時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

イルカ食は日本の文化ではない

2015-05-30 23:51:56 | ザ・コーブ
あえて挑戦的なタイトルにしたが、実際問題、
イルカを食べるのが日本の文化かと言うと、それはカッコつきじゃないかと思う。


根拠1 日本全体を見れば、イルカを捕らない(食わない)地域のほうが多い。

東北以北では、熊の手を食材にする地域が一部存在する。
だからといって、熊の手を食うのが日本の食文化と言われたらYesと答えるだろうか?

・・・という話。
「熊の手を食うために熊を殺すな」と言われて激昂する日本人がどれほどいるのかという話。


根拠2 外国にもイルカを食べる地域はある。

例えば、デンマークがそれである。
魚を食べるのが日本の文化と言われて「そうだ!」と答えるか?

・・・という話。


根拠3 文化を主張してもイルカ(クジラ)漁擁護にはならない。


根拠というよりは、文化を連呼しても言い訳にすらなりませんよという話。

リテラでもイルカ漁の記事があったが、リテラを含め日本の大抵のメディアは、
世界の反捕鯨団体は商業捕鯨に反対しているのであるという理解がない。

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しかし、いずれにしてもキャロラインさんには、
どうして日本人に対してだけ批判の目を向けるのですか、と言いたいのです。


鯨やイルカを獲るのは何も日本だけではなく、
今言ったデンマークやノルウェーやそれにアラスカのイヌイットたちも行っているではないですか?


米国政府が追い込み漁に反対するというのであれば、
何故自国民であるイヌイットたちの漁にも反対しないのか? どうしてなの、キャロラインさん!


日本人は文明人だけども、イヌイットたちは遅れた人々とでも考えているからなのでしょうか?

やっぱりどう考えても日本人に対する偏見があると言わざるを得ません。
それが本当のところでしょう。

http://blogos.com/article/78399/
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イヌイットがやっているのは生存捕鯨というもので、
ビジネスではなく、自分たちが食べるものとして捕る捕鯨である。

このタイプに関しては、国際捕鯨委員会も禁止していない。


つまり、真っ当な反捕鯨団体は伝統的な食文化を否定していない。


クジラ・イルカ(小型のハクジラの総称)を商業利用することに反対しているのである。

そう言われて今回の事件を振り返ってみても、
海外はイルカを水族館に売り飛ばすことに注意している。



実際、『ザ・コーヴ』でもイルカビジネスの闇として太地のそれを紹介している。

食品偽装や水銀の含有量の高さの指摘など、もしこれがイルカではなく豚や牛なら
通常の食品問題として提示されているものであることが容易に理解できるだろう。



よく聞く「牛や豚は良くてイルカは何で駄目なんだよー」という言い分も、
「牛や豚は養殖可能だが、イルカは不可能で希少な天然資源だから」と返されて終わる。


近年、ウナギを巡って漁獲量を減らすように働きかけがされているが、
別にウナギが可愛そうだから減らせと言っているわけではない。
養殖の技術が完全でないのに、取りすぎるから減らせと言っているのだ。


イルカもそれと同じで、「養殖できないから」「捕りすぎだから」が背景としてある。
(実際、かつて捕れていた場所で乱獲が原因で漁が不可能になったところがある)



このようにイルカ漁の問題とは経済的、産業的な問題として
大抵の海外の反対団体は扱っている。同情論で反対しているのは案外少ない。
(もちろん、個人的にイルカに愛情を寄せている人間は多いが)


この辺を全部すっ飛ばして「日本文化に対する毛唐の攻撃だ」と語る輩が多いが、
それは捕鯨擁護の理屈としては、全然成り立たないわけで、
「無償で給与しています。商売が目的ではありません」とか
「食品偽装はしていません。水銀の含有量もそんなにありません」と言わなければ
向こうにとっては、「お前は何を言っているんだ?」状態なんじゃないかと思う。


・追記(2015年5月31日00時39分)

もちろん、大きな区分としてはイルカを日本の伝統的な食材だと言っても
間違いではないと思う。ただ、上に述べた商業捕鯨や食品偽装の問題について
何も知らない輩が多いように感じたので、あえてこのようなタイトルにした。

イルカ追い込み漁について一言

2015-05-26 00:19:29 | ザ・コーブ
イルカ追い込み漁で捕獲されたイルカを水族館に売却してはならないようになった。

速報されたわりには、大事になっていないなと思っていたら、
2、3日が経過して、保守系メディアを中心に騒ぎが起きている。

間違いなく今後、池上彰がいつもの頓珍漢な解説をして大衆の思考力を奪うだろうが、
一言言えば、イルカ追い込み漁はイルカの捕獲がメインである事業で、
今回の措置はかなり苦しいものだったと思われる。


なにせ、イルカを生け捕りするだけで、1500ドルの大金が得られるのである。


現在、若くて傷を負っていないイルカは生け捕り以外に入手することができない。

しかも、一日に長距離を遊泳し、音に敏感なイルカが、狭い水槽に入れられ、
人間の歓声に囲まれながら芸を行うのだから、ストレスですぐに死んでしまう。

当然、需要は相当にあるわけだ。


イルカ・ビジネスはロー・コスト(沿岸漁業なので石油がかからない)、
ハイ・リターン(1頭1500ドル。傷つきは食肉として販売)のボロい商売なのである。




このイルカ・ビジネスを暴露したのが『ザ・コーヴ』だった。

追い込み漁の盗撮だけピック・アップされるが、実際には、
イルカ・ビジネスの構造と、食肉偽装(※)の解説に時間が取られている。


そもそも、イルカ調教師が行っている保護運動なのだから、
当然、水族館ビジネスに対する反対が活動のメインになっているのは馬鹿でもわかる。



それを理解せず、誇り高き日本人が的外れの批判をやっている間に、
国際社会は大きく動いていたというわけだ。



今回の措置は追い込み漁自体を規制するものではないので、強い批判ができない。
太地町をはじめとした「伝統」や「文化」を強調する連中を封じる上手い手だったと思う。
(水族館だけでなく動物園も巻き込んだのも良かった)


追い込み漁を隠れ蓑に世界の水族館にイルカを売りさばいてきた太地町。


皮肉にも、「伝統」や「文化」を前面に押し出し事業の倫理性を正当化したために、
彼らがもっともやりたかった事業が撤退に追い込まれてしまった。大失態である。


採算が取れなくなる可能性大である以上、
今後、追い込み漁自体も規模を縮小せざるを得ないだろう。






※イルカを鯨として販売している。イルカは小型ハクジラの通称だから、
 間違いではないが、それでも勘違いして買う客はそれなりにいるだろう。

ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その8

2015-02-24 00:31:06 | ザ・コーブ
今回の記事でとりあえず最後にしたいが、
『ザ・コーブ』に関して言えば、大変厳しい検閲がされていることが目につく。


例えば、映画ではイルカ肉がクジラ肉と表記して売られていること、
イルカ肉の中に含まれている水銀の濃度が濃いことが指摘されているが、
これはエンディングのほうで「諸説あります」との但し書きがされている。

他にも、特典には保守派で有名な御用学者のコメントがあって、
映画の内容を否定するような発言が多くされている。


これは『アンネの日記』の巻末に
ホロコースト否定論が記述されているようなものだ。



このように、映画の内容を逐一否定するコメントを付記しない限り、
DVDの発売すら危うかったという事情は、大いに問題があるのではないだろうか。


大体、この映画自体、ほとんどの映画館が「自粛」して
事実上、公開が禁じられたようなものであり、彼ら活動家が述べるように
国民がイルカビジネスの問題点や負の歴史を知る機会は著しく制限されている。


『ザ・コーブ』は単に生物保護運動の知識だけでなく、
 日本の学者や記者、役人が自発的にプロパガンダに協力していること、
 発売者側が相当、空気を読まない限り販売することすら出来ないことを
 露わにした、非常に重大な問題提起がされている作品なのである。


私は真の独裁とは国民の協力があって初めて成り立つものであり、
その独裁の度合いは途上国のそれよりも先進国のそれのほうが高いと思っている。


この映画にしても、反日映画とレッテルを貼って無視する視聴者が大半ではないだろうか?
そういうレビューが出回ることで、問題の本質がますます見えてこなくなってしまう。


これは捕鯨やイルカ漁に限らず、沖縄基地問題や歴史問題、
その他諸々の時事問題に通じることだ。

右翼を中心とした大衆が情報規制に自分から進んで参加している。
関東大震災の際には、有志が自警団を結成して、朝鮮人を殺しまわったが、
それと同じことが、今の日本では起きている。


つまり、真の独裁は民主的に行われる。


民主主義がー民主化がーと小うるさい連中もいるが、本当の問題は
真の民主主義は各人が相当な努力をして確かな知識と判断力をつけることで初めて成立する
という命題をすっ飛ばして話を進めることではないだろうか?


現代民主主義が真の民主主義とは程遠いことは感覚的にわかるはずだ。

この現代民主主義社会では大衆がプロパガンダを再生産することで、
権力者と結託しながら自らの手で自らの足を縛るような真似をする。

監視されるのではなく、監視しあう社会になっている。

都合の悪い意見や情報は禁止されることも時にあるが、それよりも重要なのは
全員によって無視と非難を行うことでそれら情報を歪め、無力化することにある。


『ザ・コーブ』を巡る言論状況をよく見てほしい。
 水族館ビジネスの問題を指摘した人間は何人いるだろうか?
 捕獲数が文字通りケタ違いに増えていることを指摘した人間は?
 政府が小国を買収している実態は?

 これら問題をガン無視して「日本人にむけた環境テロの文化破壊行動」という
 お決まりの言説がゲラ刷りされて目に入っているのが現状ではないだろうか?

『ザ・コーブ』は、そういう意味でも視聴をぜひ勧めたい映画だ。
 日本のメディアコントロールに関心がある方はぜひ観てほしい。

ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その7

2015-02-24 00:20:49 | ザ・コーブ
鯨類保護運動が水族館ビジネスへの反対運動であることが各識者からされていない。

以下の英文は『ザ・コーブ』を撮影した市民団体のホームページに掲載されたもので、
閲覧者に向けてのテイクアクション(各々ができる抵抗運動)について述べたものだが、
そこにはイルカショーのチケットを買わないようにとの呼びかけがされている。


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Take the Pledge Not to Buy a Ticket to a Dolphin Show
イルカショーのチケットを買わないよう誓ってください。

Dolphins have evolved over millions of years,
イルカは数100万年以上をかけて進化してきました。
adapting perfectly to life in the ocean.
海の生活に完全に適合してきたのです。
They are intelligent, social and self-aware,
イルカは賢く、社会的で自己認識ができます、
exhibiting evidence of a highly developed emotional sense.
高度に発展した感情があることを示す証拠があります。
Here are just a few of the issues with captivity:
これこそが監禁で問題が起きる原因になっているのです。

Captures of dolphins are traumatic and stressful
イルカを捕獲することでイルカはトラウマを植え付けられ、ストレスを感じ、
and can result in injury and death of dolphins.
結果として負傷したり死亡したりします。

The number of dolphins that die during capture operations
捕獲の最中あるいはその後まもなく死亡するイルカの数を
or shortly thereafter are never revealed in dolphinariums or
イルカ水族館やイルカと遊泳する企画を立てる者たちが公表することは決してありません。
swim-with-dolphins programs. Some facilities even claim their dolphins were
施設によっては自分たちはイルカを海から救助したのであり、
"rescued" from the ocean and cannot be released. This claim is almost invariably false.
現状では解放できないのだと主張する所さえあります。この主張はほぼいつも間違いです。

Training of dolphins is often deliberately misrepresented
しばしば、イルカの調教に関して間違った説明が、
by the captive dolphin industry to make it look
イルカを捕獲する産業によって故意に行われています。
as if dolphins perform because they like it. This isn't the case.
まるでイルカが演技が好きであるかのように説明しますが、それは間違いです。
They are performing because they have been deprived of food.
イルカが演技をするのは食べ物を取り上げられているからです。

Most captive dolphins are confined in minuscule tanks
大抵、捕らわれたイルカは小さな水槽の中に閉じ込められています。
containing chemically treated artificial seawater.
(その水槽は化学的に処理された人工の海水が注水されています)

Dolphins in a tank are severely restricted in using their highly developed sonar,
水槽の中にいるイルカは高度に発展したソナーを使う機会がかなり限定されていますが、
which is one of the most damaging aspects of captivity.
それはイルカを閉じ込めることでイルカにダメージを与える最も大きな一因になっています。

It is much like forcing a person to live in a hall of mirrors
それは、あたかも人間を無理やり鏡だらけのホールに閉じ込めて
for the rest of their life
残りの人生を生活させるようなものです。

(http://dolphinproject.org/take-action/dolphins-in-captivity)

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いつものように直訳ではなく、意訳だが、大体の意味は合っていると思う。



水族館ビジネスというのは、絶対に日本の文化ではないはずだ。

にも関わらず、農水省も生物学者もこの件については一切触れずに
日本人に対する環境テロリストの凶行だと説明する。


それは鯨類研究所が農水省の天下り先だとか、
研究費のほとんどが企業や政府からの援助金で賄われているとか、
そういうレベルを超えた一種のパラノイアを感じる。


もちろん、完全に自分の保身や経済的利益を考えて動いている人間もいるだろうが、
日本人がおかしな外国人に攻撃されていると思う人間も相当数いるのではないだろうか?


被害妄想に囚われた学者や記者がそれなりにいるような気がするのである。


そういう今だからこそ、彼らのホームページを見て、
とりあえず、どういう動機で活動しているのかを理解することが求められている。
そう私は思うのである。

ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その6

2015-02-23 00:39:32 | ザ・コーブ
『ザ・コーブ』は鯨類捕獲についての問題点を色々と指摘してくれる作品であり、
 それだけに各賞を受賞したのは納得のいくものだと思われる。


これについて、同作を非難する声を拾うと、
「日本が」「日本人が」「日本の文化が」とひたすらJapanを強調したものばかりで、
申し訳ないが、建設的な意見とは、とてもじゃないが思えない。


捕鯨についてあまり賛意していないはずの勝川俊雄教授まで
次のような見解を示している(以下、引用元は全てhttp://katukawa.com/?p=3667)。



かわいいイルカちゃんを殺す悪い奴らと闘う、僕ら正義の保護団体」というシンプルなメッセージ。
「悪い奴は明らか、問題も明らか。あとは実力行使でやめさせるだけ」、ということだ。

~中略~

エンターテイメントとしても、一級だ。

世界一のビルを上る男とか、ジオラマ作成専門家とか、
いろいろな特技を持った人間が協力してミッションを行うストーリーは単純明快でアメリカン。

悪者にされた日本人にしてみれば、かなり不愉快な映画であります。
この映画によって、日本人のイメージは確実に悪くなりますね。
The Coveの内容についてはこちらのサイトが詳しいです。

~引用終わり~
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ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その5

この映画で何が語られているのかは上の記事にまとめている。
より詳しい内容はカテゴリー「ザ・コーブ」をクリックしてほしい。


さて、勝川教授は、本作が基本的に水族館ビジネスへの反対運動が
基軸となっていることを無視して、イルカ漁の部分のみに言及している。

ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その1

これまで述べたように、この撮影の企画者であるリック・オバリー氏は
イルカの食肉よりも、2~3年でストレス死するのを承知で
数10億の利益のためにイルカショーを開催およびイルカを売買するビジネスに反対している。


この点を無視すると、「イルカを食べるのは可哀そう」と言っている連中だと
ミスリードさせることになる。実際はそうではない。次の記事を読んでほしい。



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(太地のイルカ漁に反対する活動家のコメント)

As the annual dolphin-killing season begins at the cove at Taiji, Japan,
毎年、日本の太地町の入り江でイルカが殺される時期になると
the focus will be on the slaughter.
問題の関心は大量虐殺に向けられる。

Far less attention will be paid, however,
だが、あまり注意が向けられていないのだが、
to the fate of dolphins captured and
捕獲されたイルカは殺される一方で、世界中の
sold to marine-mammal entertainment parks worldwide.
海洋哺乳類娯楽パーク(つまり水族館)に売り飛ばされてもいるのだ。

But some activists are bringing their fight to facilities
幾人かの活動家は、生きたイルカを要求する原因となっている
that fuel demand for live dolphins.
これら施設に対する戦いを行っている。

Live dolphins are far more lucrative than dead ones.
生きたイルカは死んだイルカよりもはるかに儲かる。

Taiji fishermen can earn $150,000 or more from selling a single live animal,
太地の両氏は一匹売るたびに15万以上のドルを稼ぐ。
while one butchered for meat fetches only $500 to $600,
(食用にされたものは500ドルから600ドルぐらいしかしないのに)

an economic reality that keeps the drives in business, opponents say.
経済的現実こそ、漁を続行させているのだと反対者は言う。
(意訳:レジャー施設への販売こそイルカ漁を継続する真の目的なのだ
    と抗議者は述べている)

http://www.takepart.com/article/2014/09/12/map-shows-
where-dolphins-captured-cove-2013-were-sold

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確かに映画自体は入り江での追い込み漁を撮影したものだから、
勝川教授のように理解するのが一般的な反応だろうが、
本編をもう少し真面目に読み、活動家の言葉に耳を傾ければ、
彼らが何に対して反対しているのかを誤解しないで済んだだろうと思う。




教授は一応、日本人への攻撃ではないとフォロー(?)しているが、
それはフォローというよりは、彼らが環境テロなのだと強調するためのものになっている。



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保護団体は、日本人を差別して、日本のみを攻撃しているわけではないです。
彼らは、自国の様々な活動も、過激に攻撃してきました。

たとえば、自国の動物実験も、激しく攻撃しています。
カナダの大学では、環境テロリストの攻撃対象になるということで、
動物実験をする建物は、大学の地図に載せていませんでした。

15年も前の話です。当時学生だった、私は、恐ろしい人たちがいるものだと驚きました。


我々の感覚からすると、太地のように、わざわざ、見えづらいところで殺しているのを、
わざわざ盗撮しにくるのはどうかと思います。

でも、そういう理論が通じる相手ではないのです。


新薬を開発するための動物実験は、明らかに人類の福祉につながります。
実験動物は、実験のために育てられており、実験は大学の研究室のような密室で行われる。

それでも、動物の権利を侵害するのは許し難いというのが彼らの理論です。
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残念ながら、勝川教授は普段、ほかならぬ自分が批判している
マグロビジネスに対する日本政府のスタンスと同じ形を取っている。


マグロの漁獲において一番問題があるのは日本の乱獲なのだが、
メディアがあれやこれやと空気を読んで、日本は全く悪くないと報道している。


クロマグロの国際交渉を分析:日本のジャイアン外交が韓国とメキシコを力でねじ伏せた

この件について、具体的なデータをもって論証したのが上の勝川教授の記事だ。
(誤解のないように述べておくが、私は勝川教授の支持者でもある)

これと同じことがイルカ漁にも当てはまる。


それを活動家は問題視しているのだが、
彼らを環境テロとレッテルを貼り、日本への攻撃とみなすのはいかがなものか?


環境問題を口実に、施設を爆破したり、関係者への暴行・殺害を企てるなら確かにテロだ。
だが、彼らはせいぜい網を切るぐらいで暴力を振るったりはしない。

近年、自国に都合のよい組織は活動団体、市民団体と表記し、
そうでない組織はテロと書く風潮があるが、鯨類保護問題も同様である。


皮肉なことだが、マグロ漁への規制を「日本の食文化への攻撃」と称して
一切の批判を許さない頑迷な論者と大差ないレベルの意見を氏は述べている。


このカテゴリーの初めにも書いたが、鯨類保護運動を考察する上で大事なのは、
彼らが「Industry(産業)」に対して批判しているのだという認識である。



かわいそうだとか、日本への敵意だとかそういうのではなく、
膨大な利益を貪るために海洋生物を乱獲するビジネスに反対しているのだ。


確かに「牛や豚を殺すことには文句を言わないのに~」と言いたいのはわかるが、
これは反核団体に対して「銃規制は主張しないくせに~」と言っているようなものだ。
女性差別改善運動に対して「なぜ黒人差別を取り上げない!」と叱っているようなものだ。


元々イルカに愛着をもっていた人間が反対運動に加わっているのは確かだが、
それが本質ではないということを、各組織の主張から読み取ってほしいと思う。


上の勝川氏のそれでもわかるが、日本の識者は向こうの意見をよく読まずに
環境テロとレッテルを貼り、言説を歪めて伝え、日本を被害者に仕立て上げる傾向がある。


正直、教授が映画を最初から最後までよく観たのか、怪しいものである。
(映画では、一般の日本人は政府のメディアコントロールによって
 事実を知らされていないと主張されている。

 大体、日本政府&一部自治体の批判がなぜに日本人の批判になるのか?

 いつから日本政府=日本人、日本政府の批判=日本人の批判になったのか?

 その論法では勝川教授が普段述べているマグロ漁の規制も反日行為になるではないか)

確かな批判なら歓迎するが、内容を歪めて何でもかんでも反日認定するのは
近年の歴史改ざん・人種差別団体と同様の愚かな行為ではないだろうか。


・追記
 なお、勝川教授の記事は2010年のものであり、
 現在、氏が同じ見解かどうかは定かではない。

ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その5

2015-02-23 00:14:08 | ザ・コーブ
以上、ザ・コーブについて語ってきたが、まとめると


1・水族館ビジネスへの批判
  (イルカを2~3年でストレス死させるのを承知で売りさばくショービジネス
   および年間数十億ドルもの利益を得る水族館産業への批判。
   太地町は全世界にショー用のイルカを輸出する大供給地)

2・近年のイルカの乱獲
  (50年~70年代のハンドウイルカの平均捕獲数は976頭。
   現在(撮影時)は2万3千頭にまで急増。別種のイシイルカは80年代末、
   日本近海に生存する3分の1を捕獲したため、急きょ規制がされている。

   なお、捕獲数は毎年変動するが、少なくとも1万頭以上は確実に捕獲されている)

3・警察の監視および地元民の度が過ぎた暴力的な姿勢
  (常時、監視体制。車での尾行。
   入り江近辺の立ち入り禁止←合法的な追い込み漁の撮影が不可能に)

4・日本政府の買収行為
  (カリブ諸国を買収、漁場基地を無償供与、IWCの年会費を肩代わり)


ざっと挙げるだけで、これだけのことを述べている。

これら諸事実を無視して、捕鯨は日本の伝統的な文化だ、
捕鯨に反対するのは日本の伝統的な文化を攻撃するものだ、
だから捕鯨に反対する集団は反日なのだ、白人主義者なのだと叫ぶこと。


それがどれだけバカバカしいことか……よく考えてほしい。
上で掲げた問題を捕鯨支持者が取り上げたことがあっただろうか?

彼らは「捕鯨は正義だ、だからこのままでいいのだ」としか言っていないのではないか?

捕鯨やイルカ漁を続けるためにも、現実の問題点を指摘することは重要だ。
だが、現在の研究費が水族館ビジネスや捕鯨ビジネスで利益を得る政府や
産業によって賄われている今、これらに意見することがタブー視されているのである。

だからこそ、在野の人間が代わりに現行体制の欠点を指摘しなければならないのだが、
鎌田遵氏は何を血迷ったのか、インディアン問題だけ解説すればいいものを、
無理やり捕鯨とインディアンを関連付け、いずれも白人による侵略行為とみなしてしまった。


これは同氏の今後のキャリアを思っても、研究者としての信用を無くすだけだと思う。
(まぁ、それを言えばこの件に関する御用学者全員が信用を落としているわけだが)

ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その4

2015-02-23 00:11:15 | ザ・コーブ
国際捕鯨委員会(IWC)にはカリブ海の小国も参加しているが、
彼らは皆、日本の捕鯨維持・商業捕鯨再開に好意的な姿勢をとっている。


『ザ・コーブ』では、いずれのカリブ海諸国も
 日本によって漁場基地が無償提供されていること、
 加えてIWCの会費を日本が肩代わりしていることに触れ、
 賛成国が弱国を買収し、意のままに操っているのだと主張する。


これら漁場基地は現地にとって不要な施設であり、
映像では、なぜか鶏の飼育小屋(?)として利用されていた。


日本のODAが現地のためでなく日本の利益のために行っていることは
東南アジア研究者である故・村井吉敬&鶴見吉行氏をはじめ、
多くの識者によって指摘されているが、これもまたその一例なのだろう。


『ザ・コーブ』は、商業捕鯨が禁止され、需要もないのにも関わらず、
日本が執拗に鯨類を捕獲し、くじら肉(イルカ肉)を市場に売り捌く背景として
日本の帝国主義が関係しているのではないかと述べる。


確かに、捕鯨を語るにおいて、日本の右傾化の指摘は避けて通れないだろう。


手元にある反捕鯨本の発刊年度を見ると、
1990年代前半、つまり環境運動が注目されていた時代、
生物保護運動の本は特にバッシングされることがなかった。


出版社最大手の講談社から反捕鯨・イルカ本が売られていたなど、
今ではとても考えられないと思う。


なお、捕鯨・イルカを正当化する言説は、
岩波書店(岩波新書・現代文庫)に多くあり、
あの水産庁の元役人、小松正之が水産資源について語っていたりする。


鯨類研究所が水産庁の天下り先になっているのはよく知られた話だが、
その中でも小松は最も暴れている番犬の一人だ。


そういう人物に、乱獲について語らせるというのは、
なかなかのチャレンジャーではないだろうか?


他にも、ジャーナリストとして名高い鎌田慧氏も
太地町を訪れ、日本文化に傷をつけようとする外国勢力に憤りを覚えているが、
これなども、日本の左翼の限界を知る好例なのかもしれない。


これまでに述べたように、捕鯨やイルカ漁に反対するのは、
文化に反対しているわけでなく、捕り過ぎに反対しているのであり、
営利目的で鯨類を虐待する水族館ビジネスに反対しているのである。


むしろ、「水族館」という近代西洋文化(自然を囲み、人間の管理下に置くシステム)
の自然への侵略・征服に加担しているのは、太地町を含めた日本の行政府のほうなのだが、
この点に関して反・反イルカ漁論者はこれといって何も言わない。それが問題なのだ。


岩波は左派系出版社ではあるが、実際にはこの程度の左であり、
国家主義(国益に反する意見は基本的には言わない)から抜け出していない。


他方、斎藤貴男氏の反捕鯨論を掲載していたりする面もあり、
率直に評価すれば、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ、立ち位置がしっかりしない


別にこれは岩波に限った話ではなく、
日本のメジャーな戦後左翼、つまり反共左翼は
現在、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ、右なのか左なのかハッキリせず、
自身を「中道」あるいは「リベラル」と美的表現で粉飾しながら迷走の一途を辿っている。



捕鯨問題は日本の左翼の情けなさを示すリトマス試験紙なのかもしれない。



ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その3

2015-02-22 00:39:59 | ザ・コーブ
『ザ・コーブ』で最も見逃せない点は、日本政府が弱国を買収し、
 鯨類捕獲の支持票を稼いだり、警察が反対運動家を監視していることである。


まず、和歌山県太地町では、鯨類捕獲に関する
BBCやロンドン・タイムズをはじめとした海外メディアの取材ができないようになっている。



これと併せてテレビや新聞、雑誌、書籍における捕鯨礼賛の風潮を踏まえれば、
民主主義国家で、まさに民主的に、平和的に情報が制限されているのである。


これは捕鯨問題に限らず、時事問題を考える際に必要なことだろう。


次に、一部の漁師や警察による行為について。

日本語が通じないと思っているのか、ザ・コーブでは
「アリガトー」といって漁師らに挨拶するスタッフに対して
「帰れ帰れ」と笑顔で答えている。


他にも大声で「帰れや」とカメラの前で怒鳴りちらす若者や、
覆面パトカーの尾行など、客観的に見てあまり行儀が良いとは言えない。


鎌田遵氏は、これら映像を悪意をもって作られたかのように語っているが、
少なくともこういう行為が現実として起きたことは否めないのではないだろうか?


私も活動家が現地でミネラル・ウォーターを購入しようとしたところ、
拒否された事件があったことを知っていたが、なんというか田舎特有の
閉鎖的な空間があるのではと思わざるを得ない。



この閉鎖的な体質を最も象徴しているのが、追い込み漁の周囲が
立ち入り禁止にされ、撮影できないようになっていることだ。


追い込み漁は入り江で大量のイルカを殺害する漁である。
入り江一面がイルカの血で赤く染まる。


あまりイメージの良い光景ではない。


つまり、追い込み漁の現場が見られないように立ち入り禁止にしたことが、
逆に『ザ・コーブ』の資料的価値を高めてしまったのである。




作品の最後では水産庁の役人が漁に使うナイフは改良され、
一瞬で死ぬようにできている、だから残酷ではありませんと説明している。

スタッフは「これを見ても残酷ではないと言えるか」と赤く染まった入り江の映像を見せる。

入り江と同じほどに真っ赤な嘘をついていることが暴露されたわけだ。


このように『ザ・コーブ』は鯨類捕獲に関する日本政府の嘘デタラメや
地元の自治体・警察の行き過ぎた保守的な体質まで露わにしており、
そこもまた評価のポイントになった。

ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その2

2015-02-22 00:10:51 | ザ・コーブ
イルカ保護運動の第2の背景として、IWCの不完全な保護体制がある。


国際捕鯨委員会と呼ばれるIWCは、イルカを保護対象に入れていない。
これは捕鯨国からの圧力があるからだ。

実は、イルカとクジラは同じ生物であり、
簡単に説明すると小さいほうをイルカ、大きいほうをクジラと呼んでいる。

そのため、市場ではクジラ肉と称してイルカの肉が売られている。

1986年以降の商業捕鯨禁止以降、
鯨肉の埋め合わせとしてイルカの捕獲量が激増した。

1957年から1970年末までのハンドウイルカの平均捕獲量は976頭だった。
それが今では2万3千頭である。


数字を見るだけでも、取り過ぎだということに気付くだろう。

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追記

捕獲数にはブレがある。
映画が撮影された2008年には2万3千頭だった。
2007年時は1万3107頭、2011年は3283頭、2013年は1万6496頭が公式捕獲数となっている。

2011年は地震のせいで漁ができない地域があったためだと思われる。

(参考ページ:http://savejapandolphins.org/take-action/frequently-asked-questions)

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実は、イルカ漁の制限は今から20年以上前に日本の科学者によって提唱されている。

対象となったのはイシイルカで、生物学者の試算した持続可能の捕獲数は
5000頭だったのに対して、1万以上、規制直前時では4万300頭が捕獲されていたのである。


これは日本近海を外遊するイシイルカの3分の1が殺害されたことを意味しており
そのため、科学者たちは即急の規制を訴えたのだ。

結果として最大の捕獲地だった岩手地方において規制が設けられた。

同地方ではイルカを食用として捕獲する文化があったわけだが、
他ならぬ日本人たちの乱獲によって文化の維持が危うくなったわけである。


私は「日本の文化を理解しない!」と言って鯨類の捕獲を正当化する意見を
目にするたびに「文化ならどれだけ捕ってもいいのか」と思う。


食うなとは言わない。捕り過ぎが問題なのだ。


『ザ・コーブ』でも乱獲への批判が中心となって話が進んでいる。

もちろん絶対禁止を掲げる人間も運動には参加しているだろうが、
映画自体は毎年2万3千頭が捕獲されることに対して抗議している。


商業捕鯨が禁止された当時と比べて鯨肉の需要は減った。
一石二鳥とばかりにショー用イルカの捕獲と並行して
追い込み漁がされているが、その必要はあるのだろうか?

ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その1

2015-02-21 23:29:33 | ザ・コーブ
日本のメディアや知識人は、左翼も右翼も海外のクジラ・イルカ保護運動家は
「クジラを殺すのはかわいそう」だから殺すなと言っているのだと説明している。



あたかもクジラやイルカをペットのようにみなす動物愛護団体の奇行であるかのように演出し、
これは日本文化に対する白人の文化戦争なのだと吹聴して回っている。



実際には、海外のクジラ・イルカ保護運動には
Industry」という概念が重要な位置を占めている。



つまり、鯨類保護運動の背景には、
希少な自然生物を高値で売り買いする水族館ビジネスが存在する。


順を追って説明しよう。

本作『ザ・コーブ』では、まず初めに水族館ビジネスの批判から始まる。


水族館にあるイルカは2~3年で死亡することをあなたは知っているだろうか?


野生のイルカは1日に65キロを泳ぐのだが、
これを狭い水槽に閉じ込めることで非常に強い精神的負荷がかかるのである。


イルカが飼育される水槽の付近には必ず胃薬がある。ストレスからくる胃潰瘍だ。
加えて、イルカは聴覚が優れた生物で、観客の歓声はイルカにとって騒音になる。


狭い水槽と騒音でまずストレス障害になり、3年以内には死亡する。
イルカショーはイルカにとっては拷問なのである。



ここでイルカと水族館の歴史を振り返ると、
1964年にはイルカがいる水族館は世界に3つしかなかった。

それがドラマ『フリッパー』の影響もあり、イルカの人気が高まることで、
年々増加し、今では数十億の利益を出す美味しい商売になった。


ショー用のイルカは1頭につき15万ドル、
1ドル=120円と計算すると1800万で売れる。



これは売る側としては非常にボロい商売だ。
イルカを捕まえるのは船とモリ、網さえあればいいのだから。
(比較的低予算で可能な沿岸漁業で莫大な利益が挙げられるのである)


和歌山県太地町がなぜターゲットにされたかというと、
世界最大のショー用イルカの供給地だからだ。


世界中の水族館に太地町の漁師が捕らえたイルカが送られている。

しかも、このショー用イルカを捕獲する際には、
イルカの群れを一挙に捕え、傷のないきれいな若いイルカは水族館に送られ、
その他のイルカは1頭600ドル(7万2000円)で食用として殺害される。


つまり、実際にはショー用イルカを捕獲するついでに
大量のイルカが殺されているのである。



ちなみに、マスコミはイルカを食すのは文化だから云々と言っているが、
漁師たちはペスト・コントロール、つまり、魚を食べる害獣だから殺すのだと説明している。


運動団体のリーダー、リチャード・オバリーはイルカが笑っている像が
ついた船が航行しているのを見て「実に奇妙だ」と感想を述べている。

「まるで共存しているかのようだ」と皮肉をもらす。


私も裏では害獣駆除と言っておきながら、町のいたるところに
可愛いイルカのイラストが描かれている様子を見て、
ちょっとした薄ら寒さを感じたのだが……あなたはどうだろうか?



以上が鯨類保護運動を考える際に絶対に把握しておかなければならない知識だ。
活動家は金儲けのためにイルカが虐待されていることを問題視しているのである。

決して、イルカが可愛いからとか可哀そうだからだといった幼稚な理由ではない。


生物保護運動に限らず、環境問題しかり、労働問題しかり、
海外の社会運動には「Industry」、つまり行き過ぎた金もうけ主義への
批判という一面がある。これを見逃しては彼らの行動を理解することは出来ない。