時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

米朝首脳会談中止の背景

2018-05-27 00:55:12 | 北朝鮮
Pars Todayの記事より。


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アメリカ大統領が再び北朝鮮指導者との約束を反故に


北朝鮮が核実験場を閉鎖したにもかかわらず、
アメリカのトランプ大統領は来月に予定されていた北朝鮮との首脳会談を中止しました。

CNNによりますと、トランプ大統領は、24日木曜、
北朝鮮のキムジョンウン朝鮮労働党委員長に宛てた書簡の中で、
6月12日に予定されていた両国の首脳会談を断念するとしました。


また、この書簡の中で、中止の理由は、
北朝鮮のキムジョンウン朝鮮労働党委員長の
最近のメッセージによる「明らかな敵意と大きな怒り」だとしました。

さらに、この書簡で、自国の核能力を北朝鮮に対して誇示しました。


北朝鮮は公約どおり
外国人記者が参加する中で数回の爆発により、
プンゲリの核実験場を破壊しました。


一部の西側メディアは、
誠意ある行動として、この北朝鮮の行動を歓迎しました。

プンゲリの核実験場の破壊は、
南北朝鮮の首脳会談による成果の一つです。



双方は共同宣言により、朝鮮半島地域の核兵器廃絶、
朝鮮戦争の休戦の平和協定への返還、敵対的行動の中止
といった事柄に合意しました。


http://parstoday.com/ja/news/world-i44340
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会談中止の背景として以下の理由が挙げられると

ロシアアジア戦略センター所長ゲオルギー・トロラヤ氏
および吉林大学東北アジア研究院所長、巴殿君氏は語る。


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トランプ米大統領が会談を中止したのは
「熟慮されない突発的な反応」だとしてトロラヤ氏は次のように述べた。



「米国の内政要因が働いた可能性もある。
 譲歩しないようトランプ氏に圧力がかかり、
 そのため彼は金正恩氏が悪意ある発言を行ったと非難した。

 実際には正恩氏からの敵対的な発言は一切ないのだが。



シンガポールでの会談の準備をすすめるはずだった
米国側のメンバーが発表されたあと、
トロラヤ氏は会談実施の可能性を10%だと見積もっていた。


巴氏はまた、トランプ氏のチームが会談中止の一因だと述べた。


「双方は非常に短時間で両者を満足させる合意に
 こぎつけることを期待していたが、これは難しい。

 会談実施のために急いで作られた代表団が
 完全に『タカ派』からなっていた
米政権にとってはとりわけそうだ。


 この代表団は米国に存在する政治の方向性を全く1つにせず、
 会談への関心を示さなかったため、代表団には非常に多くの議論の余地があった。


 さらに、近ごろではトランプ氏が
 金正恩氏との会談中止を検討しているとの情報が漏れていた。

 彼は、北朝鮮による核実験場の施設爆破を待ち、そのあとに決定を発表した。」 



決定発表には「かなり意外な」タイミングが選ばれたとトロラヤ氏は述べる。


これは、北朝鮮が海外からの記者団を引き入れて
豊渓里(プンゲリ)の核実験場を盛大に閉鎖した日だった。


つまり、みなが北朝鮮に
核・ミサイル実験の凍結を呼びかけていた1年前に
楽観主義者が期待できた状態より一歩進んだことが行われたのだ。


しかも北朝鮮は
核実験を単に凍結したのではなく、
実質的に完全な中止を発表した。



つまり事実上、核実験禁止条約に加盟したのだ。
なお、米国は今に至るまでこの条約に加盟しておらず、するつもりもない。



同日、韓国の文在寅大統領は米国に訪問中だった。
トランプ氏の発表は「同盟国への平手打ち」であり、
米国は韓国の国益を考慮していないことを示した。

なぜなら、文大統領こそが
多くの点でこの会談の開催を促進してきたのだから。


巴氏は一方、双方は予定されていた会談の妨げとなった
障害を乗り越える必要があるとして、その障害について分析した。



「核兵器放棄の問題で
 北朝鮮と米国のアプローチを合わせることは非常に難しい。

 北朝鮮にとって重要なことは、段階的で均衡であることだ。
 米国は一方、北朝鮮に不可逆的で完全な放棄を求めている。

 トランプ氏の正恩氏に対する冒険的な行為が原因で、
 双方の深刻な政治的不信感が最近形成された。


 彼らの相互的な戦略的かつ外交的な動きは政治的不信感から、
 お互いにダメージを与える戦略形成に進化した。

 この政治への不信感は新たな危機の拡大につながりかねない。」

https://jp.sputniknews.com/opinion/201805254917442/
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ロシア科学アカデミー極東研究所・朝鮮研究センター
コンスタンチン・アスモロフ主任研究員も次のように語る。



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北朝鮮が望んでいるのは正真正銘の対話であり、
自らに対する一方的な圧力ではないと、

ロシア科学アカデミー極東研究所・朝鮮研究センターの
コンスタンチン・アスモロフ主任研究員は考えている。


「トランプ大統領は一度ならず、もし何かが自分の気に入らなければ、
 拳でテーブルを叩いて立ち去ると述べてきた。北朝鮮にも同じような権利がある。

 北朝鮮はこれまで、善意のジェスチャーを文字通り次々に示していた。

 その一方で米国側からは、
 制裁がさらに長期間続いていくとの声明が出されている。

 恐らく、北朝鮮指導部の忍耐力にとって最後の打撃となったのは、
 開始された米韓軍事訓練だった。

 ここでは、奇妙なことだが、
 平壌への爆撃の訓練が再び行われている
」。

トランプ大統領との6月の会談が北朝鮮の指導者によって中止されれば、
最近の南北首脳会談で最も顕著に表れることになった、
南北関係の前向きな傾向も最小限に抑えられてしまう可能性がある。


しかし、トランプ大統領は依然として、
金正恩朝鮮労働党委員長と「偉大な取引」を結ぶことを期待している。

だが、これが米国にとって外交的大失敗で終わることにはならないだろうか。


https://jp.sputniknews.com/opinion/201805184892083/
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ここ数日、北朝鮮はアメリカに対して
強い語気で批判を行っていた。



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朝鮮中央通信は16日、
南朝鮮が米国と連合空中戦闘訓練「マックスサンダー」
を行っていることを「板門店宣言に対する露骨な挑戦であり、
良好に発展する朝鮮半島情勢の流れに逆行する意図的な軍事挑発だ」
と非難する報道を発表。

同日に予定されていた北南高位級会談について
「中止する措置を講じざるを得なくなった」と明らかにした。



11日に始まった連合空中戦闘訓練には、
ステルス戦闘機F22ラプターなど、100余機の各種戦闘機が動員され、
25日まで行われる。当初、戦略爆撃機B52も動員される予定であったが、
北南高位級会談中止に関する報道が発表されるや、急きょ取りやめになった。



板門店宣言第2項では
「北と南は、朝鮮半島で先鋭化した軍事的緊張状態を緩和し、
戦争の危険を実質的に解消するため共同で努力する」と合意されており、
米国もまた、これを支持した。




通信は、
「南朝鮮当局と米国は、歴史的な4.27宣言のインクが乾く前に
 わが国に反対する大規模の連合空中訓練を行うことで、
 これまでわれわれが示した平和愛好的な全ての努力と善意に無礼、
 非道な挑発で応え、宣言の履行を望む全同胞と国際社会に大きな懸念と失望を与えている」と非難。


「善意を施すにも程があり、機会を与えることにも限界がある」としながら、

「歴史的な板門店宣言は、どちらか一方の努力では履行することができず、
 双方が履行のための有利な条件と環境を、力を合わせてつくっていってこそ、
 はじめて良い結実につながる」と板門店宣言履行のための双方の努力について強調した。



通信は、今回の北南高位級会談の中断と、
北南関係に難関と障害がもたらされたすべての責任は、
無分別に振る舞う南朝鮮当局にあると非難した。また、米国に対しては、

「南朝鮮当局と行っている挑発的な軍事的騒動の局面をもって、
 日程に上がっている朝米首脳対面の運命について熟考すべきだ」と警告。

「われわれは、米国と南朝鮮当局の今後の態度を鋭意注視している」と強調した。

http://chosonsinbo.com/jp/2018/05/yr201804517-1/
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一方的核放棄強要なら、朝米首脳会談考慮/
朝鮮外務省 金桂官第1次官の談話


米の敵視政策と核威嚇の終結が先決条件



朝鮮中央通信によると、朝鮮外務省の金桂官第1次官は16日、
談話を発表し、ボルトン米ホワイトハウス補佐官らが
来月の朝米首脳会談を前に、朝鮮に対して「先核放棄、後補償」
「リビア式核放棄」を主張していることを批判。


「トランプ政権が一方的な核放棄を強要するなら、
朝米首脳会談に応じるかどうかをあらためて考慮せざるを得ない」
と表明した。


談話は、金正恩委員長の崇高な志に応えて、
トランプ大統領が歴史的根源の深い敵対関係を清算し、
朝米関係を改善しようとする立場を表明したことについて肯定的に評価し、
朝米首脳会談が朝鮮半島の情勢緩和を促し、素晴らしい未来を
建設するための大きな歩みになるだろうと期待していたと前置きしながら、
米国において対話相手を甚だしく刺激する妄言が吐かれていることに失望感をあらわにした。



談話は、米国の「リビア式核放棄」
「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」
「核、ミサイル、化学兵器の完全廃棄」などの主張について

「対話を通じて問題を解決するのでなく、
大国に国を丸ごと委ねて崩壊したリビアやイラクの運命を
わが国に強要する不遜な企図の現れだ」と非難。


「米国のこのような行為に怒りを禁じ得ず、
米国が果たして健全な対話と協議を通じて
朝米関係改善を望んでいるのかを疑う」と指摘した。



談話は、朝鮮が既に朝鮮半島非核化の用意を表明し、
このためには、米国の対朝鮮敵視政策と核の威嚇を終結させることが
先決条件になると何度も宣明したことを想起させながら、

「米国は、われわれが核を放棄すれば経済的補償と恩恵を与えると言うが、
われわれは1度も米国に期待を掛けて経済建設を行ったことがなく、
今後もそのような取引を絶対にしない」と強調した。


談話は、
「トランプ政権が朝米関係改善のために誠意を持って
朝米首脳会談に出てくる場合、われわれの相応の呼応を受けることになるが、
われわれを隅に追いやって一方的な核放棄だけを強要するなら、
われわれはそのような対話に興味を持たないし、
朝米首脳会談に応じるかどうかをあらためて考慮せざるを得ない」と表明した。

http://chosonsinbo.com/jp/2018/05/yr20180517-2/
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先ほど放送されていた『新情報News7Days』では

明治大学の講師が大声で
首脳会談が中止になったのは
北朝鮮が揺さぶりをかけすぎたからだと説明していた。

①平壌攻撃を想定した
 マックスサンダー作戦への非難 

(ステルス戦闘機F22ラプターは
 斬首作戦に最も適した機体との見解もある)

②リビア式の一方的な核放棄に対する非難

「対話を通じて問題を解決するのでなく、
 大国に国を丸ごと委ねて崩壊したリビアや
 イラクの運命をわが国に強要する不遜な企図の現れだ」

「米国のこのような行為に怒りを禁じ得ず、
 米国が果たして健全な対話と協議を通じて
 朝米関係改善を望んでいるのかを疑う」

これらの発言が「揺さぶり」に該当するのだそうだ。

核施設の爆破についても
海外メディアが注視するなか、大々的に行われたものだったが、
これについても「専門家を呼ぶ約束を破った」と非難、
暗に破壊したのかどうか疑わしいという見解を示した。

(専門家を招く約束が本当にあったかは不明。
 少なくともこの講師以外にそのような取り決めが
 あったとはニュースサイトを調べた限り、見受けられなかった。
 全くの嘘だとは言わないが、出所を示して欲しいとも思う)


客観的にみれば、

北朝鮮は、韓国と協調しつつ対話路線を呼びかけ、
核実験施設を爆破し、軍事的示威行動を行わない方向へ転身したのに対して、

アメリカは、軍事演習を続行し、経済制裁を解く気配もなく、
一方的な核放棄を求め、先制攻撃、爆撃も辞さないという態度。


これに対して非難することが「ゆさぶり」になるらしい。


こうした見解は、おおよそ
北朝鮮のやることは信用ならないという
先入観に基づいたものだと言えるだろう。


すでに日本では、
実験施設の爆破は政治ショーだと評価する専門家も少なくない。

だが、考えてほしい。

仮に北朝鮮が爆破を中止したならば、
それはそれで約束を反故にしたと激怒するのではないだろうか?


アメリカの北朝鮮に対する不実な姿勢に対して
全く非難しないのも奇妙である。


少なくとも番組内に登場した明治大講師は
マックス・サンダー作戦やペンス氏の発言については
一切、取り上げなかったし、番組自体も
なぜかこの箇所をカットして朝鮮中央通信の記事を紹介していた。



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朝鮮中央通信によると、朝鮮の崔善姫外務次官は24日、
米国のペンス副大統領がFOXニュースとのインタビュー(21日)で
朝鮮の核問題で軍事的対応の排除を否定し、「リビアのように終わるだろう」
などと発言し、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を
主張したことを非難する談話を発表した。



崔次官は、ボルトン国家安全保障担当補佐官に続き、
ペンス副大統領までもが朝鮮に対し、
リビアの轍を踏むだろうと力説したことについて、


「われわれは、リビアの轍を踏まないために高い代価を払って自分自身を守り、
 朝鮮半島と地域の平和と安全を守ることのできる強力で頼もしい力を育てた」と指摘。

「この現実をいまだに分からず、
 われわれを悲劇的な末路を歩んだリビアと比べるのは、
 米国の高位政治家が朝鮮をあまりにも知らない」と非難した。


崔次官は
「米国が先に対話を請託したにもかかわらず、
 われわれが要請したかのように世論をミスリードする底意が何なのか、
 果たして米国がここから何を得ようと打算しているのか分からない」としながら、


「われわれは米国に対話を哀願しないし、
 米国がわれわれと対座しないというなら、あえて引き止めない」と強調した。


そして、
「米国がわれわれと会談場で会うのか、
 核対核の対決場で会うのかは全的に米国の決心と行動に懸かっている」としながら、

「米国がわれわれの善意を冒涜し、非道に振る舞う場合、
 朝米首脳会談を再考する問題を最高指導部に提起する」と表明した。

http://chosonsinbo.com/jp/2018/05/yr20180524-1/
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上の記事から
最後の「われわれは米国に対話を~引き止めない」だけが
抜き出され、その前の北朝鮮への攻撃を示唆するアメリカの発言はカットしていたのである。


つまり、アメリカは北朝鮮の行き過ぎた揺さぶりについて対処したにすぎない
というのが日本メディアの見解だった。


このアメリカ完全無罪論を前提とした解説に私は唖然としてしまった。


軍事演習の継続にリビア式の解決方法の示唆。
これは揺さぶりや挑発というものにならないのだろうか。


アメリカはどれだけ挑発的な発言をしても許され、
北朝鮮は実験施設を爆破しても疑われる。


これが日本のメディアやエキスパートの姿勢なら
確かに日本がこの問題で蚊帳の外にされたのも納得がいく。


現在、森友問題や加計問題で顕著なのが、
証拠や証言が出てきても「これはこういう意味なのだ、あれはそういう意味なのだ」
と都合の良い解釈をして、現実を直視しようとしない政治家の態度だが、

実のところ、これは専門家やジャーナリストを含む
日本の北朝鮮に対する姿勢にも通じるものではないだろうか?


確かに池上彰はウクライナ問題で嘘をついている

2018-05-24 00:16:31 | ロシア・ウクライナ
池上彰さんを脅迫容疑、無職男を逮捕 
「抹殺しなければならない」とメール



合法詐欺師の池上彰氏に殺害予告のメールを
送った男性が逮捕されたようである。


殺害予告という行為自体は噴飯物だが、
池上氏が嘘をついていることは間違いではない。


映像でチラリ(1~2秒くらい?)と見えたのだが
どうもウクライナ情勢についての同氏の説明が不服だったらしい。





https://www.mainichi.jp/feature/maisho/etc/about/pdf/ikegami.pdf

2014年3月27日付の毎日小学生新聞に掲載された
池上氏の記事を見ながら検討してみよう。


この記事の冒頭では

住民がロシアへの帰属を宣言、
これをロシアが承認「してしまった」と説明されているが






記事の最後では
「ロシアが派兵して併合した」と別のことが語られている。



この時点ですでに
同氏の説明が矛盾していることがわかるが、
気になる点を以下、3点挙げてみたい。




①クリミア半島→× クリミア自治共和国→〇


まず気になるのが記事では一貫して
「クリミア半島」と説明されており、


冷戦終結後から存在する
クリミア自治共和国という小国家について一切、触れていないことだ。


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ロシアもこれを支援する構えを見せたが、
当時ロシアはチェチェンの独立を阻止するために 軍事弾圧をしていたのに、
ウクライナからのクリミア独立をそそのかすのでは立場が矛盾すると非難され、
結局この時もクリミア共和国を正式に承認することはせず、
95年3月にウクライナはクリミアへの武力介入を構えを見せつつ、
大統領と独自憲法を廃止させ、クリミアはウクライナの統治下に戻った。


クリミアはウクライナ国内の自治共和国となり、
98年12月にウクライナ政府の承認で新たな憲法が制定された。



ロシアがクリミアに関心を示すのは、
なにも「ロシア人が多いから」ではない。


クリミアには
地中海に睨みを利かせる黒海艦隊の母港が存在するからだ。


ソ連解体で黒海艦隊は
ウクライナ海軍とロシア海軍で分割することになったが、
その具体的な条件についてはなかなかまとまらず、交渉が続いていた。


結局、クリミア半島の海軍基地はロシアが20年間使用できることになり、
基地使用料や艦隊分割にあたってウクライナから艦船を購入する費用は、
ロシア がウクライナへ供給した天然ガスの債務で帳消しとなった。

つまりロシアは現金を払わずに
クリミアの基地と艦隊を手にすることができたわけだが、
クリミア独立にロシアが支援をちらつかせることは、
交渉を有利に進めるためのカードになった。


~中略~

94年の大統領選に敗れたバハロフは、
政界を引退して本業の地理学教授として大学の学長などを務めている。

一方で大統領を失職させられたメシコフは、
その後ロシアへ渡りモスクワで大学教授をしていたが、
2011年にクリミアへ戻り、
独立憲法復活のための住民投票の実施を呼び掛けたところ、
ウクライナ政府から強制退去を命じられている。

http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Lake/2917/syometsu/crimea.html

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出来れば全文を読んでもらいたいが、

要所だけ抜き出して説明すると
冷戦終結直後から同地域では独立運動が続いており、
14年のウクライナからの離脱もこの流れに沿ったものであった。



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2013年11月、首都キエフで、所謂「マイダン」が始まり、
クリミアは、これに抗議の反応を示した。



セヴァストーポリでは実際すぐに、EUへの統合に反対し、
関税同盟に賛成する「69番書簡」が現れ、町を代表する人々がこれに署名した。
その後、組織されたのが社会運動体「レスプーブリカ(共和国)」である。


2014年2月、キエフで国家クーデターが起こった。
セヴァストーポリとクリミアは、
そうしたできた自称ウクライナ当局の合法性を認めなかった。


セヴァストーポリの中心広場、
ナヒーモフ提督広場では2月23日(ロシアにおける祖国防衛者の日)、
集会が開かれ、自分達の市長としてアレクセイ・チャルィ氏を選出した。

同じく23日の夕方、義勇軍の組織が開始され、
クリミア北部境界線防衛のために、セヴァストーポリの特務部隊「ベルクート」が前面に出た。
彼らは前日「民族主義のウイルス」が蔓延したキエフから戻ったばかりだった。

こうして、まさに「祖国防衛者の日」、クリミアではロシアの春が始まったのだ。


ウクライナ軍は、サバイバルを図り,
軍人達は、参謀本部やセヴァストーポリ郊外のベリベク軍事飛行場に立てこもった。
キエフからは、武装したナショナリストで満員の「友情列車」を送るとの脅迫があった。


集会に参加していた一般の人々は日一日と増えて行ったが、
ロシアが今後どういった措置をとるのか、
知らなかったし確信を持って知ることはできなかった。しかし彼らは信じていた。

セヴァストーポリに続き、シンフェローポリでも26日、集会が開かれた。
そして27日、クリミア最高会議の建物に、ロシアの三色旗が翻ったのだった。

続きを読む: https://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2015_03_17/283374969/


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以上のようにクリミア自治共和国の離反は
EUへの統合の動きを巡る数か月間の対立を背景に
引き起こされたもので、通常なら「内戦」と表現されるものである。


ウクライナ本国が推し進める
公共料金の値上げ、社会福祉の縮小、
国内炭鉱の閉山および外国産石炭の輸入といった
新自由主義的な中央政府の政策を否とはねつけるものだった。


池上氏の記述ではこの点に関する説明が一切ない。



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ウクライナ南東諸地域党の党大会がハリコフで行われ、
議員たちは、キエフに憲法秩序が回復されない間は、
クリミア自治共和国およびセヴァストーポリが全権力を握る、
との提案を支持した。

続きを読む: https://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2014_02_22/129049289/

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カナダからのケベック独立。

スペインにおけるカタルーニャ独立運動。

イギリスのウェールズ分離運動。

中国と台湾との相克。


ウクライナとクリミアも
このような本国と国家内国家との対立として
描かれるはずのものだが、なぜか同氏はこの点は無視する。


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ウクライナのクリミア自治共和国議会は、
同自治共和国の今後を決める全クリミア住民投票を実施することを決めた。



クリミア議会議長団の住民向けメッセージには次のように記されている。

「ウクライナは完全なるカオス、専制、経済的崩壊に落ち込もうとしている。
 こうした状況を受け、クリミア最高議会は、クリミアの命運について全責任を引き受ける」


「全クリミア国民投票の実施によって自治共和国のステータスを向上させ、
 その権力を増大させることによってのみ、自治共和国は外部からの圧力や指導なしに、
 自らの力によって、自治共和国の命運を定めることが出来ると確信している」

続きを読む: https://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2014_02_27/129237633/

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このようにクリミア自治共和国の独立は
地方政府による公式の宣言だった。

池上氏が説明するような形のない世論ではない。


よって、通常ならば

クリミア自治共和国議会が独立を宣言したが、
これをロシア連邦が承認した

と書くべきところである。


池上氏は、あたかも自治共和国など
存在しないかのように説明をするので、


この問題が
元々はロシア帝国の領土であり、
スラブ系民族が多く暮らすクリミア自治共和国が
ウクライナとロシア、どちらの国家に属するかを巡って
起きた争いだとは気づかないのではないだろうか?






②国民の反対運動→× 武装組織の蜂起→〇


池上氏は「国民の反対運動」の結果、
反ロシア政権が誕生したと説明しているが、


実際には、上のような国粋主義者を先頭にした
武相組織の蜂起によって政権は崩壊した。

この時点では大統領職は空位であり、
「新政権」であるポロシェンコ政権は5月に誕生することになる。


この暫定政権は選挙によるものでもなかったし、
住民投票によって承認もされていない。


つまり、武力革命あるいはクーデターと呼ばれるものだったのだが、
池上氏はなぜか国民の総意による民主的な運動であったかのように
ぼかして表現している。


そのため、この時点で国内が
政治的に分裂状態だったことが読者には伝わってこない。





ウクライナの一般的国民のファッション(池上視点)


③そもそもロシアは軍を派遣していない


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2月26日、ロシア大統領および最高指揮官である
ウラジーミル・プーチンの命令により、
西部軍管区および中央軍管区では黒海地域での大規模軍事演習が始まった。


ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、
「大規模な抜き打ち演習である。」としており、
約15万人の将兵、90機の航空機、120機以上のヘリコプター、
約880台の戦車、80隻の艦艇が参加している。
続きを読む: https://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2014_02_27/129219105/

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ロシア上院におけるロシア大統領公式代表である
グリゴリイ・カラスィン外務次官は、マスコミ取材に対し

「ウクライナでロシア連邦軍を利用する事に上院は同意したが、
これは、大統領によってすぐにその権利が行使されるであろうことを
意味するものではない」と伝えた。
続きを読む: https://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2014_03_01/129306849/

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時系列順に並べると


クリミア自治共和国、ウクライナからの独立を決意
住民投票の実施を宣言



ロシア政府、自軍の派遣を決定


となっており、
池上の「軍を送って占領した」という説は時間的に成り立たない。


このロシア軍の占領という妄想はどこから来たのだろうか。


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クリミアは、黒海に突き出た半島部に位置する
ウクライナの余り大きくない一地域で、現在、革命的な暴力の波の渦中にある。

現地の秩序を維持しているのは住民達自身で、
警察が、住民らによる自衛団を援助している。


最高会議の建物の前には、再び何千もの人々が集まり、
男性達は、自衛団への入団署名を行っている。


一方議会では、議員達が、新たな政府を準備中だ。
こうしたすべての事は、ウクライナの首都キエフで
権力を奪取した勢力の側からの強力な圧力という条件下で生じており、
クリミア議会のほぼすべての議員達、そして彼らの子供達にまで、脅迫電話がかけられた。


暴力によるシナリオを許さないため、自衛団は、
クリミア最高会議を自らのコントロール下に置き、内部に立てこもった。

現在中に入れるのは、議員達のみである。


シンフェローポリ空港も昨夜、
どこの所属か明らかでない軍服を着た人々によりコントロール下に置かれた。

おそらく彼らも、クリミア自衛団のメンバーであると思われる。

彼らは、自分達の目的は、
外部からの戦闘員のクリミア入りを防ぐ事にあるとしている。
続きを読む: https://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2014_03_01/129286472/

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シンフェローポリ、セヴァストーポリ、ケリチ、
エフパトリヤの住民たちは、ロシア国旗やロシアのアンドレイ海軍旗を掲げ、
クリミア半島のステータスをめぐる住民投票の実施を要求している。


多くの人々が、クリミアのロシアへの編入、
ないしは独立への願いを、公言している。


「マイダン」のシンパを公言する人の姿は、クリミアには見つけることが出来ない。
一方、マイダンによって退位させられたヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領も、
人気を得ているとはいえない。


クリミアでは公然と、彼は裏切り者であると非難されている。

民衆はすでに新たな指導者の擁立に動いている。
中でも特に著名な人物は、セヴァストーポリ新市長アレクセイ・チャールィイ氏だ。


同時並行で、新たな自治機構の創設も進められている。
自衛部隊、「ロシア・ブロック」というグループ、
その他の組織がミーティングに参加し、治安の維持にあたりつつ、
重要拠点への通路を閉鎖している。そうした勢力のひとつに、
上に述べた「礼儀正しい人々」も含まれる。


クリミア自衛部隊および地元「ベルクート」は、
<「マイダン」政府>内務省のアヴァコフ大臣の解散命令に従わず、
右翼セクター武闘派その他ウルトラナショナリストらの攻撃に備え、
クリミアの防備に当たっている。

続きを読む: https://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2014_03_01/129292066/

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恐らく、2月末にクリミアに出現した武装集団のことを指しているらしい。

この武装集団がロシア軍だという証拠はないし、
ベルクート部隊という特務部隊と共にキエフから来たらしいから
軍あるいは警察から流れてきた過激派ではないかと私は考えている。

繰り返すが、この時点でロシアは軍を派遣していないし、
半島内に前から駐屯していたロシア軍も軍事演習こそしているが、
直接、ウクライナ軍に対して何らかの攻撃をしていない。


池上氏の説は、武装集団はロシアの覆面兵に違いない、
ロシア軍が各地を占領したに違いないという思い込みを
前提にしたもので、妄想の範疇を越えないと言えるだろう。




以上、検討を行ってみたが、

端的に言えば、彼の記事は、通常なら内戦として書くべきものを
占領として描いているので矛盾や間違い、妄想が非常に多い。


例えば、記事ではプーチン大統領が
軍事的懸念から占領したのだと説明されているが、
そのような思惑をいったい、どうやって知りえたのだろうか?

公式の場では独立を支援する形を取っているし、
ロシア軍の派遣を決定した際にも地元住民の安全確保のため
と語っている。


どこぞの評論家や新聞記事の「意見」を
「事実」として歪めて書いている印象を受ける。 


軍事的思惑から干渉した「に違いない」が
軍事的思惑から干渉したとすり替えて説明がされている。

武装集団も同様で

ロシア軍「と思わしき」武装集団が「各施設」を「占拠」ではなくて
ロシア軍が各地を「占領」したのだと説明をする。


このように自己の主張を通すために事実をねつ造する人物が
これから時事問題を勉強しようとする純真無垢な児童に
ニュースを解説して聞かせるのは甚だ恐怖ではないだろうか?


今回紹介した記事がその辺の新聞記事あるいは
Wikipediaの内容をパッチワークして書いたのかどうか私は知らない。


だが、少なくとも彼が以前からクリミアでは激しい独立運動が展開されていた
という歴史に対して無知であることは確かだろう。



このようなジャーナリストの風上にもおけない人間に
義憤を覚えたのであれば、殺害予告などせずに
徹底的に言論を通じて、彼の間違いを暴露すべきだった。


問題の男性は2ちゃんねるにも書き込みをしていて
それらを読む限りではふざけているようにしか見えなかった。



なぜキエフの武装蜂起は「国民の反対運動」と表現され、
クリミアの独立運動は「ロシア軍の占領」と書かれるのか。

この疑問を叩きつけるだけでも意義はあるはずだ。



(私は池上がこのような的外れで
 結果的に出鱈目な内容を書いてしまうのは

 ①ウクライナ中央政府・日本政府の見解をなぞっただけだから

 ②ロシアの侵略戦争だという認識を前提に論を展開しているから

 ③国家内の対立を国家間の争いとして
  無理やり解釈する悪癖があるから

 ではないかと考えている。

 そういう意味では、
 沖縄の基地反対運動を中国や北朝鮮の工作員による
 日本政府転覆運動と解釈するネトウヨと大差ないレベルである。

 つまり、陰謀論以上の何物でもない)



蚊帳の外なのは左翼も同じ①―南北朝鮮の歴史的な対談について―

2018-05-03 23:32:30 | 北朝鮮

南北朝鮮の歴史的な和解のセレモニーが開かれ、数日が経つ。

この間、何かコメントを書こうとしてきたが、
またしても多忙を理由に記事に上げるのを躊躇してきた。


手前みそだが、
当サイトの過去に挙げた記事を読めば
北朝鮮を巡る政治情勢が如何に日本のメディア(と大多数の知識人)
の言い分と食い違うか自ずと知れるはずである。

わざわざ書かなくても
もう一度読めば、伝わるはずだと甘えていたのかもしれない。



話を元に戻そう。



左翼・自称リベラルは、この対談を呑気に歓迎しているが、
私はどうも楽観視することができない。



それは、この対談(雪解けの動き)が
日本の平和主義者が参加しない形で進められたからだ。




①北朝鮮の脅威など存在しない
②平和条約の締結と合わせた核廃棄を北朝鮮は当初から提案し続けている
③一方的な武装解除を求めて経済的軍事的圧迫をかけても効果はない


以上、3点を4~5年前から繰り返し具体的に説明してきたのだが、
この考えが日本の政治家や知識人の間に浸透するよりも先に
米韓の政治家のほうが動いた。


これは換言すれば、日本の左派が継続的に
アメリカや日本、韓国の軍事的経済的包囲網に
異議を唱えてきた苦労が報われたというよりは、

平和の旗を振りながらも、いざ北朝鮮が相手となると
途端に政府と一緒に北朝鮮を悪魔化してきた過程で
ふと湧いてきたにすぎないと言えよう。


実際、大半の平和主義者は核のことには言及しても
さらに踏み込んで経済制裁の完全撤廃、ならびに
朝鮮半島からの米軍撤退を主張してはいない。


北朝鮮が核を捨てるか否か。

ただ、それだけが彼らの関心事であり、
肝心の北朝鮮の民衆の生活や安全の確保には
さして興味がないのではないだろうか?

そう思えてならないのである。


・・・とこれだけ書いても、
言葉不足でやや説得力がないだろう。


生憎、時間が足りないので
詳しいコメントは明日の夜に改めて書くつもりだ。


繰り返すが、私が気にしているのは

一連の和解は、政府のみならず、
日本の平和運動の北朝鮮に対する敵意を骨抜きにして
進められたものであり、安倍だけでなく左翼も蚊帳の外にされていた


という事実について、当事者があまりにも無自覚ではないかということである。


今後の交渉・行動自体では、
北朝鮮はまた核開発に着手するかもしれないが、
その時に日本の平和主義者は北朝鮮の側に立って弁護できるだろうか?


核をなぜ手放せないのか(その理由はこれまで何度も説明してきた)
について、特に考えず、核開発を行うという理由をもって、
また政府と並んで北朝鮮バッシングに奔走しないだろうか。


そのような不安が拭えないのである。

(2へと続く)