![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/9d/a80190017c5f6e4cfa08541ee10faeb1.jpg)
先日、国家公務員の月給およびボーナス支給額が
民間のそれより下回っていることが判明した。
これに対応するべく、政府は賃上げを要求。
公務員の賃上げは6年連続となったが、
上げ幅は去年よりも小さく、かつ若年層に限っての引き上げになる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/cc/42531b867237601b7d6f349c4636c8d7.jpg)
このニュースに対して
大阪維新の会に所属する佐々木りえ大阪市議会議員が
消費税増税の中、公務員の給料を上げるとはけしからんといったコメントをした。
どうも佐々木議員の頭の中では
公務員は消費税を支払わなくても良いことになっているらしい。
①公務員の報酬が民間のそれよりも低い
↓
②格差を埋めるために賃上げを要求
↓
③公務員の給料は高い!
意味が分からない。
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全ての公務員は高給取りであり、ぜいたくをしている
という決めつけを前提に論を進めるから
実際は民間より安いという実態を認められないのではないだろうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/db/a9c2166960a69a029593d213b69dc8cd.jpg)
そもそも、維新の会は消費税増税に反対の立場ではない。
あくまで凍結であり
その時期が来たと維新が判断した際にはゴーサインを送る立場だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/1e/66f497d6a48d066c57ef1948626f8a3a.jpg)
維新の会の政策は
端的に言えば民営化だと言える。
水道民営化や私立高校への積極的支援が典型的だが、
公的機関は出資者に留まり、運営は民間に委託する。
その財源は人件費削減でねん出する。こういう理屈である。
しかし、この政策は果たして成功しているのだろうか?
本記事は大阪の高校無償化を対象に
この点を検証するものである。
大阪府の公立高校と私立高校の費用を比べてみた
上記記事は、今年(2019年)大阪で高校受験をした学生の保護者が書いたもので
同記事によると、大阪でも学費がかかることが書かれている。
例えば、入学金と振興費、学年諸費の合計は
公立高校が3万2710円であるのに対して私立は29万である。
受験料も私立が2万円であるのに対して公立は2200円。桁が違う。
教科書にかかる費用は効率が2万円であるのに対して
私立は4万円である。
ここで重要なのは、あくまで支援するのは授業料に関してのみであって、
上に述べたような別途費用は保護者が負担するという点である。
そのため、格差を埋めるという名目でありながら、
実際に恩恵を受けるのは中産層であることが指摘される。
平成28年度以降に入学した皆さんへの授業料支援制度について
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/50/d817c3533ed19768cd9c1275d229dfca.jpg)
肝心の授業料だが、実はこれも
免除されるのはごく一部の世帯でしかない。
上にあるように親権者(父母)の合計年収が590万、
平均で49万であった場合に限り免除となる。
総務省の調べによれば、
大阪府の35~39歳の平均年収が509万、40~44歳のそれが562万なので、
例えば父親が正社員、母親がパートタイム労働者だった場合には
無償化の対象外になるケースが少なくないと言える。
次に20万の負担となる世帯についてだが、
この20万はあくまで授業料が58万だった場合に限っての話であり、
仮に授業料が65万だった場合には、さらに7万円の負担を強いられる。
以上から、「無償化」と表現するには
あまりにも実体と乖離しているのではないかというのが私が導き出した見解である。
府立高等学校の授業料と就学支援金について
この話題に関して見逃せないのが
府立高校の授業料は国の支援により、すでに免除されているという点である。
府立の授業料は11万8800円だが、この額は国の支援策によって
家庭がその分を支払わなくても良いようになっている。
つまり、世帯によっては私立の授業料が免除になると言っても、
依然、公立高校の学費のほうが安いのである。
生徒減で府立2高を削減 大阪府教委が生徒募集停止 30年度までに計7校閉鎖
仮に「全ての児童に教育を」と考えているのであれば、
私立高校より公立高校を支援したほうが経済的にも効率が良い。
現行の制度に加えて、教科書や制服、修学旅行や卒業アルバム等の雑費を
府が援助するだけで完全無償化は実現できる。
さらに指導力のある教員を育て、質の高い授業を提供すれば
安価で進学率の高い教育を行う都市として箔がつくだろう。
・・・と思うのだが、大阪府は上の記事で書かれているように、
公立高校に対して支援どころか切り捨てる政策を一貫して行っている。
「学生に選択の自由を与える」という名目ではあるが、
実際には公立から私立へと児童を誘導するのが目的と言っても過言ではない。
まさに教育の民営化である。
https://czemi.benesse.ne.jp/open/nyushi/exam/27/feature/1276092_5206.html
ベネッセ・コーポレーションのページを読んでみても、
大阪の授業料免除制度は、受験産業にとって都合の良い政策であるように感じる。
本来、公立高校の教育の質を高め、教科書代や入学金を援助、埋め合わせたほうが
府にとっても、家庭にとっても、比較的わずかな財源で済ませられるはずなのに、
それを一切やろうとせずに、私立高校にむけて中途半端な援助を行う。
時には府立高校の廃校までしてしまう。
これは、私立大学や学習塾・通信教育を生業とする民間企業に
利益を誘導するものではないかというのが私の見解である。
なお、補足として以下のページも紹介しておく。
維新の授業料無償化はネオリベ施策。私学値上げ→固定化の構図
維新の会 「身を切る改革」で教育「無償化」は事実か?
身を切る改革によって私立高校の無償化が実現したと主張する
維新の会のメンバー、その支持者の言葉も現実を反映したものではない。
私立高校の「教育無償化」(実際は授業料免除)制度の予算は
2018年度では192億円だが、議員報酬の切り下げで生まれた財源は7億円に満たない。
この約190億円がコストカットで得たものかどうかは議論の余地が大いにある。
大阪府、平成28年度以降も私学無償化継続へ 多子世帯を優遇 年収上限は引き下げ
なお、
過去の記事を読めば、大阪の授業料免除制度は
年を経るごとに劣化していることがわかる。
身を切る改革によって実現と銘打っても
実際には、徐々に首が回らなくなっているのである。
この状況を打破するには、
先に述べたように民間に教育を輸出するのではなく、
公教育の充実へと舵を切ることが求められるだろう。
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この問題を「参院選FactCheck」として最初に指摘した際には、
所得制限や多子家庭への補助を無償化と呼ぶのは適切ではないとの指摘も多く寄せられた。
例えば、大阪市を完全無償化と呼んでよいかも議論が分かれる。
ファクトチェックの記事では松井代表の発言は「不正確」と指摘したが、
「詐欺ではないか」との意見も寄せられている。
日本維新の会には、そうして点も踏まえて丁寧な説明を求めたい。
一連の記事で日本維新の会に質問を送って回答を求めたが回答は得られていない。
https://news.yahoo.co.jp/byline/tateiwayoichiro/20190720-00134902/
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以上、大阪の高校無償化制度について検討を加えてきたが
結論としては
①公立高校無償化は国の支援によるもの。
②私立高校無償化は一部の世帯に限定され、かつ国の支援を補う形になっている。
③依然、公立高校のほうがはるかに学費が安い。
④にも関わらず、府は公立高校の支援を怠ってきた。
④財源は議員報酬の削減によってねん出したとも言い難く
⑤年々、サービスの内容が劣化している。
⑥この状況を打破するには公教育への支援を増やすことが求められる。
の6点が挙げられるだろう。
上に引用したように、一部の世帯に限定して実施するものを
「無償化」と呼んでよいかどうかは大いに疑問である。
キューバなどの社会主義国では授業だけでなく、
教材も含めて全世帯に対して無償で提供されていることを踏まえれば、
これは「無償」ではなく「免除」と呼ぶべきものであろう。
海外にも奨学金制度や授業料免除制度があるが、
これを差して「無償化」とは呼ばない。
ましてや、あたかも全世帯が無償で教育を受けられるかのように
吹聴されているのだから、このような表現は大いに訂正されるべきだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/1e/66f497d6a48d066c57ef1948626f8a3a.jpg)
公立高校の無償化制度(あくまで授業料に関してのみだが)は
国によるものなので、維新の会の手柄ではないのだが、
なぜか、この団扇では維新の功績として数えられている。
維新の会の最大の問題点は
教育や外交に対する姿勢以前に、
この平然と嘘をつく態度にあるのではないだろうか。
【ニュース・10/13追記】
「大阪は教育費が実質無償になっている(松井大阪府知事)」って本当???
維新代表が「幼稚園、保育園の無償化が実施されている」とした大阪で、
実際は全市町村の20%未満