
パク政権や政府よりの新聞は、これを理由にパク政権の弾圧を看過している。

アムネスティの「どっちもどっち」の姿勢もまた、それと同じ匂いを感じる。
被害側を加害側と同列に置くことで、加害者の行動を事実上、認可している。
事実、ここ8ヶ月におけるイエメンに関する記事は、わずか4~5件のみ。

一言、二言ふれて「いけませんよー」と言うぐらいなら誰でも出来る。
左翼や人権団体に求められているのは、もっと強いNoの意思だろう。

アムネスティばかり責めてしまったが、実際はどこも似たり寄ったりだ。
知ったところでどうにもならないことも確かにあるし、
調べようとしても限界があり、どうしても非英語圏の話には疎くなるものだが、
イエメンへの侵攻はわりと簡単に手に入れられる情報。無視して良いはずがない。
仮にも人権や平和というものを尊重しているのなら、一言ぐらいは触れてもいいはずだ。

靖国神社の爆発事件はテロの仕業じゃない(たぶん)

2015-11-24 23:47:27 | 中東
「たぶん」の話だと思って読んで欲しい。

昨日の靖国神社で起きた爆発事件に関して、
すでにテロの犯行と半分認めた報道が行われている。

まぁ、それ自体は別にそこまで問題視してはいないし、
なかでもアンドレイ・イワノフ氏の論考は中々興味深い内容である。


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エネルギー価格について言えば、その下落は
米国がシェールガスや石油に切り替えようとしたことだけが原因で生じたのではない。
その試みはあとで不成功におわったのだが。

石油価格の下落は「IS(イスラム国)」がシリア、イラクの石油採掘施設のかなりの部分を強奪し、
石油を1バレル5~10ドルとほぼ投売り価格で売りはじめておこった。


ISの石油購入国リストにはトルコ以外にEU、米国、日本も入っているという証拠がある。

これが本当であれば、米国主導の反IS連合軍が1年もの間ISの掌握した領域を空爆しておきながら、
テロ組織の主たる資金源となっている石油採掘インフラを破壊しようともしなかったわけがわかる。
これはつまり、EUも米国も日本も、事実上ISに資金を提供していたことに等しい。

これによって米国、EU、日本が受け取ってきた利益のは安価な石油にはとどまらない。

20世紀前半、欧米はオーストリア、チェコスロバキアの占領や
ユダヤ人の虐殺には目を塞ぎ、ナチスドイツを止めようとはしなかった。
なぜならナチスドイツを利用し、共産主義のソ連と戦わせようと期待をかけたからだ。

そして今、西側はどうやら強力になったISを利用し、
自分らにとってのライバルや敵と捉えるロシアと中国と闘わせようと期待していたらしい。

だからこそ、ISやその仲間組織のテロリストが
中東や北アフリカで一般市民を殺害することには目をつぶってきたのだ。

だがそれは失敗した。テロリストらはパリで自分たちの存在を見せ付けた。

彼らがそこで殺したのはアラブ人でもロシア人でもない。白人だった。
これでやっと西側も事態のおぞましさを完全に意識し始めたかのようだ。

繰り返すが、西側がこの陰惨さを意識するにはパリの大量虐殺を待たねばならなかった。
だが安価な石油の購入はやめたわけではない。この互恵的でモラルに反するビジネスを
ロシアの爆弾や巡航ミサイルが停めることができるのではないかという期待はある。

だが、視力を取り戻し、テロへの支援を完全に打ち切るために
どうしてもあれほどの流血のテロを経験せねばならないのだろうか? 
靖国神社の公衆便所を少し爆破するくらいではわからないのだろうか?

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20151124/1212162.html#ixzz3sQACfgcd

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ISISが売る石油を日本が買っていた・・・

証拠があると書かれているだけだが、仮に事実だとすれば、これは凄まじい矛盾。
国会議事堂の前で「戦争はんたーい」と叫ぶよりもISの石油を買うなと訴えたほうが効果があるのでは?

まぁ、それはともかく、今回の事件、
非常にグレーではあるが、テロリストの仕業ではないというのが私の見解だ。

理由は
①被害が少なすぎる、②個人の犯行、③犯行声明がない の3点が挙げられる。

テロというのは、デモと同様の示威行為であるから、声明を送るのは必須であり、
また、ISISは言うまでもなく、テロとは組織的な犯罪であり、個人が魔がさして行うものではない。

今回の犯行では、少し穴が開いた程度だが、予め訓練を受けた人間の仕業ならば、
少なくとも公衆トイレは半壊するか小火が起きるくらいのことがなければ、少し不自然だ。

ついでに言えば、去年の12月に靖国神社が右翼に放火される事件が起きたが、
これもまた素人の犯行で、大した被害にならず、犯行動機も「英霊になりたかった」という
とても個人的なものだった(あまりに意味不明なので右翼のふりをした左翼説も浮上した)。

つまり、被害が少なく、組織的な犯行ではない以上、
理由は不明だが、個人が突発的に行ったものではないかと思われる。

一番、ありそうなのがテロに便乗した愉快犯の犯行。

犯行動機は後から何とでも言えるわけだし、犯行声明を出さないのも、
テレビやネットの反応を見るだけで満足しているからではないだろうか?


とか言っておきながら、思いっきりISISの関係者だったら、とても恥ずかしい。

パリのテロとイエメンの空爆(監視が強まる欧米、空爆される中東)

2015-11-24 23:40:09 | 中東
パリのテロ事件を利用して、各国がここぞとばかりに社会の監視化を進めている。
その余波で、テロとは無関係の人物が被害を受けるアクシデントも発生した。

アラビア語話した2人を一時搭乗拒否、パリ襲撃で不安広がる

韓国で、ISISの関与が疑われる10名の人物が逮捕

自民党が持ち出した「共謀罪」の危険すぎる中身!
テロ対策は嘘、トイレ落書き計画リツイートするだけで逮捕も


共謀罪、盗聴法、マイナンバーのセットで「監視社会」実現、
憲法に緊急事態条項…安倍政権はヒトラーと同じだ


韓国ではISISの構成員あるいは関係者と思われる人物を逮捕したとのことだが、
逮捕したのがあの国家情報院(国情院)である時点で、身構えてしまう。

この国情院は、証拠を捏造して韓国の野党政治家を逮捕するわ、
大統領選の時に、パク・クネのライバルの誹謗中傷を5万件もツィッターに書きこむわ、
実際は生きている北朝鮮の高官が粛清されたと発表するわとウソばっかりつくプロパガンダ機関で、
その前身にあたるKCIAは、軍事政権時代に多くの市民を逮捕・拷問にかけていたところである。
(ちなみに最大の盟友であるパク・チョンヒもKCIAの人間に殺害されている)

本当にISISの関係者が逮捕されたかどうかは、すこぶる怪しいものだ。

リテラの記事(梶田陽介氏が執筆)は共謀罪について大変わかりやすく書いている。
個人的には、リテラの記事がなかなか良いのは、ライターの梶田氏の貢献が大きいと感じる。
それだけ、彼の記事は結構読ませる内容になっている。

ただ、個人的には「安倍政権はヒトラーと同じ」というフレーズは少し違うと思う。
むしろ、彼の目指す監視社会は、現代アメリカのそれを模倣したものだろう。


監視と密告のアメリカ(成甲書房、2004年)
(本書の一部はGoogleBookから立ち読みすることが可能)

絶版本だが、ここで語られている内容は今の安倍政権が目指しているものと同じだ。
例えば、8~10ページで書かれている(ここから読める)ように、
アメリカの愛国者法ではデモをするだけでも法的には逮捕することができる。
国内テロを幇助したと疑われる者に対しても盗聴・逮捕・起訴する力が与えられ、
場合によっては、宿泊されただけでもテロの一味として捕まる恐れがある。
これなどは、まさに今、安倍政権が成立させたがっている共謀罪に関する法案と同じものだ。
これだけベッタベタの親米政権が現代アメリカ社会を理想のビジョンにしないわけがない。

では、これだけ監視下に置かれているアメリカで事件がないかといえば、そんなことはない
最近はあまり報道されないが、依然、黒人が警官から暴行を受ける事件は絶えないし、
国家安全保障センター(ニューヨーク州フォーダム大学所属)が最近実施した調査によれば、
ISISとの関係を疑われ逮捕された68人の容疑者の中、外国人はわずか3人だったことが判明している。

つまり、テロ容疑者の9割がアメリカ人だったのである。
シリア人は1人もいなかった。このことは何を意味するのか?


アメリカの政治評論家、ドン・デバール氏は、
「シリアで戦い、アメリカで逮捕されたISISのメンバーの多くが、
 この国の市民であることを否定したり、それに驚いたりすべきではない」

「アメリカは、この国にテログループを作り、戦いのために他国に派遣している
 彼らが祖国に帰るのは明らかだ」とコメントしている。


もともとテロリズムという言葉は「国家が民衆に対して行う暴力」を意味したのだが、
いつのまにか私たちは、この意味を逆転させて「個人が国家に対して行うもの」と覚えている。


実際には、ある国(シリア)と敵対する国家(アメリカ、サウジアラビア、イスラエル等)が
さる集団を訓練して、抵抗勢力と称して現地に送り込んでいる。中身は変わっていないのだ。


他方で、パリのテロがここまで騒がれながら、
イエメン国民に対するサウジアラビア軍の空爆は
国際的に、全くと言っていいほど問題にされていない。


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「イエメン人の漁民に対するサウジ軍の再三の空爆は残忍」


イエメンの法律センターが、同国の漁民に対する
サウジアラビア軍の戦闘機による再三の空爆は残忍であるとしました。


イエメンのサバー通信によりますと、イエメンの法律センターは
22日日曜、声明を発表し、イエメン人の漁民に対するサウジアラビアの空爆を非難し、
イエメン西部フダイダ州に対する最近の攻撃で、多数の漁民が死傷した」と表明しています。

この声明ではまた、
「イエメン人の漁民に対するサウジとその同盟国による計画的な繰り返しの攻撃は残忍であり、
 人権に対する危険な侵害とされる」となっています。

このセンターはまた、
「攻撃の継続により、イエメン人の数千世帯の生活が危険にさらされている。
 沿岸地域の住民の生活手段は漁業のみであり、彼らはおよそ8ヶ月前から
 サウジとその同盟国に包囲されている」としました。

この声明によりますと、これまでにイエメンの沿岸部にある島に対する
サウジアラビアの空爆で、およそ150人のイエメン人の漁民が死亡しているということです。

イエメンの沿岸部の地域や、西部フダイダの魚市場などに対する
サウジアラビアの戦闘機の攻撃でも、数百人のイエメン人の漁民が死亡しています。

イエメン法律センターはさらに、国連と国際社会に対し、
サウジアラビアのイエメンへの攻撃と封鎖をやめさせるべく、この問題に介入するよう求めました。


イエメ各地に対するサウジアラビアとその同盟国の空爆は、今年の3月末から開始されており、
これまでに数千人の死傷者と、数万人の難民を生み出しています


http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/60022
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サウジの蛮行は決して国連に無視されているわけではないけれども、
それでも、日本の新聞社やテレビ局、雑誌社の報道姿勢は
まるでフランス人の命は尊いが、イエメン人は何人死のうが知ったことではないかのよう。


言いがかりだと疑うなら、上のような半年以上にわたって行われている
ジェノサイドについて、パリ事件と同レベルの扱いをしたメディアを教えて欲しい。

少なくとも左派系メディアとしては最もマシな部類であるはずのリテラでさえ、
そんな記事はなかった(国内ニュース中心のメディアだから仕方ないとも言えるが)。

右派は言うに及ばず。イエメンという国がないかのような風潮。
私が海外メディアに着目するのは、自国の立場から述べるという限界があるとしても、
日本では透明化されている惨事についてきちんと報道し、怒りを表明するからである。


私たちは自由に民主的に情報を取得しているが、
実のところ、それはあらかじめ非常に制限された情報であって、
日本と言う国の枠の中に閉じ込められていることを自覚しなければならない。
きちんと各国のメディアを通じて多角的に見ていかなければならない。

タクフィール主義という過激な宗教一派を擁し、テロを支援したのも、
イエメンで現地の住民に向けて爆弾を落としたのも、サウジアラビアだった。


なぜ前者、それも欧米人に対するテロはここまで騒がれたのに、
後者は遠い国のお話として済まされているのだろう?しかも空爆はまだ続いているのである。

今、強く抗議すべきなのは、報道すべきなのはむしろ後者だろう。

(また、ロシアの空爆もピンポイント爆撃と称しているが、
 検討が必要だろう。少なくとも私は民間人を巻き込んでいると考えている。)

人権と言う名の凶器 ~国連の対イラン・シリア人権非難決議~

2015-11-21 23:49:43 | 中東
9.11以降にアメリカが名指しした悪の枢軸国、
シリア・イラン・北朝鮮・リビア・キューバの5カ国のうち、
リビアはNATOの空爆とアルカイダの攻撃により文字通り消滅、混乱地帯と化し、
キューバは一応の国交回復に成功したが、未だに制裁は続き領土は返されていない。

そして、シリア・イラン・北朝鮮は
人権侵害をしている国家として国連で非難決議が取られている。

欧米のイスラモフォビアやルソフォビアは言うまでも泣く、
中東における武装組織への軍事支援、空爆は不問にされる一方で、
この3カ国だけ巨悪としてみなされるこの理不尽さ。凄まじいの一言だ。

それでも確かな情報に基づいた報告書ならいいのだが、
北朝鮮のそれについては、後で証言者の偽証が発覚してしまったし、
イランのそれにしたところで、現地の武装組織の言い分を根拠に作成されている。

メディアによく登場するイギリスのシリア人権監視団体も会員が一名のみで、
それも反体制派の人間という思いっきりプロパガンダな媒体だが、
なぜかテレビ局や新聞社は、信頼できる情報としてよく引用している。

こういう状況に対して、
イランラジオのモハンマディ解説員およびアミーンザーデ解説員は
それぞれ、以下のような評論を載せている。


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イランのデフガーニー国連次席大使が、イランの人権侵害を非難する国連の決議を、
イランに存在する事実のねじ曲げを目的とした政治的な行為だとしました。

カナダが提案したこの決議の採択後、デフガーニー国連次席大使は、
「これはイランの事実に反する政治的な決議であり、
 イランイスラム共和国を弱体化させるために調整されたものだ」と述べました。

さらに、
「この決議に関する採決は、イランと6カ国の核の合意が、
 さまざまな問題に関するイランと国際社会の協力の新たな展望を開いている中で行われた」
と述べました。この決議は19日木曜午後、賛成76、反対55、棄権68により、採択されました。


この決議の内容は、イランの人権問題を担当するアフマド・シャヒード国連特別報告者の
報告に基づいて調整されており、この報告者はこれまで一度もイランを訪れたことがなく、
自らの報告を常にモナーフェギンといったイランの反体制派テロ組織から提示された
情報に基づいて作成してきました。

カナダ、アメリカ、シオニスト政権イスラエルの賛成によって可決されたイラン人権非難決議では、
これまで同様、イランでの死刑の増加、表現の自由の侵害、少数派の権利の侵害が非難されています。

この決議がカナダによって提起された一方で、この国は人権侵害に関して、
市民の権利への侵害、移民、とくにカナダの原住民への権利侵害に関する分厚い調書を有しています。

このため、イランは何度となく、これらの決議の採択の目的は、
イランに圧力をかけ、西側での人権侵害から目をそらせることにあると表明してきました。


これにより、イラン非難決議において考慮されるべきことは、
イランにおける人権侵害の主張の証明です。


なぜならイランは他の国と同様、独自の法律や権利を有しており、
それはイランの慣例やイスラム法に基づいて調整されたもので、刑法などの必要性に注目し、
法的なアプローチに基づいて、常にこれに関して進展や状況の改善が行われているからです。

宗教や民族の多様性にもかかわらず、
これらの少数派の権利に関して、イランは、常にその保護に努めてきました。
地域諸国の中でもとくにイランでは、少数派にとっての安全や平穏が維持されています。

こうした中、思想の自由、出版物における表現の自由もまた、市民の重要な権利として、
重視されています
が、残念ながら、現在人権問題は、明らかに捻じ曲げられ、
西側の政治的な目的を推し進めるための手段になっています。

こうした方向で、イランでは裁判の過程をへて死刑判決が下されますが、
アフマド・シャヒード氏の報告で言われているように、
イランでの政治活動を理由に処刑された人は一人もおらず、
麻薬密売など国家の安全や社会の安全を乱した人物にのみ死刑が執行されています。


このため、イランはアフマド・シャヒード氏の行動を大きく疑問視しており、
この疑いは、実際の人権とは何か、現在世界の人権は
どのような状況にあるのかを再認識する必要性を生じさせているのです。

http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/59974
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国連総会の会議で、人権問題が一部の国によって悪用され続けている中、20日金曜、
国連総会の第3委員会で、シリアの人権状況を非難する非強制的な決議が採択されました。

サウジアラビアの代表は
この決議の草案を提示し、シリア危機の真の原因について触れることなく、
シリア政府にこの国の人々の殺害の責任があるとしました。

この政治的な決議ではさらに、
イランがシリアで行っている軍事的な役割に関しての主張が提示されました。
こうした中、イランはシリアで、軍事顧問としての役割を果たしているだけです。
この決議はイランの国連次席大使の反発を引き起こしました。

イランのデフガーニー国連次席大使は、これに関して、
シリアにおけるイランの存在は、シリア政府の公式な招待を受けたものだ。
 このため、このような決議の採択は、自国の領土における
 平和と安定の確立に向けた各国政府の権利と国際法規を侵害するものだ」としました。

デフガーニー次席大使は、国連のシリア非難決議をテロリストへの贈り物だとし、
「これらの主張の提示は、テロや過激派対策において
 影響力を行使している勢力に対する報復だ」と述べました。

サウジアラビアもまたアメリカやイスラエルと同様、
イランに対する根拠のない非難によって自らの目的を追求していることは間違いありません。

こうした中、人権問題はこの決議の内容に関して
一部の国の反発を引き起こすほど、政治的な問題になっているといえるでしょう。

EUの立場から、国連の委員会で発言していたルクセンブルクの代表は、
シリアにおけるイランの軍事顧問としての役割に関して挿入されたパラグラフに関して、
人権決議の政治化を控える必要性を強調しました。


またハンガリーの代表も、この決議に関する協議のやり方を批判し、
「イランに関する内容は政治的な目的を伴っている」と表明しました。

これに関する同様の発言が、日本やブラジルからも提示されました。

明らかなことは西側は現在、シリアで誤った費用を投じており、
サウジアラビアもこの問題に巻き込まれているということです。


サウジアラビア、カタール、トルコがテロを支援しているのは、誰の目にも明らかです。
サウジアラビアは現在、責任を取るべき事実に直面していますが、
自らの状況に関して回答するのではなく、他者を非難しています。


アメリカも世論を扇動し、テロ対策ではなく、テロへの自らの支援を隠蔽しています。

もし4年前にシリアのテロが真剣に捉えられ、
西側がテログループをより分けて、都合のいいグループを支援していなければ、
現在、テロリズムはこれほどまで拡大しなかったでしょう。

明らかにテロリズムはどんな形であれ非難されるべきです。
しかしながら、テロの指導者はテロを懸念しているように装い、
テロとテロの実行犯、支援者の境界を改ざん、おそらく消し去っています。

テロ対策を主張しているサウジアラビアは、
自ら、過激派、タクフィール主義のテロリストの流れの一部を構成しています。


このため、テロ対策を主張している裏で、真の姿を隠そうとしています。
世界はISISがサウジアラビアをはじめとする一部のアラブ諸国の資金や武器、
アメリカの支援によって生まれたことを知っています。

このことから、この決議は、国連人権機関の弱体化から生じたものであり、
こうした機関の悪用の機会をテロリストの真の支持者に与えているのです。


http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/59983-%E5%9B%BD
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日本も反対しているのがかなり意外。まぁそれはさておき、
あのサウジアラビアが人権非難ってどういうジョークだよと失笑してしまう。

学者も含めて欧米を未だに特別視していて、人権大国であるかのように考える人がいるが、
実際には、テロ組織に軍事支援するわ、国内でムスリム差別をするわ、
テロ抑止を理由に難民を排除しようとするわ、外国人にむけての監視体制を強めるわ、
極めツケに一国の元首をアルカイダと協力して殺害するといった凄まじい状態だ。

フランスのテロとベイルート(レバノンの都市)のテロとの扱いの差を見ても、
フランスのテロは悲嘆すべきものだがベイルートは別にそこまでではない
という考えが広く受け入れられていることに気づかされるのではないだろうか?

全ての国連機関を否定する気はないが、
この国連第三委員会は以前から大国の道具にされていて、
とてもじゃないが、公正あるいは公平な態度で臨んでいるとは思えない。

で、やはり気になるのはこういう「人権」や「民主主義」という言葉を
政府が他国の政治的経済的従属化の道具として利用している状況において、
いとも簡単に右翼とつるみながら一緒になって援護射撃をする反共左翼の存在。

フランスの状況は知らないが、日本の場合、一部の専門家を除いて、
こぞって左派系の知識人がリビアやシリア、北朝鮮の「人権侵害」を訴えている。

しかし、今、私たちが気にすべきなのはヒトラーやスターリンを悪役にすることで
チャーチルやトルーマンを善玉に変えた詐術であり、元・現共産主義国家を攻撃する一方で、
自国の軍事的経済的征服行為を不問にする先進国の独善的な行いである。

国連の人権非難というものには政治的な意図が隠されていて、
安易に便乗すると、逆に特定の国家の消滅に加担することになる。

その危険性は自覚しておいたほうが良いと思う。

パリ同時多発テロの謎

2015-11-21 23:28:55 | 中東
謎というほど大そうな指摘ではないが、気になるので一応。

今回のパリのテロ事件、ベルギー人のイスラム過激派が首謀者とされているのだが、
あくまでこれは容疑のレベルであり、本人が死亡している今、立証するのは難しい。

フランス政府がどういう根拠でそのベルギー人を首謀者と特定したのかもはっきりしない。
警察と応戦中に死亡したということは間違いなく、犯人グループの一人ではあるが、
実際のところ、彼らが誰の差し金で動いたかは、はっきりとしていない。

そもそも、シャルリエブドにせよ今回にせよ犯人は殺害されているので、
詳しい動機もわからない。フランスの空爆の復讐だとされているが、
別に本人が語ったことではなく、目撃者の証言によるものだ。

今回のテロの結果、フランスのシリアへの軍事干渉はますます強まった。
結果的に見れば、約300人の死傷者を犠牲にフランスの軍事侵攻の大義が出来たことになる。

それだけではない。外国人に対する監視体制がより強化されることになり、結果的に、
フランス及びEUの極右陣営の主張(参戦・軍拡・移民排斥)が全面に押し出される形になった。

このような状況を思えば、自演などの陰謀論とまではいかなくとも、
フランス当局がある時点で真実の究明(犯人の捕獲)よりも、ある時点で
自国を右傾化させるための口実として利用する方向へと路線を変えたことは考えられる。