今年の最後の記事として、最近のロシア情勢について紹介したい。
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クリミアの「返還」か「併合」か
2014年、ロシアは、ウクライナ危機に巻き込まれ、この危機は、
一方では、1954年までロシアの一部だったクリミアの“返還”をもたらし、
他方では、冷戦以降もっとも深刻な西側との関係における危機をもたらした。
今年の3月、クリミアで、住民投票が実施され、
この投票において、民族主義者による政権の掌握と強まる
ウクライナ化の見通しに“怯えた”クリミアの住民たちは、
全員一致でロシアへの編入を希望した形となり、2010年に
ウクライナの法律に基づいて選ばれたクリミア議会が、この決定を支持した。
米国とその同盟国は、ロシアの行動を併合とみなして非難し、
ロシアに対して大規模な経済制裁を導入したが、ロシアは、
仮にロシア語系住民が大半を占めるクリミアがウクライナに留まっていたならば
クリミアはドンバス(ドネツ炭田)と同じ運命に晒されていたであろう、とみている。
クリミアに続いて、ウクライナ南東部のロシア語系住民居住地域も、
ウクライナの新政権が制限しようとした自分たちの政治的および
文化的な利益を守るようになり、これによって、軍事紛争がもたらされ、
双方の多数の当事者ばかりでなく何らかの原因で戦闘地域の上空を飛行していた
民間機MH-117の乗客まで、その犠牲となってしまった。
この戦争は、ロシアに対する新たな非難と制裁をもたらしたが、
ロシアは、隣国のさらなる崩壊を望んではおらず、
ルハーンシク(ルガンスク)およびドネツィク(ドネツク)の
両人民共和国に対する人道支援を行い、蜂起勢力と政府の間の和平対話を
促しており、9月には、停戦およびドンバスに対するウクライナ構成下での
特別のステータスの付与を見込んだミンスク協定が、ロシアの仲介のもとで調印された。
制裁と非難の応酬
今後の外交努力がどのようなものとなるかは、今のところ不明である。
ロシアと西側の関係は、極めて悪化しており、
このことは、11月にオーストラリアのブリスベンで開かれたG20サミットでも見てとれた。
また、双方は、平和を創り出すかわりに制裁と非難の応酬に明け暮れている。
もちろん、どちらが敵をよりひどく懲らしめるかという争いに
終わりがないわけではないが、今のところ、対決が深まる傾向に変わりはない。
たとえば、アナス・フォー・ラスムセン元NATO事務総長は、
ロシアは向こう数十年間NATOの敵である、と明言している。
一方、ロシアは、西側との共同プロジェクトを公然と中止し、
新しいパ―トナーを探しているが、その鮮やかな実例となったのが、
ガスパイプライン「サウスストリーム」建設の中止である。
ロシアは「サウスストリーム」プロジェクトの「実現を継続できない」との
ロシアの大統領の声明は、アンカラでのトルコのレジェップ・タイ
イップ・エルドアン大統領との共同記者会見の場で行われたが、
ガスが欲しいトルコとガスパイプライン「ブルーストリーム」を拡大して
ガスの供給を増やしたいロシアの思惑が一致して、
両国は、シリア危機をきっかけに一旦は袂を分かったものの、
ふたたび喜んで肩を叩き合う間柄となった。
今後、ガスは、中国へも送られることになった。
これは、11月に北京で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)サミットの成果であり、
2014年5月に調印された中国への東ルート「シベリアの力」を経由した
ガスの供給に関する協定に追加する形で、西ルート「アルタイ」を利用して
供給をほぼ倍増させることが決まった。
一方、中国側は、内輪の協議から判断すると、
ロシア経済へ積極的に投資し、ロシア市場へ農産物を充分に供給する意向である。
新たな“友人たち”
こうした展望は、先にブラジルで6月に開かれたBRICSサミットでも協議され、
ブラジルは、ロシアへの食糧の供給を増やす用意を表明したが、ブラジルばかりではない。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、
一連の中南米諸国の首脳とも協力拡大に関する会談を行い、
今夏は、中南米諸国を歴訪して、ブラジルのほか、
キューバ、ニカラグア、アルゼンチンを公式訪問した。
また、インドは、西側の医療品に代わる自国の医薬品をはじめとした
医療品をロシアへ供給することを提案した。このテーマは、
12月11日にニューデリーでウラジーミル・プーチン大統領が
インドのナレンドラ・モディ首相と会談した際に協議された。
この会談の結果、両首脳は、
向こう十年間の両国のパートナーシップの強化に関するプランを採択した。
ちなみに、ロシアとの協力に関して合意した上記の国々は、
少なくともさらに三つのパートナー国を手に入れたと言えよう。
というのは、2015年1月1日、
ユーラシア経済連合(EAEU)が正式に発足し、
加盟国のロシア、カザフスタン、ベラルーシ、アルメニアが
「商品、サービス、資本、労働力の自由な移動を保証し、
エネルギー、工業、農業、輸送といった
主要経済部門における一致した政策を実施する」
義務を履行するようになるためである。
新しいパートナーと強固な関係を築くことは、ロシアにとって極めて重要である。
とくに、米国がソ連の影響圏の存在を認めて
ソ連も米国の影響圏の存在を認めていたかつての「冷戦」とは異なり
「ルールなき冷戦」と専門家らが呼ぶところの米国との関係発展の
暗澹たる見通しという文脈においては…。
http://jp.rbth.com/politics/2014/12/19/51527.html
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EUも昔はEC(欧州経済共同体)という名の経済連合体だった。
結果的にロシアや中国や北朝鮮、中東、中央アジアに対する
NATOの軍事的経済的攻撃は皮肉にもユーラシアの連帯の契機となった。
2015年、1月1日、ユーラシアの火が灯る。
世界史の新たな1ページになる・・・かもしれない。
前から言っているが、日本はアジアに背を向け、
アメリカの保護国として生きてきた。70年も。
それは、実のところ、韓国も同様である。
両国は1945年からアメリカに占領され、同国の管轄下に置かれてきた。
両国とも、米軍基地があり、米国と安保条約を結んでいる。
アジアで有事があったさい、両国は協力して米国の先兵となる。
この構図を書き直すこと。脱亜入欧から脱却すること。
それが戦後70年の今、求められる道ではないだろうか。
どのみち、あと数十分で2015年だ。
なるべく良い年になることをひたすらに祈る。
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クリミアの「返還」か「併合」か
2014年、ロシアは、ウクライナ危機に巻き込まれ、この危機は、
一方では、1954年までロシアの一部だったクリミアの“返還”をもたらし、
他方では、冷戦以降もっとも深刻な西側との関係における危機をもたらした。
今年の3月、クリミアで、住民投票が実施され、
この投票において、民族主義者による政権の掌握と強まる
ウクライナ化の見通しに“怯えた”クリミアの住民たちは、
全員一致でロシアへの編入を希望した形となり、2010年に
ウクライナの法律に基づいて選ばれたクリミア議会が、この決定を支持した。
米国とその同盟国は、ロシアの行動を併合とみなして非難し、
ロシアに対して大規模な経済制裁を導入したが、ロシアは、
仮にロシア語系住民が大半を占めるクリミアがウクライナに留まっていたならば
クリミアはドンバス(ドネツ炭田)と同じ運命に晒されていたであろう、とみている。
クリミアに続いて、ウクライナ南東部のロシア語系住民居住地域も、
ウクライナの新政権が制限しようとした自分たちの政治的および
文化的な利益を守るようになり、これによって、軍事紛争がもたらされ、
双方の多数の当事者ばかりでなく何らかの原因で戦闘地域の上空を飛行していた
民間機MH-117の乗客まで、その犠牲となってしまった。
この戦争は、ロシアに対する新たな非難と制裁をもたらしたが、
ロシアは、隣国のさらなる崩壊を望んではおらず、
ルハーンシク(ルガンスク)およびドネツィク(ドネツク)の
両人民共和国に対する人道支援を行い、蜂起勢力と政府の間の和平対話を
促しており、9月には、停戦およびドンバスに対するウクライナ構成下での
特別のステータスの付与を見込んだミンスク協定が、ロシアの仲介のもとで調印された。
制裁と非難の応酬
今後の外交努力がどのようなものとなるかは、今のところ不明である。
ロシアと西側の関係は、極めて悪化しており、
このことは、11月にオーストラリアのブリスベンで開かれたG20サミットでも見てとれた。
また、双方は、平和を創り出すかわりに制裁と非難の応酬に明け暮れている。
もちろん、どちらが敵をよりひどく懲らしめるかという争いに
終わりがないわけではないが、今のところ、対決が深まる傾向に変わりはない。
たとえば、アナス・フォー・ラスムセン元NATO事務総長は、
ロシアは向こう数十年間NATOの敵である、と明言している。
一方、ロシアは、西側との共同プロジェクトを公然と中止し、
新しいパ―トナーを探しているが、その鮮やかな実例となったのが、
ガスパイプライン「サウスストリーム」建設の中止である。
ロシアは「サウスストリーム」プロジェクトの「実現を継続できない」との
ロシアの大統領の声明は、アンカラでのトルコのレジェップ・タイ
イップ・エルドアン大統領との共同記者会見の場で行われたが、
ガスが欲しいトルコとガスパイプライン「ブルーストリーム」を拡大して
ガスの供給を増やしたいロシアの思惑が一致して、
両国は、シリア危機をきっかけに一旦は袂を分かったものの、
ふたたび喜んで肩を叩き合う間柄となった。
今後、ガスは、中国へも送られることになった。
これは、11月に北京で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)サミットの成果であり、
2014年5月に調印された中国への東ルート「シベリアの力」を経由した
ガスの供給に関する協定に追加する形で、西ルート「アルタイ」を利用して
供給をほぼ倍増させることが決まった。
一方、中国側は、内輪の協議から判断すると、
ロシア経済へ積極的に投資し、ロシア市場へ農産物を充分に供給する意向である。
新たな“友人たち”
こうした展望は、先にブラジルで6月に開かれたBRICSサミットでも協議され、
ブラジルは、ロシアへの食糧の供給を増やす用意を表明したが、ブラジルばかりではない。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、
一連の中南米諸国の首脳とも協力拡大に関する会談を行い、
今夏は、中南米諸国を歴訪して、ブラジルのほか、
キューバ、ニカラグア、アルゼンチンを公式訪問した。
また、インドは、西側の医療品に代わる自国の医薬品をはじめとした
医療品をロシアへ供給することを提案した。このテーマは、
12月11日にニューデリーでウラジーミル・プーチン大統領が
インドのナレンドラ・モディ首相と会談した際に協議された。
この会談の結果、両首脳は、
向こう十年間の両国のパートナーシップの強化に関するプランを採択した。
ちなみに、ロシアとの協力に関して合意した上記の国々は、
少なくともさらに三つのパートナー国を手に入れたと言えよう。
というのは、2015年1月1日、
ユーラシア経済連合(EAEU)が正式に発足し、
加盟国のロシア、カザフスタン、ベラルーシ、アルメニアが
「商品、サービス、資本、労働力の自由な移動を保証し、
エネルギー、工業、農業、輸送といった
主要経済部門における一致した政策を実施する」
義務を履行するようになるためである。
新しいパートナーと強固な関係を築くことは、ロシアにとって極めて重要である。
とくに、米国がソ連の影響圏の存在を認めて
ソ連も米国の影響圏の存在を認めていたかつての「冷戦」とは異なり
「ルールなき冷戦」と専門家らが呼ぶところの米国との関係発展の
暗澹たる見通しという文脈においては…。
http://jp.rbth.com/politics/2014/12/19/51527.html
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EUも昔はEC(欧州経済共同体)という名の経済連合体だった。
結果的にロシアや中国や北朝鮮、中東、中央アジアに対する
NATOの軍事的経済的攻撃は皮肉にもユーラシアの連帯の契機となった。
2015年、1月1日、ユーラシアの火が灯る。
世界史の新たな1ページになる・・・かもしれない。
前から言っているが、日本はアジアに背を向け、
アメリカの保護国として生きてきた。70年も。
それは、実のところ、韓国も同様である。
両国は1945年からアメリカに占領され、同国の管轄下に置かれてきた。
両国とも、米軍基地があり、米国と安保条約を結んでいる。
アジアで有事があったさい、両国は協力して米国の先兵となる。
この構図を書き直すこと。脱亜入欧から脱却すること。
それが戦後70年の今、求められる道ではないだろうか。
どのみち、あと数十分で2015年だ。
なるべく良い年になることをひたすらに祈る。