時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

北朝鮮の「ほほえみ外交」(メディアの造語批判)

2020-06-25 22:44:15 | 北朝鮮

緊急事態宣言が解除され、非日常から日常へと生活が戻りつつある。
・・・わけでは決してなく、未だに東京では感染者が後を絶たないのだが、
都知事選を前にしてあえて日常を演出したいマスメディアは
いつものように外国に対するバッシング報道を展開し始めた。

本日、6月25日のクローズアップ現代では
金与正氏の発言を取り上げ、仮にも他国の大統領を罵倒するなど
言語道断と見栄を切った。吹き替えを担当した女性は、与正氏の声明を
あえて重く、暗いトーンで、いかにも危険人物の発言であるかのように
強調して翻訳文を読み上げた。

 

挑発する金与正氏 北朝鮮の強硬姿勢の行く末は…衝突か、新たな交渉のテーブルか

 

日本メディアのシナリオとしては
北朝鮮が韓国や米国に対して乱暴な「挑発」を行った
というものを狙っているらしい。

しかし、実際には韓国の保守派が脱北者と結託して
軍事境界線付近で挑発行為を行ったのが発端となっている。

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他の誰かなら知らないが、「脱北者」というくずの連中、
人間の出来損ないを押し立ててそんなにもよく知っている
その合意を違反するビラ散布妄動をそのまま黙認し、放置しておいた当事者らが
われわれに「違反」という言葉をそれも白昼に公然と言えるのか疑わしいだけだ。

顔が熱くならないかということだ。

板門店宣言と平壌宣言、北南合意に対しては、
北侵戦争演習を含むあらゆる敵対行為を公然と働きながら、
それを今まで系統的に違反して破棄してきた南側が
口が十あっても合意違反について問題視する資格さえないようになっている。

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(http://www.kcna.kp/kcna.user.article.retrieveNewsViewInfoList.kcmsf#this)

上の文章は朝鮮中央通信の2020年6月17日付の記事
(「破廉恥の極み」というタイトル)から引用したものだが、
ここにも触れているように板門店宣言にはビラ配りの扇動も含む
一切の敵対行為の中止が明記されている。

また、大々的なものこそ自粛したものの
北朝鮮への先制攻撃を想定した韓国の軍事演習はこれまで継続されてきた。

そして北朝鮮は約束に従い、これまで一切の核開発を行っていない。
(日本のマスメディアは核「保有」を理由にこの事実を無視したがるが)

双方の歩み寄りが望まれた2018年から約2年が経過してもなお、
このように進展が望まれない状況下、強硬派の軍部をなだめるために
行ったのが今回の一連の言動ではないかと筆者はにらんでいるが、
それはともかく、いわゆる「挑発」をしたのは韓国の保守派であり、
北朝鮮の言動はそれらに対するリアクションだということを忘れてはならない。

 

対北朝鮮 日米、韓国へ結束求め 「ほほ笑み外交」警戒

 

ところで、北朝鮮と他国との間の雪解けをメディアは「ほほえみ外交」と呼んでいる。
この言葉は当初、ある種の侮蔑の意図を込めて使われていたのをご存知だろうか。

北朝鮮の「ほほ笑み外交」 日本の懸念

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「ほほ笑み外交」

安倍氏もほぼ確実に同意するだろう。
五輪開始前のインタビューで河野太郎外相は筆者に対して、
韓国が北朝鮮の「ほほ笑み外交」に取り込まれてしまう懸念について話した。

そしてなんと盛大なほほ笑み外交が行われたことか。

最大の見せ場は疑いもなく、金正恩氏の実妹、
金与正(キム・ヨジョン)氏が3日間訪韓したことだ。

与正氏は魅力的な笑みを浮かべ、
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を平壌に招待した

これらは全て安倍晋三首相にとっては悪い知らせだ。
日本政府による、北朝鮮の核の脅威を阻止するための政策を根幹から覆す恐れがある。

米国にとって、北朝鮮が核兵器の備蓄を増やすことは
間もなく現実の脅威となるだろう。日本にとってはすでにそうだ。

昨年に北朝鮮が発射した2発の長距離ミサイルは日本の上空を飛んでいった。
ここで大きく懸念されることは、どんな種類の軍事衝突であっても、
北朝鮮が核を使うのはソウルではなく東京へ向けてではないかということだ。

「我々は広島や長崎が再び起きるのを絶対許してはいけない」
と最近、日本の退役将校は筆者に話した。

よって安倍晋三首相は非常に強硬な立場を確立した。
週末にソウルで見られた「愛の祭典」以来、全ての声明で、
文大統領に訪朝してほしくないという立場を明確にしている。

ソウルにある国民大学校のアンドレイ・ランコフ教授は、
北朝鮮の思惑に対する日本の懸念をうまく説明している。

北朝鮮情報に特化したウェブサイト「NKニュース」の記事中で、
「北朝鮮の外交手腕は卓越している。
敵の弱点と分断を利用することに精通している」とランコフ教授は書いている。

「12月中旬以来、北朝鮮の外交は大きく分けて2つの目標に向かっている。
まず北朝鮮は、米国が先に軍事攻撃に出る可能性を低くしようと懸命に取り組んでいる。
第2に、米韓の間にくさびを打ち込むことに精力を傾けている」

日本の河野外相は北朝鮮に対する経済制裁が「効き始めている」
との認識を筆者に示した。

昨年の晩夏に課された制裁措置により、
いよいよ北朝鮮経済に影響が出始めている、と。

だからこそ北朝鮮は五輪大会という
ほほ笑み外交の手段を講じ時間稼ぎをして、
息が止まりそうな状態を緩和している、と。

(英語記事 Japan's worries about North Korea's 'charm offensive'

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原語では「charm offensive」とあるように「ほほえみ外交」とはOffensive(攻撃態勢)、
すなわち、米韓の分断を目論んだ作戦なのだという意味をこめて使われていたのである。

 

韓国五輪外交、北朝鮮を利するだけに終わった「大失策」の裏側

 

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「南北友好対話ムード」を演出しての
ピョンチャン・オリンピックの“主役”は、
金正恩の妹で、朝鮮労働党副部長の金与正(キム・ヨジョン)だった。

その「微笑み外交」の陰で、
韓国・文政権の「5人組」と米国との間では
ぎくしゃくした関係が目立った格好になった。
それには理由がある。(朝日新聞ソウル支局長 牧野愛博)

五輪外交の主役は金与正
ソフトなイメージ戦略実践

~中略~

北は「最高のカード」出した
「南北蜜月」は北の本音ではない

~中略~

ここまで検証してみると、北朝鮮が金与正を派遣した狙いが浮かび上がる。

「最高のカード」で韓国に恩を売り、
同時に南北関係の蜜月ぶりを日米など国際社会に印象づける思惑だが、
ただ、南北関係を蜜月にしたいというのは北朝鮮の本音ではない。

それを裏づけるように、会談でも、文大統領の訪朝を求めたものの、
南北首脳会談の具体的な日時に触れることはなかった。

会談後の昼食会で「早く平壌でお目にかかれたらうれしい」と、話した程度だ。

また北朝鮮は韓国が提案してきた
南北離散家族の再会事業や南北軍事当局者会談の開催などには依然、応じていない。

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このように、メディアは平昌五輪における南北間の歩み寄りを冷笑しつつ、
北朝鮮の行動には裏があるに違いないと決めつけていたのである。

彼らの読みが的外れだったことはわずか1か月後に証明されることになる。
その際、メディアは日本政府にだけ米朝韓の対話路線への転向を知らされていなかったことに対して
「蚊帳の外」と揶揄したが、実の所、本当に蚊帳の外だったのは彼らマスメディアだったと言える。

以下の文章は2018年2月11日に掲載された毎日新聞の社説を抜粋したものである。

 

北朝鮮が文氏に会談提案 平和攻勢に惑わされるな

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筋の悪いくせ球だ。
独裁者のエゴを貫くために計算され尽くした甘い言葉に、惑わされてはいけない。

北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が
特使として派遣した妹の与正(ヨジョン)氏を通じて、
韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領に平壌での近日中の会談を提案した。

文氏は、会談実現へ向けた条件を整えていこうと応じたという。

核・ミサイル開発に対する経済制裁で陥った苦境を打開しようという北朝鮮の狙いは明白だ。

北朝鮮への国際的圧力は強まっている。
後ろ盾だった中国が制裁に同調するようになり、
石油精製品の輸入にはこれまでの9割減という上限が設定された。
洋上での密輸に対する監視も強化された。

金政権は貿易に頼らない経済作りを国民に呼びかけ、
厳しい制裁にも耐えられると主張する。

しかし当面はしのげたとしても、長期的な将来展望など描きようがない。

米国による軍事的圧迫も負担になっているはずだ。

朝鮮半島周辺で米軍が大規模に展開すれば、北朝鮮軍も警戒態勢を強化せざるをえない。
貴重な燃料を消費し、動員される将兵は疲弊する。
軍に不満がたまれば権力基盤にも悪影響が出かねない。

こうした閉塞(へいそく)状況を打破する突破口として、
対話に前向きな文政権に狙いをつけたのだろう。

北朝鮮は
いま平昌(ピョンチャン)冬季五輪を舞台にした平和攻勢を韓国に仕掛けている。

北朝鮮は一方で五輪開幕の前日に大規模な軍事パレードを行い、
大陸間弾道ミサイル(ICBM)も登場させた。核放棄に応じないという姿勢は明確だ。

文氏は核問題をめぐる米朝の対話を仲介しようとしている。
しかし朝鮮半島の非核化につながらない限り意味はない。
成果を急ごうとする文氏の態度には危うさを感じる。

五輪開会式前のレセプションでは
北朝鮮の金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長と
米国のペンス副大統領を同席させようとしたが、ペンス氏が席に着かなかった。
米国との調整が不足したまま準備を進めたようだ。

南北の首脳会談を必要としているのは北朝鮮である。
そこを見誤ると、核を温存したまま国際包囲網を突破しようとする
北朝鮮に手を貸すことになってしまう。

(https://mainichi.jp/articles/20180211/ddm/005/070/042000c)

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ここでも「平和攻勢」という言葉で北朝鮮の軟化を非難している。
いずれの言葉にしても北朝鮮の姿勢を、
「表面的には友好的に接しているが、
その実、裏側では相手を出し抜くことを考えている」
という、したたかで嘘のあるものとして強調づけている。

強硬姿勢をとればそれはそれで口やかましく非難するのに、
協調へと舵を切ると、それはそれで気に入らない、どうせ嘘に決まっている、
裏があるのだ、話を聞くな、北朝鮮の思うつぼだ・・・などなど、
こういう態度を一貫して取ってきたわけだ。

ところが、最近になって、この「チャーム・オフェンシブ」とか
「平和攻勢」、「ほほえみ外交」という単語が意図的に別の意味に組み替えられる
現象が起きているのである。次の牧野愛博氏の記事を読んでみよう。

 

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 ケソン南北連絡事務所爆破の“主役”、金与正氏の「本当の役割」
牧野愛博 2020/06/18 06:00

激しい言葉で韓国批判  「ほほえみ外交」のイメージ一掃

~中略~

とりわけ金与正氏の韓国批判の激しい言葉は、これまでの人物像を一新するものだ。

与正氏は利発で礼儀正しい人物として知られる。
初めて外交舞台に登場したといえる18年2月、
平昌冬季五輪開会式に参加するために訪韓した際は、
文大統領とにこやかに談笑する姿が「ほほえみ外交」として注目された。

形式的には団長は、金永南最高人民会議常任委員長(当時)だったが、
与正氏は金氏を立てることも忘れなかった。

会談では金氏を上座に着席させようとし、慎重な金氏をドギマギさせた。

当時、金与正氏の受け入れに当たった韓国政府当局者は
「与正氏は公式日程以外の時間も、絶えず周囲に気を配っていた。
話題も豊富で、相手をしらけさせない。頭の良さを感じた」と語っていた。

父親の金正日総書記が金与正氏に愛情を注いでいたのは有名な話だ。
そして金総書記は、粗暴で反抗的な兄の正恩氏にむしろ手を焼いていたという。

2010年9月の労働党代表者会で正恩氏が公式に登場してからしばらく後、
歌唱力を認められた女性が、金正日総書記の私的な席で歌を披露したことがあった。

この席には、金総書記と事実上の婚姻関係にあった金玉氏や
正恩氏らが参加したが、金総書記は与正氏とばかり談笑し、
正恩氏は端の方でつまらなそうにしていたという。

正恩氏を巡っては、女性をめぐる醜聞や酒席などでの
「自分勝手な酒で、周囲に気を配らない」といった
悪評がたびたび漏れてきたが、金与正氏にはそうした話もない。

(https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E3%82%B1%E3%82%BD%E3%83%B3%E5%8D%97%E
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このように「オフェンシブ(敵対行為)」と呼ばれていたものが
いつの間にか文字通りの平和的協調的姿勢として定義が書き換えられているのである。

これはかつて自分たちが仕組んだバッシング、それも見当違いだった主張を
隠ぺいするものだと解釈ても差し支えなかろう。

記事では金与正の変節を印象付けるために、
この「ほほえみ外交」の言葉を使っているが正直、呆れたのは言うまでもない。

与正の人物像を良くするために兄の金正恩を暗愚な人物と対比的に説明するのも
いささか強引だし、記事の末部ではいつもの通り、北朝鮮は金正恩のせいで貧窮な生活を
強いられていて、民衆の不満がたまっているというお約束の定型文が載せられている。

牧野氏の合法詐欺師ぶりはいつもの通りだが、
他も似たり寄ったりであり、2018年6月の米朝、南北対話を経てもなお、
日本メディアの北朝鮮に対する分析力や敵意は変わらなかったと言うことであろう。

それにしても、自分たちがかつて北朝鮮の融和路線に対して
悪意あるもの、真意は別にあると主張してきたことを棚に上げ、
ここ最近の北朝鮮の言動に対して強硬姿勢はやめよと説教するのは本当に痛ましい。

ちまたでは安倍晋三の退陣がほのめかされているが、
仮に安倍政権が崩壊したとしても、メディアがこの在り様では事態は何も変わらないだろう。



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